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戦の終わりは突然に

本日五話分投稿します!

主人公の話は二話から、主人公の一人称視点は四話からです!

 ロムルス暦 五百八十二年


 人類種の住む人域じんいきと魔族の住まう冥域めいいきが同じ大地に広がる世界。

 両種間の熾烈な戦争は、百年目に突入しようとしていた。


 始まりは魔族の頂点に君臨する魔王が世界征服を目論み、人域へと攻撃を仕掛けた事だ。

 当然人類種はこれに対抗し、多くの者達が魔族達との戦いに身を投じていった。


 だが魔族と人類種では圧倒的な個体差がある。

 まともに戦えば冥域側が勝利を収めるのは必定だった。

 それでも戦況が拮抗していたのは人類種の中でも稀に存在する、魔族に匹敵する力を持った者達の存在が大きかったと言える。

 その者達の中でも特に強大な力を持つ五人は五英傑と呼ばれ、人域においてはまさに希望の象徴だった。


 この事態に魔王は焦りを見せる。

 本来ならば数年で勝利するはずだった戦が長引く事は、魔王にとって予測外の出来事だったのだ。

 しかし拮抗していると言っても、総合的な戦闘力では間違いなく冥域側が勝っている。

 長引いているとは言え、このまま戦いを続ければいずれは勝利を手に出来る……そのはずなのだが、魔王の焦りが消える事は無かった。


 それには理由が二つある。


 一つ目は寿命。


 魔王は自身の死期を悟っていた。

 だからこそ最期に大望を、世界を魔族によって支配するという光景をこの目で見るという……おのが理想を達成したかった。 

 しかし、自身がその光景を見る事が出来ないかもしれないという不安が……戦争開始から九十年を経て、確信に変わったのだ。


 そして二つ目は、自身の死が冥域側の敗北に繋がってしまうかもしれないという疑念。


 魔王が死ぬという事は、冥域の統治者が不在になる事を意味する。

 それは間違いなく冥域に波紋をもたらす。

 人域側に五英傑をはじめとする強者たちが存在する中、もし混乱状態の冥域が攻め込まれれば……そう考えた時、魔王がするべき事は決まっていた。

 

 まずは、次世代に冥域に君臨する魔王の選定。

 自身の後継者を決める事は急務であった。

 そしてそれに順じて、行わなければならない事がもう一つ。


 それは人類側に和平協定を申し込む事。魔王を選定する間に冥域を攻められないようにするためのものだ。

 王達と交渉の席に着いた魔王は莫大な資金と冥域の秘宝を渡し、こう提案した。


『地続きになっている冥域と人域を隔てるよう、そちらの大魔導士とわれの力でが幹部十人をにえに捧げ、世界を二つに分ける』

『分かたれた世界は不干渉の契りにより、今後千年は互いに干渉する事が出来ないようにする』

『千年と言う月日ならば……荒れた地が再び豊かになり、人類種が繁栄するには十分だろう』


 この提案に、王達は激怒した。

 当然である。元はと言えば戦争を仕掛けて来たのは冥域側。

 それを急に都合の良い言葉を並べ、戦争をやめようなどとあまりにも勝手が過ぎる。


 しかし、その指摘に対し魔王は一切動じる様子はない。

 悪びれる様子も無ければ、寧ろ何を怒っているのだといった風だ。

 厚かましく、恥知らず。

 他人の迷惑などにかまわずに、自分の都合や思惑だけで行動するその姿は、まさに魔王に相応しかった。

 

 そして最終的に、人域側は魔王の提案を承諾した。

 彼らは、魔王がもうすぐ死期を迎えるなどという事は微塵も思っていない。

 見えているのは、戦況の悪さのみ。

 このまま戦いを続ければ、人域側が負けるのは確実であると考えていた王達は渋々と憎き魔王の提案を呑んだ。

 何としてでも避けねばならない未来を回避するために。


 こうして、何とも傲慢な和平条約が締結された。



 そこから先は実に滑らかに事が進んだ。

 魔王の幹部十名を生贄に捧げ、五英傑の一人である『大魔導士』と魔王は世界規模の魔法を放った。

 凄まじい魔力の奔流が地をり、海をき、世界が分かたれたのだ。 


 っ……!! 限界か……。


 世界を二分した後、魔王は自身の体の異変を感じる。

 世界規模の魔法の使用が、自身の死期を更に早めてしまったのである。

 大望を抱いたが、達成できなかった。

 その無念さを、悔しさを抱き死ぬ事は彼にとってこの上ない苦痛だろう。


 だが死の間際、彼の表情は笑っていた。


 確かに自分は世界統一を達成できなかった。

 その光景を自身の目で見る事が叶わなかった。

 しかし、種はかれた。


 すぐに次世代の魔王が選定される。

 傍若無人で、力のある者が選ばれるような選定方法を魔王は定めていた。

 そして千年と言う時間。

 千年もあれば荒れた地が再び豊かになり、人類種が繁栄すると言ったがそれは魔族も同様である。

 幹部十名を死なせはしたが、間違いなくそれに成り代わる強者が現れる。

 魔王はそう確信していた。


 ならば……良い。

 我が夢は……次に、託そう……。


 薄れゆく意識の中でそう思った魔王は、静かに息を引き取った。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

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