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青年は顔を上げた。
青年「まるで詭弁だ!…おカネが『負債』そのものだと!?」
老人「そうだ、おカネは『負債』としてつくられている…会計的に明らかだろう?…簿記は実務であり、事実だ…まさか、君は事実を疑うのかね?」
青年「いや、それは事実ではないな!」
老人「なぜ?」
青年「危なくダマサれるところだった!…事実はこうだ!…銀行は預金を集め、そのおカネを貸しているんだ…つまり、銀行にとっても集めたおカネは『資産』になるはずだ」
その言葉に、老人は嬉しそうに微笑んだ。
老人「君の方が常識的なんだろうがな…しかし、残念ながら、それは事実ではないんだ」
青年「な、なに!」
老人「たしかに、銀行は集めた預金を貸す場合もある…しかし、銀行が預金を貸すことはほとんどない」
青年「な、なにをいいだすんだ!」
老人「それが事実だから仕方がない」
青年「銀行は預金を貸さない…そう言うのか?」
老人「そうだ、『銀行は預金を貸さない』…この仕組みを『信用創造』という」
青年「じゃあ、どうやってカネを貸す!?」
老人「貸すんじゃない…預金をつくるんだ!」
青年「預金をつくるだと!」
老人「そうとも!…創造といったろう?」
青年「証拠は!証拠を示してもらおう!」
老人「証拠もなにも、日銀総裁が国会で『信用創造』について認めておる」
青年「・・・」
老人「イングランド銀行もそのことを認めている」
青年「…証拠を示さない限り、認められない」
老人「じゃあ、これを見ろ」
そういって、老人は戸棚から書類を取り出した。
○○銀行と書かれた、決算書の貸借対照表だった。
老人「この通り、銀行の決算書に、預金は負債として計上してある…つまり、預金というおカネも、銀行にとっては『負債』で、借りた側にとっては『資産』であるわけだ」
青年「・・・」
青年は、認めざるをえなかった。
決算書はウソをつかない…
青年「わかった…おカネが『負債』であることは認めよう」
老人「理解してもらえて、なによりだ」
青年「だが…待て!」
老人「・・・」
青年「このまま『負債』という話しを進めれば、お前は決まってこういうはずだ!」
老人「・・・」
青年「『国の借金』は『借金』ではなく、『負債』というおカネそのものだと!」
にたっと、老人はほほ笑んだ。
老人「ご明察…君は頭が良い…国の借金とは、つまりおカネの発行だということだ」
青年「ふざけるな!それこそ詭弁だ!…『国の借金』がおカネだと!そんなことはありえない!」
老人「だから、日本国民みんなダマサれているんじゃよ…」