自称名探偵なんかの助手じゃない!
「助手、ここが『謎の奇行黒装束事件』のあった商店街かね?」
「助手じゃない。浅田だ」
「では、早速聞き込みをしようではないか」
その口調、正直、イタイ。あと、行かせないぞ。
「その手を放したまえ。事件が名探偵であるボクを呼んでいるんだ!」
「呼ばれるのは生徒指導室だ。近所からクレームがくるんだぞ。道草を食う女子生徒がいるって」
「草は食べないぞ?」
これはボケ? ツッコんだほうがいいのか?
「な、なんでやねん」
「君はふざけているのか?」
……なんでやねん。
「ゴホン! クラスが同じって理由で風紀委員長にお前の――って、いない!?」
しばらく探すと、商店街の入り口から三軒目のろうそく専門店にいた。
それより、この商店街大丈夫なのか? 塩専門店、マネキン専門店があったけど……特に、マネキン専門店は黒字なの?
「昨夜、この商店街で『謎の奇行黒装束事件』が起こったと聞いたが、何か怪しいものは見ていないか?」
さっきから言ってる、『謎の奇行黒装束事件』って何だよ。不審者情報だろ。
「あら、探偵さん?」
店員に迷惑をかけるな。
「そうね、あれは、昨日の夜中のことよ……」
ノリがいい。
「二階に住んでいるのだけど、夜、物音がして起きたの……」
その、神妙な顔つきやめろ。
「窓から覗くと、そこには……全身黒い服装をした、小柄な人がいたの」
「そ、そうなんですかー」
冷や汗かいてるけど?
「何か知ってるのか?」
「ギクッ!」
ギクッって言う人、初めて見た。
「謎が解けたよ……助手、みんなを集めてくれ」
みんなって誰だよ。警部でも呼ぶか? 補導されるだろうな。二人とも。
「犯人は……ボクだ!」
自白した。
「昨夜、ボクはマネキン専門店に忘れ物をしたことを思い出して、商店街に取りに行ったんだ」
お前、マネキン専門店に行ったの!? というか、
「閉まってなかったのか?」
「あそこは二十四時間営業なのよ」
需要がわからん。
「だから、ボクが犯人だ」
どうでもいいことがわかった。お前の私服は全身黒だと。
「とりあえず、謝ろうか」
「「お騒がせしてすみません」」
「大丈夫よー」
俺も謝る。クラスメイトとして、風紀委員として、助手として……いや違う! 俺は助手じゃない!