第3話 イリエ・エイジ
「おい、大丈夫か!!」
身体を揺さぶられる感覚がある。どうやら倒れ込んでいた様だ。頭がもやもやするし、気分も良くない。身体を起こして声をかけてくれた人を見た。30代くらいの男性だった。身なりからしてプレイヤーだろう。
「あ、ありがとう。大丈夫です。」
「そうか、良かった。」
周囲はさっきまでの場所ではなかった。どこかしらの平原の様だが見渡す限り建物らしいものもなく、ひたすらに草の生えた原っぱだった。それに他の生物がいる気配も感じられないのがさらに不安感が増した。
「あんた、初心者だろ?大変な目にあったな。」
「はい、さっきログインしたばかりの初心者なんですが、いったい何があったんです?」
「分からん、こんな事は初めてだ・・・。プレイヤーに死をって、どういう事だ・・・。」
このプレイヤーも困惑している表情で、周囲を見回している。
「あぁ、すまない。俺はイリエ・エイジ、ゲーム歴は2か月だ。」
「俺はシバ・ミナトです。ここはどこなんです?」
「エル・ナルの街って所に居たんだが、突然ワケの分からん平原に飛ばされた様だ。」
エル・ナルの街はワールドポータルの説明だと中級者が多く居る街だと教えられた。様々なプレイヤーが集まり流通の中心になりつつある成長過程の大きな街らしい。
「戦闘訓練は終わったのか?」
「はい、チュートリアルは一通り。」
「よし、なら少しの戦闘なら動けるな。この場を離れよう。この場所は、何か、何か気色が悪い・・・。」
「分かりました、ついて行きます、イリエ・エイジさん。」
「エイジでいい。」
「なら、俺もミナトで。」