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【web版完結】軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。〜乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?〜  作者: 冬瀬
軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。〜乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?〜
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76*発売記念特別編*「特別な日」

3/2は、書籍『軍人少女〜』の発売日でした!!

発売日遅刻してしまって、すみません(泣

お納めくださいませ……



二年目を迎えた学園生活の、とある一日。

特段代わり映えのない平和な毎日だが、ラゼにとってその日は間違いなく特別な日だった。

普段通りの授業が終わった放課後。

フォリアがモルディール卿に捕まったのを見届けて、ラゼは寮の自室まで転移する。


「さてと!」


彼女は一息入れると部屋を出て、寮で開放されている調理場まで急いだ。


「お待たせしました!」


そこには、既にエプロン姿のカーナがいて。


「状況は?」

「作戦通りです! ターゲットは協力者のもとに無事、到着しました!」


彼女に尋ねられて、ラゼはこくりと首を縦に振った。


「よし。じゃあ、早速取り掛かりましょう!」

「はい!」


カーナの一声で、ラゼも彼女からもらったエプロンをつけて腕をまくる。


そうして始まるクッキングタイム。


ルベンに振る舞うために習得した、カーナのお菓子作りの腕はなかなかのもので、彼女は一寸の迷いもなくケーキを作る。

しっとりふわふわのスポンジを焼き上げ、たっぷりと真っ白なクリームを塗り、真っ赤なイチゴをふんだんに載せる。


その隣。

仕上げにフライパンに酒を注いで、華麗にフランベを決めたのは、ラゼ・グラノーリだった。

軍で生活していた時には、ひとり暮らしの彼女。ここぞとばかりに、たまの息抜きとして極めた料理の腕を振るう。

簡単にサラダとスープ、それから白身魚のトマト煮を完成させたラゼの表情は、達成感に満ち溢れていた。


「完璧!」

「び、びっくりしたわ」

「あっ。すみません!」


いきなり炎が上がったのを見たカーナが、驚いた顔で彼女を見つめる。


「大丈夫よ。ラゼは料理も上手なのね?」

「食べることが大好きなので。美味しいものが作れるように色々と」


ラゼは笑いながら応えた。

今はお金があるので、料理に使う材料にもかなり余裕があり、色んなことができる。

しかし、軍の長期任務に当たると、限られたもので何とか美味しく食事ができるようにと考えなければ、やっていけなかったのは余談だ。


(兵站部に乗り込んだの、懐かしいな)


本当に我慢ならなくて、軍の兵站機関に文句を言いに行ったのはいい思い出。

ラゼが転移魔法を応用して、食料をアポートで取り寄せることも勿論可能ではあるのだが、ひとりだけに持たせておくのはリスクがあった。

彼女が率いる隊では、こっそりその方法で食事を楽しむことはあったが、他にも隊員たちがいることに配慮すると、配給される食料からは逃れられない。

食べることだけを生きがいにしていたようなものだったので、ラゼは改良を求めたのだった。

そこでも前世の知識が活躍してくれたおかげで、今もめげずに軍人を続けている。


(まあ、まさかこんな任務を請け負うことになるとは思ってなかったんだけど)


続けてみるものだなぁと、彼女は考えながら、出来上がった料理を皿に盛った。


「こっちは終わりましたよ!」

「わたくしもあと、デコレーションで終わるわ」

「じゃあ、ちょっと先に部屋の様子を見てきますね」

「わかったわ」


ラゼは一足先に、寮で借りた部屋に飛ぶ。


「曲がってるって、イアン!」

「え? こう?」

「いえ。もっと左です」


そこには、部屋の飾り付けをするイアンに指示を出す、ルカとクロードの姿が最初に目に入った。

華やかに飾られた部屋を見て、ラゼは目を輝かせる。


「いいですね!」


「「「うわっ」」」


いきなり現れる彼女に、いつまで経っても慣れない乙女ゲーム攻略対象者ボーイズが、肩を揺らした。


「驚きました……」


クロードが眼鏡を上げながら、ラゼを振り返る。


「すみません、つい」


ラゼは笑いながら、味見用に持ってきた皿を机に置いた。


「味見用です。ちょっと食べてもらえませんか?」


この日のために、色々とリサーチして、寮で働いている料理人にも材料の仕入れなど協力いただいたのだ。

不味いことはないはずなのだが、三人が手を止めて自分の作った料理に集まってくるのをじっと観察する。


「ん!」


最初に大きな口を開けて、躊躇なく料理を食べたイアン。

ラゼは軍で培った観察眼で、反応を見逃さない。


「美味しいよ!! これ、本当にラゼさんが作ったのか?!」


一瞬たりとも顔を歪ませなかった彼の素直な反応に、ラゼはほっと息を吐く。


「私が作りましたよ。お口に合ったようでよかったです」


どうやら、今から寮の食堂に駆け込む必要はなさそうだと、彼女は安堵した。


「ラゼさん、料理もできるんですか。本当になんでもできるんですね」

「それは褒めすぎ。グラノーリは美術が全然ダメじゃん」


辛口審査のルカだが、こちらも不味いとは言ってないので焦りはしない。


「創作系がダメなら、料理もできないと思ってたけど。そうでもないんだね?」


ルカの指摘に、ラゼは苦笑する。


「創作というより、芸術が難しいんですよ。料理は美味しそうな盛り付けとかを、真似すればいいんですけど。美術は正解がわからなくて」


彼女はぼんやりと美術教師のことを思い浮かべたあと、我に返った。


「そろそろ時間ですね! 準備、終わらせちゃいましょう」


後からルベンとアディスも合流し、一気に部屋はパーティー会場に変わる。


「ばっちりね」

「はい!」


部屋を見渡したカーナに、ラゼは頷く。


「じゃあ、あとは私が転移で連れて来ますので! 皆さん準備しといてください!」


そう言うと、ラゼは協力者ことモルディール卿との約束の場所に転移する。


「どうやら、迎えが来たみたいだ」

「え?」


シンと静まり返った礼拝堂に、彼の声はよく響いた。

フォリアは不思議そうにモルディール卿が見つめる先を振り返り、ラゼと視線がぶつかる。


「暗くなって来たし、帰ろう!」


モルディール卿と一緒に長椅子に座っていたフォリアのもとまで行くと、ラゼは彼女の手を取った。


「お待たせ!」


ラゼはそう言ってにっこり笑うと、フォリアとともにパッと転移魔法を発動させる。



「えっ!?」



フォリアが気がついた時には、そこは瞳と同じさまざまな緑色のバルーンで飾りつけられた部屋で。

主役を待っていた仲間たちが、盛大にクラッカーを鳴らす。




「「「誕生日おめでとう!!」」」




一瞬でたくさんの事が起こり、固まってしまったフォリア。


「フォリア。誕生日おめでとう」


ラゼは早速、プレゼントを彼女に渡す。


「えっ、え! あ、ありがとうっ!!」


状況を理解したフォリアは、泣きそうな顔でプレゼントを受け取ると、思いっきりラゼに抱きついた。


「うわっ」

「嬉しいよぉ〜!! ありがとぅうう!!」


本当に泣いてしまった可愛い友人に、ラゼも胸がギュッと音を立てる。





それは平和な学園生活の、当たり前のような日々のとある一日。


しかしこの日は、ラゼが学園に入って初めてできた友達の誕生日。

孤児院で強かに育ち、優しい心を持った、天使のような大事な友人。




「私のほうこそ、いつもありがとう」




ラゼにとってその日は、間違いなく特別な日だった。







いつもお読みいただきありがとうございます!!


3月2日に、無事に拙作『軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。〜乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?〜』の発売日を迎える事ができました。

本当に、読者の皆様のおかげです。

少しでもお返しできるように、これからも少しでも早く更新できるよう頑張ります。


また、ツイッターでは、タムラ先生が描いてくださったキャラクターデザインや、カッコいいラゼさんのFAもいただいているので、もしよろしければ絵だけでも覗いて見てください!!

(冬瀬も微力ながら、バレンタインの小話を載っけてます…苦笑)


書籍は、電子版だと試し読みやキャンペーンもやっているみたいです。

既にご購入いただけた方もいらっしゃるようで、読者さまには本当に頭が上がりません。


そして、お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、なんと本作「コミカライズ企画進行中」だそうです!!


読者さんの推しのおかげです、、泣

未熟なアマチュア作家ではありますが、とにかく本作は完結を目指して邁進します。

どうか、温かい目で見守ってやってくださいっ。


いつもありがとうございます!!

これからも軍人少女をよろしくお願いします。


長文失礼しました。


                    冬瀬


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― 新着の感想 ―
[一言] 書籍を読んで、続きが気になって来ました。一から読んでいくと、確かに書籍版は一層ブラッシュアップされてるのが感じられて良かったです。 今後も応援しております。
[一言] 少し遅くなりましたが書籍購入させて頂きました!!! 僭越ながらFAも近々投稿する所存でございます⋯⋯ いつもいつも尊みの深いお話をありがとうございます!!!!!
[一言] フォリアの誕生日会のお話、 楽しかったです。 ただ、ルカが胡乱げなご様子。
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