第4話 魔物
エイジは剣をメイン武器にしている、いわゆる剣士というやつで、主にモンスターの討伐とドロップアイテムの売買で生計を立てている[冒険者]という職業に属している。
この世界ではエイジの様なプレイヤーを[冒険者]、武器やアイテムを作り冒険者相手に商売をするものを[生産者]とよばれ、大きくはその2つが職業になるようだ。エイジの場合は[冒険者:剣士]となる。
[生産者]の場合、[生産者:鍛治師]や、[生産者:調合師]などとなり、それに応じた[スキル]を習得していく事になる。
ミナトの場合は[冒険者:槍使い]となる。初心者なので[スキル]はまだ何もない。
「今、どこに向かって進んでいるか分からないが、とりあえず戦闘になることは確実だろう。なので回復アイテムを渡しておくよ。」
そう言って回復アイテムの[ポーション(中)]を5つ貰った。アイテムボックスに入れてすぐに使えるようにセットした。ダメージを回復させるアイテムは取り出さずとも使えるように設定出来た。ワールドポータルから説明をしてもらっている。
「クイックポーチの使い方も大丈夫だな、よし。」
クイックポーチとよばれる使い方を確認したエイジは軽く頷いた。面倒見の良いプレイヤーに発見されてよかったとミナトは思った。
しばらく進んで行くと何かがコチラに向かってくる。見通しの良い平原は相手からもよく見える。徐々にその姿が鮮明に見えてきた。見た感じオオカミだが、黄色がかったゴツゴツとした白い癖っ毛、太い四肢、そして何よりその長い犬歯と赤い目と大きな身体が現実世界のオオカミとは異なっていた。
「ま、まずい!![ラージャウルフ]だ!」
虎をもう一回り二回り大きくしたようなその魔物は自身の射程距離圏内に入るや否や、突如襲ってきた!エイジは剣を構え迎撃する。左手にはいつの間にか盾を持っていた。
瞬く間に距離を詰めてきたラージャウルフは、その速度を緩める事なく自身の右前足をエイジの頭を目掛けて振り下ろしてきた!エイジは盾で受け流し、その右前足に斬りつける!
「ミナト!!逃げろ!!コイツはまずい!!」
エイジの声で我を取り戻してラージャウルフのは逆、もと来た方向に走り出した。足手まといになる・・・、いや違った。恐怖だ。ブルーゴブリンには感じなかった、真の恐怖から逃げ出した。
「やばい!何なんだよあのオオカミ!!」
後ろを振り返る余裕もない。
「ぐぁ!」
「ひぃ!やめてくれ!!」
「た、助けてくれ!!」
「ぎゃあーーー!痛い!痛い!痛い!!」
耳を塞ぎたくなるような悲鳴に背を向けてミナトは走る。ワールドポータルは痛みなど感じないと教えてくれた。恐怖は軽減されているとも言った。なのにエイジは痛いと叫んでいる!恐怖で振り返る事も出来ないでガムシャラに逃げている!
「いやだ!いやだ!死にたくない!!」
ゲームだから死ぬ事はない、そうだ死ぬ事はないんだ。そう分かっていても恐怖で足を止められない。いつの間にかエイジの声が聞こえなくなっている。ラージャウルフのがコチラに向かってくるのが背中越しに分かる!
足をとめるな!走るんだ!そう自分に言い聞かせて走る!
ラージャウルフが迫り来る!唸り声を上げて向かってくる!
「はぁ!はぁ!なんでこんな目に!!」
何か人工物が無いのか!誰か!誰かいないのか!!見渡す限り平原、平原、何も無い。
誰か・・・助け!