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お気に入り小説2

男は美しさよ。美しさ。欲しい物は手に入れた。しかし夫が何だか冷たい。どうしてなんで?強欲皇女の恋物語。

作者: ユミヨシ

ジルド大帝国の皇女ヘルディーナ16歳。

彼女は全帝国民が祝福する中、ド派手な結婚式を挙げた。

愛する美男騎士団長ディーアルト・ハレギウス公爵30歳とである。

金の長い髪をなびかせて、にこやかにパレードの馬車から手を振るディーアルト。その横で、フリル満載のウエディングドレスを着たヘルディーナ。


ディーアルトへ思いを寄せていた貴族令嬢達はさぞかし悔しがっているだろう。

あまりの美しさにディーアルトはとてもモテていたのだ。


本当にいい気味よ。オホホホホホホ。


ヘルディーナは化粧もばっちりとして、茶の髪もクルリンと巻き、帝国一のわたくしは幸せな花嫁よと大満足していたのだが。



そんなド派手な結婚式から一月経った。


ヘルディーナは皇宮のテラスでお昼ご飯を食べながら、ため息をついている。

護衛騎士のジャックとチャールズもテーブルに共についてお昼ご飯を食べていた。

二人は持参の弁当。ヘルディーナは豪華な肉や野菜が満載のサンドイッチに色とりどりのオカズ、かぐわしいスープを楽しみながら、二人の護衛騎士に愚痴る。


「こんなはずじゃなかったの…昼間はわたくしは先々、この大帝国の女帝になるのだから、父上の傍で政を学んで…ディーアルトは騎士団長として働いて。それはいいんだけど…何でよっーーー。なんか違うのよ。」


ジャックが自分の弁当を食べながら、


「何が不満なんです?」


ジャックは新婚さんで、奥様の手作り弁当を堪能している。

ヘルディーナはジャックに向かって、


「ちょっと、そっちの卵焼きよこしなさいよ。」


「嫌ですっ。愛するナタリーナが作ってくれた愛妻弁当なんですっ。」


「あんたの家、伯爵家でしょ?」


「俺、次男っすから。別宅を貰って慎ましく暮らしているんですっ。」


ちらりとチャールズを見れば、そちらもうまそうな弁当を食べている。


ヘルディーナはチャールズに向かって、


「あんたのお弁当も美味しそうね。その唐揚げよこしなさいよ。」


「いやですっ。母上が丹精込めて作ってくれたんですっ。」


「母上かーーーいっ。いい歳こいて。親離れしなさいよ。」


「いいじゃないですかっ。ヘルディーナ様は豪華な昼食を食べていらっしゃるのですから。何も私の弁当を取らなくても。」



自分は皇女で先行きジルド大帝国の女帝になるのに。この二人はまったく、不敬すぎるだろうと…頭が痛い。


そうだった。愚痴りたかったんだ。


「ディーアルトは一週間に一回、夫としての義務を果たしてくれるんだけれども。」


ジャックが卵焼きを食べながら、


「それならいいじゃないですか。」


「よくなーーい。普段は寝室は別だし…一緒に寝てくれないし…朝食は共にとるんだけど、会話も当たり障りない会話だけで…これで夫婦と言えるのかしら…」


チャールズが自分の弁当の唐揚げを美味そうに食べながら、


「それはよくある、ものすごーく冷たい氷の騎士様が溺愛してくるではなくて、氷のままだったって言うパターンですかね?」


ジャックも頷いて、


「そういう話は流行らないですよ。今の世のトレンドは、氷の騎士様が何故か溺愛してくるではないですかね?」


「どうしたら溺愛してくれるのかしら…」


「「それはヘルディーナ様の魅力で。」」


「相談になっていなーーーーーい。」


頼りにならない護衛騎士どもめ。


本当に一週間に一度しかない夫婦の交わりだって、ディーアルトはいかにも義務って感じで。

騎士団長のディーアルトは普段は黒髪を短くして、精悍な顔立ちなのだが、ヘルディーナの母であるユリーヌ皇妃の命で、王宮の夜会や公式の場では、長い金の髪をなびかせて、美しい美男に化けて出席している。だから、結婚したはずなのに、他の貴族令嬢達がいまだにディーアルトに執着しているのだ。


それも又、頭にくる。

そりゃ…この国で一番美しいのは化粧をしたディーアルトよ。

他の貴族の息子どもは、皆、芋…芋…芋っ…。

貴族令嬢達がディーアルトに執着する気持ちも解らなくもないけれども…


結婚はしたけれど、彼の心はどこにあるの?

自分と結婚したからには愛して欲しい。



今日は一週間に一度の夫婦の交わりの日ではないが、ディーアルトの寝室へ突進する事にした。


俗にいう、夜這い である。


「ふふふふふふふふふ。こういうのは、普通、男がやるもんだけれども、このヘルディーナ様を舐めないで欲しいわ。」


夜遅く、そっとディーアルトの部屋のドアを開ける。


抜き足差し足、忍び足で彼のベッドに行こうとしたら、彼は起きていた。

ベッドの横の机に向かって何やら読んで書き物をしていたのだ。

気配に気が付いたのか、立ち上がり、ヘルディーナを見て驚いたように目を見開いて、


「ヘルディーナ様。鍵はかかっていたはずですが…」


「あらかじめ、影に頼んで、鍵を開けておいてもらったのよ。」


こういう時に役立つ、皇家の影。命令一つで、どんなことでもやってくれる。凄腕の集まりである。ヘルディーナだって、先行き、女帝になるのだ。

皇家の影の命令権はある。


ヘルディーナはディーアルトの前に行くと、真っすぐにその顔を見上げて、


「わたくしの何が不満なの?貴方の心が感じられない。ねぇ?何が不満なの?わたくしはこんなに貴方の事を愛しているのに。」


「私は力不足なのです。」


「え?だって騎士団長じゃない?」


「以前の騎士団長を皇妃様は首になさって私を騎士団長へ抜擢した。でも、私は…顔以外は何もかも劣っている。騎士団長の器ではない。皇妃様は他国の美しい騎士団長に対抗する為だけに、私に金髪のカツラを被り、竪琴を奏で、美しい騎士団長を要求した。私は皇家の命令であればと従って来た。こうしてヘルディーナ様とだって命に従って婚姻したではありませんか。私はこれから先、王配にならねばならない。もっともっと、勉強して、時間が足りない。もっともっと自分を鍛えて、ヘルディーナ様を支える立派な王配になるように。

騎士団で私の事をなんて言っているか知っていますか?顔だけで団長になったってね。

顔だけだなんて言わせない。実力も伴って見せる。だから、私は貴方に不満なんて持っていないですよ。ただ、余裕がない。それだけです。」


ヘルディーナはショックだった。


こんなに、ディーアルトは追い詰められていたんだ。

母の我儘で五年前に騎士団長へ抜擢された。

母の我儘で公式の場や、夜会で美しい金の髪のカツラを被り化粧をし…

そして自分の我儘で結婚してくれて…

彼は立派な騎士団長、そして王配になろうと努力してくれている。


それに比べて自分は…

父である皇帝の傍で公務は学んでいるけれども…真剣さが足りないのではないのか?


「解りましたわ。わたくし…貴方の事を何も解っていなかった。有難う。わたくしの夫となってくれて。有難う。立派な王配になるように、騎士団長になるように努力してくれて…

わたくしも努力するわ。立派な女帝になるように。でもね。もし、疲れてしまった時にはわたくしに甘えて欲しい。わたくし、チビでちっとも魅力がないけれども、それでも、せっかく妻になったのだから、少しは癒して差し上げたいの。」


ディーアルトの傍に行き、その身体を抱き締める。


ディーアルトも優しく抱きしめ返してくれた。


「ヘルディーナ様。一緒に頑張りましょう。このジルド大帝国を良くするために。ああ…すっかり身体が冷えてしまって。」


「ディーアルトのベッドに入りたいわ。」


逞しい胸板に頭をスリスリと擦り付ける。


「では、一緒に寝ましょうか。」



その夜はディーアルトの胸の鼓動を聞きながら眠った。


せっかく愛する人と夫婦になれたのだから、もっともっと近づきたい。

ゆっくりでもいいから…



二日後、王宮の夜会にディーアルトと共に出席した。


最近のヘルディーナは派手なドレスを好んで着るようになった。

今日は桃色の華やかなドレスだ。

金の長い髪をなびかせて、隣に立ちにこやかに微笑むディーアルト。


あああああっ…いいわぁ。やはりいいわぁ。


だなんて思いながら、ディーアルトを見つめていると、エレンシア・ミッティリエルク公爵令嬢が近づいて来た。

スタイルの良い美しいこの令嬢は特にディーアルトに執着していて、ディーアルトが結婚した後も、夜会のたびにちょっかいかけてくる。


エレンシアは今日は黄金色のドレスを着て、一層、煌びやかに見えた。


「ディーアルト様。今宵もお美しいですわ。あら、オマケの皇女様。ごきげんよう。」


ヘルディーナはエレンシアを見上げて、


「いい加減に、付きまとうのは止めて頂きたいわ。ディーアルトは結婚したのよ。わたくしと。」


「無理やりでしょう。お可哀想なディーアルト様。そうそう、わたくし婚約致しましたのよ。」


「へ?」


その時に声をかけられた。


「久しぶりだ。ヘルディーナ。私、私、私っ。隣国の第二王子ファルトだ。」


何度かこの国に遊びに来た事のある第二王子ファルト。

背の低くて口下手で冴えない男だった彼だが…会うのは数年ぶりで。

確か歳は自分より二つ上の18歳。

すらりと背が伸びて、以前はくすんだ灰色の髪が艶やかな銀の髪になり、それはもう、美しい男性へと変化していた。


「ええええええっ???ファルトっ???」


父であるガイドル皇帝がヘルディーナの婚約者にと当初考えていた第二王子ファルト。

以前はあまりにも冴えない男だったので、大嫌いだったのだが。


ファルトはエレンシアと腕を組んで、


「有難い事にミッティリエルク公爵家に婿入りさせて貰う事になった。私は王国で学んだ知識を役立てて、ミッティリエルク公爵領の発展の為に尽くしていくつもりだ。」


エレンシアは得意げに、


「ファルト様は、とても優れた発明をいくつもしている博識な方ですのよ。後、剣技の腕も見事な物で。」


「そんなにエレンシアに褒められると、照れくさいな。」


「オホホホホホホ。本当の事ですもの。」



これってこれって…ざまぁされているのかしらっ???


いえいえ、わたくしはディーアルトと結婚出来たのですから、ざまぁされている訳ではないはず…でも何だかとても頭に来るわ。


「ジャァアアアアアアアクーーー。踏み台をっ。」


「はいっーーーーーー」


護衛騎士ジャックが踏み台を持ってくる。


「チャーーーーーーーールズっ 花束をっ。」


「かしこまりましてございますっ。」



踏み台に乗り、上から二人を見下ろしながら、


「皇女ヘルディーナとして、お祝いを申し上げますわ。さぁわたくしからの花束を受け取って。」


エレンシアは真っ赤な薔薇の花束を受け取り、


「有難うございます。お気遣い頂いて。」


ファルト第二王子も、


「勿論、ミッティリエルク公爵領だけでなく、私の発明はジルド大帝国へも捧げるつもりです。」


ヘルディーナはにこやかに、


「感謝致しますわ。」



そして、勿論、ここは華麗なるダンスを愛するディーアルトと披露しなくては。


ディーアルトに腰を引き寄せられて、


「この夜会の主役はヘルディーナ様。貴方だ。」


「まぁ…嬉しいわーーー。」



二人でダンスを踊る。


ジルド大帝国の為に、そして、愛しいディーアルトと共にこれからも頑張ろうと、ヘルディーナは心に誓うのであった。


ヘルディーナはそれはもう、女帝になる為に、今まで以上に努力をした。

父であるガイドル皇帝に毎日、付き従い学んだ。


ディーアルトも努力が実って、美しいだけでなく博識で剣技も素晴らしい騎士団長だと評判が立つようになった。


ヘルディーナが女帝になった後、ジルド大帝国は更に発展した。


夫と共に並び立つ二人の美しい(盛りに盛った)肖像画と共に、ヘルディーナ一世は素晴らしい女帝として歴史に名を残したと言う。


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― 新着の感想 ―
[一言] そうか…低身長がコンプレックスだったのか…(笑)
[一言] なんか可愛いヘルディーナ。 踏み台のくだりが好きです!
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