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雨は激しく、降り続けていた
傘もささず、青年は、夢中で歩いていた。
雨にうたれた体は、ずぶ濡れだった。
しかし、青年の顔は、真赤に上気している。
すさまじい勢いで、青年は、「政務事務所」と掲示のある、古びた建物の中に押し入っていった。
青年「いるんだろ!」
一人の老人が、ボロボロの皮張りのソファーに座っていた。
老人「なにか用かな?」
青年が驚くほどに、老人の態度は落ち着き払っていた。
老人「こんな嵐の日には、きまって、血気盛んな若者が迷い込んでくるもんだ…」
青年「迷い込んできたんじゃない!…俺はこの町からお前を追放しにきたんだ!」
老人「追放!?」
青年「そうだ!この国をダメにしたお前はこの町に住む資格はない」
老人は口をつぐんだ。
そして、つぶやくようにいった。
老人「いかにも、ダメにしたというのは真実かもしれんな…」
青年「言い逃れは許さない!…お前がやってきた悪行を暴いて、この町から追い出してやる!」
いっそう、雨の勢いは強まっていた。
老人「わかった…この天気が静まるまで議論しようじゃないか」
すさまじい形相で、青年は、老人を睨みつけながら、その対面に座った。
2人の議論がはじまった…