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 老人「君がいっている『国の借金』は借金ではないんだ」


 青年「言い訳はよせ!」


 慣れた様子で、老人は言葉を返した。


 老人「よかろう…では、質問に答えてくれ。なに簡単な質問だ」


 青年「・・・」


 老人「さて…君にとっておカネをもらったら『得』か…それとも『損』か?」


 青年「もちろん、カネをもらえば『得』に決まってるだろ…」


 老人「じゃあ、『得』ってことは、君の『資産』になるってことだ」


 青年「まあ、そうだろうな…カネをもらって『負債』になるやつはいない」


 老人「その通りだ!君はもう答えをいった」


 青年「は!?…」


 老人「『負債』になるやつはいないってな…」


 青年「なにをいってるんだ?」


 老人「冷静に考えてみたまえ」


 青年「・・・」


 老人「ほんとうに、おカネは、誰の『負債で』もないのかね?」


 青年「当たり前だろ!カネは誰にとっても『資産』じゃないのか!?」


 老人「よかろう…君は簿記を勉強した事はあるか?」


 青年「3級なら大学で習った」


 老人「じゃあ、簿記を思い出してほしい」


 青年「・・・」


 老人「貸借対照表で、『資産』の反対側には、かならずなにがあった?」


 青年「『負債』だ…」


 老人「そう、貸借対照表で『資産』の反対側には、同額の『負債』があったはずだ」


 青年「まあな」


 老人「たとえば、君が銀行から100万円借りたとしよう…その100万円は、君にとって『資産』か『負債』か、どちらだね?」


 青年「それは『資産』になる…」


 老人「じゃあ、銀行にとって貸した100万円は?」


 青年「『負債』だろう…」


 老人「そうだ、いま、君はいまおカネの本質にたどり着いた」


 青年「・・・」


 老人「おカネとは君にとって『資産』ではあるが、おカネを貸している方にとっては『負債』なんだ」


 青年「・・・」


 老人「このことは、おカネがだれかの『負債』として生み出される…という事実を表しているとはいえないか?」


 青年は、机の一点を凝視したまま、動かなかった。

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