001『世界を救ってくれ』
新作、初めました。
読んでくれている方
ありがとうございます。
目の前に何か居た。
子供にホコリの絵を描いてもらって、それを立体化させたかのような形容し難い何かが目の前に浮いていた。
『ハロハロー、グッモー!
起きた?
ちゃんと僕のこと見えてる?
オーケーオーケー、ばっちし見えてるね!
やぁやぁ、僕は神様だよ!』
何かはハイテンションな勢いで神だと名乗った。
その前に一瞬、顔スレスレに何かが通った。
しかし、それを確認しようとも視線は目の前の物体から外せられない。
どうしてか分からない。
頭が理解する事を拒んでいるような気分がする。
『さてさて、時間があまり残ってないから簡単に説明するよ?
君には世界を救ってもらいまーす。
イェーイ!
やったね、僕のおかげで英雄になれちゃう!
希望に沿った能力も渡してるからどんどんハーレムを作っちゃってね?
目指せ酒池肉林!
やる事は簡単!
君は何もしなくても向こうから寄ってくるから安心仕様だよ。
うんうん、感謝感激雨あられだよね!
他にも何人か送ってるから会ったら協力して世界を救ってね?
それじゃ、お時間でーす!
異世界へレッツゴー!』
目の前の物体が最後に掛け声を上げると小さくなって見えなくなった。
そうしてようやく周りが見えるようになったら、そこは見たこともない景色が広がっていた。
全体が淡く光っているが、どう見ても洞窟らしき場所。
さっきまで学校に居たはずなのに、なんで洞窟なんかに居るんだ。
それにさっきの神を名乗る物体。
世界を救えって言われた。
…ちょっと待て。
今の状況はどういう事なのだ。
考えれば考えるほど理解できない。
ハーレムを作れっとは言われたが…
確かに女の子にモテたいなとは思った事もある。
それをさっきの物体が叶えてくれた、のか?
そもそもの話、世界を救う事、女の子にモテる事。
この二つがイコールで結ばれる状況って…
どうしてもムフフな想像をしてしまうのは、そういうお年頃のせいに違いない。
もしかして私は夢でも見てるのだろうか?
授業中に眠ってしまった?
学校に居た事は覚えてるのに何をしていたのかはっきりとしない。
夢の中なら当然かもしれないが。
夢を自覚していたり、夢の事を覚えている、なんていう事はよく耳にするが眠る前の事を夢の中で思い出すという事はあまり聞かない。
夢の中でも現実と同じ事をしている、というのは良く聞くが、さっきの物体を現実で見た事はない。
しかし、自覚している夢というものは内容を自在に操れると聞いた事がある。
という事は、現実ではありえないような事も夢で見られるかもしれない。
夢が私の願望を叶えてくれるというならば、この洞窟の先に可愛い女の子が出てもおかしくはない。
なぜなら、私の夢なのだから。
私にも人並みに性欲というものがある。
表に出していないだけでしっかりある。
女体の神秘には興味津々だ。
つまり、さっきの神を名乗る物体は私の潜在意識なのかもしれない。
モテたいなら女を知れ、という事だろう。
こんな機会は二度と来ないだろう。
期待に胸が膨らむ。
…うむ、確かに大きいのも小さいのも受け入れよう。
問題は前と後ろ、どっちを選ぶか。
どちらも同じように淡い光に照らされてはいるが奥の方までは見えない。
耳をすませても何も聞こえない。
どっちを選んでも同じだろうか?
これは夢なのだから、どちらを選んでも都合の良いように望んだ結果を見れるかもしれない。
「…e 」
何か音が聞こえた。
背後から何か叫んでいるような声。
ただ、言葉じゃなくて本当に叫んでいるだけのような。
少なくとも私が望んだ女の子は奇声を上げたりしないものなのだが。
これはもしかしたら、夢の自覚があって内容を変えられない悪夢かもしれない。