魔王の『天職』検査
天職検査、天啓板というのを用いて己の才能や能力値から最適な『天職』が授けられるというものだという。
何でもこれは普通に就職するというのとは訳が違うようだ。
大きな特徴は天職を得ると、それに応じたスキルが天職を得ていない時よりも遥かに習得しやすくなる。
更に、その天職でしか得られないスキルなども多くあると言うのだ。
『天職』には戦闘向けのものから支援向けのものまで多岐に渡り、この学院はその結果を基にクラス分けをするらしい。
さっき副学長が言っていたのはそう言う事か……。
「説明ご苦労ネスティ!」
「イブル様のためとあらばこのネスティ、世界の真理をも解き明かしてご覧に入れます」
「そ、そこまではせんでいい……そうだネスティ。先程は良く堪えたな!」
第二講堂へ向かう中、一通りネスティから『天職検査』の事を聞き終えた俺は話題を変える。
「はい。とても頑張りました。実は私、秘策を覚えまして」
「秘策? 何だそれは?」
「怒りとは感情から来るもの、感情とは心から来るものです。つまり心が落ち着けば良い訳です」
「ほう? つまり心を落ち着かせる方法を自分で開発したというのだな! 流石俺の部下だ」
「ありがとうございます」
「して、それは一体どういう方法なのだ?」
「まず心の中にイブル様を用意します」
ん……?
「そしてそのイブル様に心の中でよしよしされながら、「大丈夫、ネスティは大丈夫」と声を掛けてもらうのです……。この前イブル様に膝枕をされた際に思いつきました……」
恍惚そうな表情でネスティは言う。
「な、なるほどな……まぁお前がそれで落ち着けるならいいが」
俺は苦笑いする事しか出来なかった。
「はっ……!?」
しかしどうしたのか、ネスティは何か気付いたような声を上げる。
「ど、どうしたネスティ?」
「い、いえ……確かにこれでは落ち着く事は出来ますが私が心の中でイブル様を作り出すという事はつまりイブル様が二人になるという事……!!」
……どういう事?
ネスティの悩みが俺には理解出来なかった。
「誤解しないで下さいイブル様! これは心を平静に保つための措置……!! 私の心と身体は貴方様のものです!!」
本当に何を言っているんだろう俺の部下は。
必死に何かを弁明しようとしているネスティだが、何を弁明しているのか分からないため
「お、おう」
と、言う事しか出来ない。
……そんな話を展開しているが、俺は先程から何やら視線を複数感じていた。
ふむ……? 一体どうしたというのだ? まさか、コイツら……ようやく俺の偉大さに気付いて……!?
「くくくっ、アイツだろ? 学年首席に喧嘩を売ったバカってのは」
「あぁ……全く、よくもまぁあんな事が言えたもんだな」
「あの人マナ測定でゼロ点だった人でしょ? 本当にお笑い草だよ」
「まぁあんだけ大口叩いたんだ。どんなもんか見てみようぜ」
どうやら違うようだ。
なるほど、奴らには未だ俺がエヴァに盾突くただの愚か者に見えているという訳か……。
まぁ無理も無い……第一試験のマナ測定ではゼロ点を叩き出し、第二試験では皆戦闘に必死だった事からあまり俺に意識を向けていなかっただろうからな。
しかし、今日この後……コイツらは思い知る事になる!!
俺の『天職』を見てな!!
ふふふ、この俺の事だ。
きっと素晴らしい『天職』を授かるに違いない、というか間違いなく授かるだろう!!
何故なら俺は、最強だからな!!
心の中で高笑いしながら歩く俺。
そうしている内に第二講堂へと到着した。
◇
「それではこれより、天職検査を行う!! 各自天啓板の前に並ぶように!!」
マナ測定機よりも貴重なのか、天啓板は十個しか置かれていなかった。
第一試験と同じように俺達は列を為して並ぶ。
そして流れるように、検査は始まった。
「ウリネス・バート! 『魔法使い』、所属はゴールド3!」
天啓板に浮き上がった文字を教員達は読んでいく。
そして表示された天職に従い、生徒たちをクラスに配属させていった。
見ると、クラスにはゴールドとシルバーの二種類がある。
ゴールドクラスは戦闘職、シルバークラスはそれ以外の者が所属するらしい。
更にただ単に二つのクラスに分けられる訳ではなく、天職のランクや入学試験の結果によって三つの階級に分けられている。
「上からゴールド1、ゴールド2、ゴールド3。シルバーならシルバー1、シルバー2、シルバー3……なるほどな」
配属のシステムを理解した俺はそう呟いた。
そしてそこから明瞭になった事実、エヴァは間違いなくゴールド1所属という事だ。
ふん! 余裕だな!!
俺は自分のゴールド1入りを確信している。
一刻も早く天啓板で検査したい所だが、俺にはもう一つ気になる事があった。
「次の方!」
「では行ってまいります。イブル様」
そう、俺の幹部の天職検査だ。
「うむ!」
俺はネスティの背中を見送る。
「……」
彼女はマナ測定の時と同じように、天啓板に触れた。
数秒後、ネスティの天職がそれに表示される。
「こ、これは……!?」
天啓板に書かれた文字を見て、何故か教員は言葉を失っていた。
「どうした……!?」
「い、いえ……これを……!!」
「なぁっ!?」
教員の動揺に他の教員が駆けつける、しかしそいつも天啓板に書かれていたものを見て絶句した。
その様子を見ていた新入生たちは皆ざわつき始める。
一体何があったのかと、興味を示し始めたのだ。
「……」
そんな中、何とか平静を保つように教員はネスティの結果は口に出した。
「……ネスティ……『魔導士』!! 所属はゴールド1!!」
『ええええぇぇぇぇぇぇ!!??』
教員の言葉に、場内全員が声を上げて叫んだ。
「ま、待てよ『魔導士』って……!? Sランクの職業じゃないのか!?」
「う、嘘だろ……!? 家名を言って無かった事は、平民!? そんな馬鹿な!!」
周囲の人間が狼狽し、慌てふためいている。
ふっ! 流石は俺の幹部!! 見せつけてくれるわ!!
自分の部下の偉業に俺は鼻が高くなった。
「良くやったネスティよ!」
衆目の目に晒されていても一切動揺する事無くこちらへ戻ったネスティに俺は声を掛ける。
「イブル様の部下であれば、この程度当然の事です」
「ガハハハハハ!! 謙遜するな!! まぁ良い、待っておれ。俺もすぐに吉報を持ってきてやる!!」
「はい。イブル様であればゴールド1所属は確実です」
ネスティの次に検査をするのは俺だった。
自信に満ち溢れた様子で俺は、前に進む。
「お、おいそう言えば今の『魔導士』の子ってアイツと一緒にいるよな?」
「ま、まさか奴も同じように……!」
そんな声が聞こえてくる。
ガハハハハハ!! ネスティによって周囲の俺を見る目が変化している!!
そうだ、ようやく気が付いたか俺の偉大さに!!
「そ、それでは……天板に手を」
見れば、教員までもが俺を見る目が変わっておりおずおずと天啓板を差し出した。
ガハハハハハ!! 愉快愉快!! これから判明する俺の『天職』を見て全員、今までの態度を後悔するが良い!!
そう意気込み、俺は天啓板に触れた。
光の線が、天板に刻まれ……克明に文字を記入していく。
そして光の線が消え、文字が書き終わった。
教員は俺の天職が書かれた天啓板を手に取る。
「ガハハハハハハハ!! どうだ、俺の天職は!! 一体どれ程希少なものなのだ?」
決めつけるように、俺は教員に問う。
「……」
しかし、教員はまじまじとそれを見ると冷静になっていた。
「え、えーと……」
「どうした? 早く言うが良い!」
俺がそう急かすと、目の前に立つ教員は苦笑いをしながら頬を掻き……言った。
「……イブル。天職無し、所属『シルバー3』」
……。
「……は?」
教員の言葉に、俺は自分でも思うくらいの間抜けな声を漏らした。
そんな中、視界に入ったのは俺の天職が書いてある天啓板。
そこには天職名らしいものは無く……ただ、『XXX』と書かれていた。
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???
俺は思わず心の中で叫んだ。
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