05.電話は3コール以内が原則だよ.xls
「あなたは……一体?」
聖女ちゃんin勇者ボディのセフィリアちゃんに、僕は話しかける。
「あー、僕はね。異世界管理者なんだ。えっと、勇者様。君とちょっと話をしたくて……その取り巻きの女の子達は……席を外して貰う訳にはいかないかな?」
僕が遠慮がちにそう言うと、両端の女の子たちはまるで感情が急激に爆発したみたいに、
「なぁにあんた!急に出てきて勇者様と話そうなんて、図々しくない!?」
「そうよそうよ!さっさとあっちいって!べーだ!」
などと言い出す。
「クッソ……あまりにNPC的な反応すぎて笑うな……」
ぼそりと僕は苦笑するが、まぁこの際彼女たちの反応はどうでもいい。
彼の……いや、彼女の許可さえ得られれば、問題はない。
するとセフィリアは、
「ええ、俺……いや、わたくしは構いませんわ」
とあっさりOKを出してくれるのだった。
すると仕方なく、不承不承、といった体で取り巻きの女の子達はどこかへ消えていった。
◇
「で、話なんだけどね」
「はい」
セフィリアに改めて、今の状況を説明した。
「まぁ……では、俺……いえ、わたくし……が、勇者などという分不相応な役割を担っているのも、そちらの手違い……という事ですのね」
役割に染まる度合いと魂の融合度とは厳密にはイコールではないらしく、セフィリアは少なくとも97%以上融合した今となっても、かろうじて自分の一人称を保とうとしているようだった。サトウタロウ君は話してるうちに女言葉になって、殆ど聖女になりつつあったが…。
―――そういえば、圭子さんの方は大丈夫かな。心配はしていないが、様子は少し気になった。
「まぁ、そういう事。で、僕は君の魂をそこから出して、本来いるべき世界へ還したいんだけど、諸事情あってすぐに対応はできなさそうなんだ。勇者くんの魂の方も同じような感じでね、彼の肉体……つまり、本来君が入るべき『聖女の肉体』は、そちらの世界で安全な場所に保存してある」
ひと息に説明したが、セフィリアは深く頷いて、なるほど……と理解を示したようだ。
「では、わたくしはこのまま貴方の作る『家』……でジッと待っていればよろしいんですの?」
「そういう事だね。理解が速くて助かるよ」
内心、ホッとしていた。タロウくんはマジで話全然通じなかったからな……精神か肉体年齢の差なのだろうか。
とにかく話もついたので僕は場所作成コマンドを実行し、彼女の仮宿を作り、サトウタロウ君の時と同様に身柄を確保しておいた。
「ふう、やれやれ。まだ処遇は決まらんけど、取り敢えずこれで一段落か」
僕は肩の荷がひとつ降りたのを感じた。
しかし、そこからが問題だった。
プルルルルッ!
異世界内共有スマートフォンが強烈な着信音を鳴り響かせる。番号は……内線だな。誰だか分からん。僕はすぐに出る。障害対応中とはいえ、3コール以内が原則である。
「はい。魚卵です。え、ああ、圭子さん?どしたんすか」
通話口から聞こえる口調は圭子さんにしては珍しく狼狽した様子で、少し不安を煽られる。
「まずいことになったよ、正雪くん。聖女ボディのサトウタロウ君だけどね。君の作った家にいない。どうやら、脱走したか、誰かに連れ去られたか……少なくとも、私が今ダイブしている世界にいないよ」
「え」
それは、風雲急を告げる報せだった。
『はい、こちら転生管理システムです!』5話です。
セフィリアちゃんの正気を取り戻せ!な回。
因みにわたくし不勉強でして、なろうにおける『聖女モノ』のテンプレートをよく知らないんですよ。ネタにしといてなんですが。
『チート&ハーレム勇者』みたいなテンプレートに較べるとまだまだ認知度低いんじゃないかなって思いますね。
あと、実は当初の想定だと更に『悪役令嬢』も混ざって3人がごちゃまぜ!って考えがあったんですが、悪役令嬢のテンプレートは聖女以上に知らんので(苦笑)そのうちキチンと履修したいっすね。
さて、聖女ボディのサトウタロウ君は、一体何処へ行ってしまったんでしょうね……?
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