表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【web版完結】軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。〜乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?〜  作者: 冬瀬
軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。〜乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?〜
71/135

71、学園祭準備⑤ 

大変、お待たせいたしております。

お納めくださいませ……

(最後にはお知らせもあります!)



(あーあ。流石に感じ悪いよね。私……)


気分転換に教室を出たものの、行き先はない。

ラゼは先ほどまでの自分の言動を反省しながら、何となくその場しのぎに手洗いへ向かう。


「グラノーリ」

「あ、殿下」


すると、ハーレンスとの会議を終わらせたルベンと鉢合わせた。


「理事長先生が、手の空いた時でいいから理事長室に来るようにだそうだ」

「わかりました」


ラゼは頷く。


「……あの、カーナ様は?」


彼女はそこで気になっていたカーナの容態を尋ねた。

ルベンは陰りのある表情で、口を開く。


「フェリル先生いわく、寝不足からくる過労だそうだ」

「寝不足、ですか……」


ラゼは口元に手を当てて考える。


「カーナはひとり部屋だ。夜も無理をしていたんだろう」

「すみません。気がつけなくて……」

「仕方ない。それはわたしも同じだ」


ルベンは少し考えた後、何かを決心したような瞳で彼女を見つめた。


「グラノーリ」

「はい」

「しばらくの間、カーナと一緒に寝てくれないか。寮母さんにはわたしから話を通しておくから」


正直に言えば、夜の行動が難しくなるのでカーナと一緒にいることは得策とはいえない。

しかし、そもそも自分の役割というのは、カーナたちを見守ることにある。これは受けるべき話だ。


「わかりました。私とフォリアの部屋に来てもらうようにしましょう。カーナ様には私のベッドで寝てもらいます。それでよろしいですか?」

「ああ。君の分の簡易ベッドを用意してもらえるか聞いておく」

「私はどこでも寝れるので、お気になさらず。すぐに準備ができなくても、毛布さえあれば十分ですよ」

「……悪いな。助かる」

「いえ。お泊まり会みたいで楽しいと思います」


本当は自分がそばにいたいだろうに、ルベンも難儀なものだ。ラゼは苦笑する。


「……わたしは今から寮に行ってくる」

「了解です」


ルベンは元来た道を再び戻っていった。


「さてと。フォリアに何も聞かずにオッケーって言っちゃったな。ちょっと様子見てこようか」


ラゼは転移魔法で校舎の屋上に出る。

眼下を見渡せば、外で校門を飾る予定のオブジェを作っているフォリアの姿がすぐに見つかった。


「フォリア〜」

「あっ、ラゼちゃん。どうかしたの?」


顔に絵の具がついたままのフォリアが、ラゼを振り返る。


「絵の具ついてるよ、フォリア」


ラゼは笑みを浮かべながら、自分の頬を指さした。


「ふぇっ。本当?」

「あ、触っちゃダメだよ」


慌てて汚れを落とそうとする手にも絵の具が付いていて、ラゼはフォリアの手を掴む。


「何してるの……?」


そこに、そばで作業をしていたルカが顔を覗かせた。

彼はフォリアの顔と、ラゼが掴んだ手を見て状況を理解したのだろう。はぁ、とため息をつきながら、水魔法で小さな水球を作り出し、フォリアの汚れを落としていく。


(器用だな……)


やはり、魔法の扱いはルカが一番長けているとラゼはそれを見て思う。

水球を作ることは皆、比較的簡単に出来ることだが、それを使って人の肌に着いた汚れを優しく浮かし取るのは至難の技だ。

天才はやることが違うな、なんて彼女は考えるのだが、「モノを移動させる」ことに関して何でもアリ状態の魔法を使うラゼが言えたことではないだろう。


「はい。取れた」

「ありがとうございます。ルカくん」

「……別に、大したことじゃない」


天使フォリアの微笑みを食らったルカは、視線を逸らした。

それで好意を隠しているつもりなのだろうか? 丸わかりである。

……フォリアには伝わらないだろうが……。

ラゼは少しルカに同情した。


「それで? グラノーリは何しに来たんだよ?」


彼女の視線に気がついたのか、ルカは我に返って話を変える。


「そうでした。フォリア、今日からしばらくカーナ様も私たちの部屋で寝ることになりそうなんだけど、いい?」

「うん。もちろんだよ」

「よかった。カーナ様、寝不足が原因で倒れちゃったみたいだから、見張っててって殿下に頼まれたの、勝手にオッケーしちゃったんだ」


フォリアに断られるわけがないと思っていたのは事実だ。ラゼは少しだけバツが悪そうに、本当のことを言う。黙っていればよいのに、天使を前にするとどうしてか、偽りたくない。


「大丈夫だよ。あ、でも。わたし、すぐに寝ちゃうから、役に立てるかなぁ?」


勝手に話を進めたことについて、フォリアは案の定怒ることはしなかった。

それどころか真剣にそんなことを言うものだから、ラゼは笑ってしまう。


「はは。フォリアが気持ちよさそうに寝てたら、きっとカーナ様も眠たくなっちゃうよ」

「ラゼちゃん。それって、褒めてる?」


からかうつもりはなかったのだが、むうっと頬を膨らませるフォリア。


「わたしだって、もう成人だもん。夜更かしくらい出来るよ」

(あっ……)


珍しいその拗ね方から、ラゼは何かを察する。


(これは、もしかするとモルディール卿と何かあったな……?)


子ども扱いされていることにご不満、といったところか。

しかし残念ながら、「夜更かしくらいできるよ」という発言は、まさしく子どものそれである。


「夜更かしなんてしなくていいんだよ。フォリアまで倒れたら困る」


宥めるようにラゼが言うと、フォリアはハッとした。


「元気で笑っているのが、一番可愛いよ」


思ったままを口にして、にっこり笑うラゼに、フォリアは目を丸くし、ルカが眉間にシワを寄せる。


「フォリア。簡単に可愛いとか言ってくるやつは、言い慣れてるから言えるんだ。気をつけた方がいい」

「へ?」


ルカが、さりげなくラゼの肩を押してフォリアから彼女を遠ざける。


「ちょっ。そんな、私は思ったことを言っただけですよ!」


フォリアを守るように、間に立ったルカにラゼは心外だと訴えた。


「自分が言えないからって、そうやっ。ムグッ?!」


人に当たらないで欲しい。という言葉は、ルカの手で頬を掴まれたことにより阻まれる。


「なんか、言った??」


怒っている。いつもは中性的で麗しい瞳が見開かれ、鋭い眼光を飛ばしている。挟まれている頬が痛い。絶対に加減をしていない。


(や、やばいッ)


どうやら、本気で怒らせてしまったようだ。

夏のバトルフェスタで少しだけ距離が縮まったと思ったのに、やってしまった。


「にゃ、にゃんでもありまひぇんっ」


彼女はもう言わないと、必死に目で訴える。


「ルカくん?」


ルカの背中に隠されたフォリアは、ラゼから漏れる奇声にきょとんとした。

彼女に名前を呼ばれて、ルカはやっと手を離す。


「痛いです……」

「本気で掴んだからね」

「……すみません」


釘を刺されて、ラゼは大人しくその場を引く。


「じゃあ、私は運営室に戻ります。フォリア、無理しないようにね」

「うん。ラゼちゃんも」


ラゼはそのまま運営室に戻った。


「戻りましたー」


扉を開けて中に入ると、一斉に二つの視線が自分に突き刺さる。

ラゼは内心びっくりしながら、そういえば気分転換に教室を出たことを思い出す。


「あ、クロードくん。おはようございます。すっきりしました?」

「はい。毛布とかありがとうございます。……あの、どうしたんですか、それ?」


クロードが不思議そうに尋ねられ、ラゼは首を捻る。


「頬。ちょっと赤くなってますよ」

「えっ!」


どうやら、ルカに掴まれたところが赤くなっていたらしい。


「思いっきり掴まれたもんなぁ。次からは気をつけよう」


ラゼはため息混じりに呟きながら、片想いの男子を刺激してはいけないと、心のノートにメモを残した。


「この短時間で何をしてたら、そんなことになるんだよ……」


アディスは呆れた様子で、席を立つ。

彼はラゼの前に立つと、そっと彼女の頬に触れた。


「誰にやられたの?」

「大したことじゃないんですよ。ちょっとルカ様の逆鱗に触れてしまっただけなので」


あまりにも自然に顔に手を伸ばされたものだから、ラゼも普通に答える。


「ルカ? なんだ。それなら仕方ないね」


アディスはルカの名前を聞いて拍子抜けた。


「え、それはどういうことですか?!」


ラゼは彼の反応にイラッとしたが、先ほどとは打って変わって優しく触れられたことが印象に残って。


(……ルカ様の言いたいこと、分かったかもしれない……)


慣れてるな、と思いながら、彼女は小さくため息を漏らす。







***







カーテンで仕切られたベッドで、カーナは夢を見ていた。


長い、長い夢だ。

足元からどんどん黒い何かが自分を飲み込んでいく。恐ろしい夢。

いつから悪夢を見るようになったか、彼女にもわからない。

例え、うなされないで目を覚ましたとしても忘れているだけで、本当は悪夢を見ていたのかもしれない。


どうしてこんな夢を見るのか。


そう考えて、いつも思い当たるのは、自分がこの世界の住人ではない異物だからなのではないかということ。


命がかかっている。死ぬかもしれない。


(ううん。違う……)


彼女はズブズブと体が闇の沼に落ちていくのを感じながら、一番恐れていることは、本当は違うと認めた。


誰かを殺してしまうかもしれない。

そして、それが最愛の人だとしたら……。


怖かった。

自分が死んでしまうことは、あまり考えていなかった。前世で死んだであろう自分が、死の直前まで死を考えなかったように。今も、なんだかんだで生き延びている自分に、それでいいと思っていた。


しかし、もし。

もし、このまま冬を迎えて、自分が怪物になってしまったら。

その体で彼を傷つけてしまったら。


想像するだけで、自分が許せないナニかに思えて気持ち悪かった。




『悪役令嬢。怪物の器。鳥籠の中で大事に育てられた、悲劇のお姫様』




声が、聞こえる。




『どうして、あなただけ幸せになるつもりなの?』




何故だろう。どこかで聞いたことがあるような、女性の怒りがこもった哀しい声が聞こえた気がした。






【お知らせ】


いつもお読みくださり、ありがとうございます。

長ったらしい文は後に回させていただきまして、いきなりではありますが、お知らせです。



本作『軍人少女、皇立魔法学園に潜入することになりました。〜乙女ゲーム? そんなの聞いてませんけど?〜』が、


一迅社ノベルスさまから、

イラストはタムラヨウ先生で、


2021年 3月2日 に発売されます!!!


(なんと、予約販売も始まってます!)



書籍化を楽しみにしてくださっていた、読者の皆さま……。そして、このお知らせで「え、これ、書籍化するの?」と思われた方……。「もう知ってた」という強者の読者さま……。


今回の更新に加え、大変お待たせいたしました。

なかなか更新ができず、「話忘れたんだけど」と思われてる方も多々いらっしゃるかと…(泣)


「一章なにそれ美味しいの?」から始まった拙作は、なんとか一冊の本になりそうです。


初めてのことばかりで右往左往しておりましたが、書籍化にあたって書き直したことで、当時の勢いでは書ききれなかった部分も足すことができたり、バージョンアップしてると思います。(そうであって欲しい…いや、そうなってます!)


ラゼさんは相変わらずラゼさんで、恋愛する模様はありませんが、彼女の周りはweb版より騒がしく仕上がっております。


そして、タムラヨウ先生によるドンピシャなラゼさんを、是非早く皆さんにご覧いただきたいです!!

ヒロインなフォリアに、悪役令嬢なカーナ、めちゃめちゃ可愛いです。あ、もちろん、男性陣も乙女ゲームも納得のイケメン揃いでございます。

(活動報告で、イラストを載せられたらと検討中です)


たくさん加筆、修正したので、笑えるところも、シリアスなところも、増えていると思います。


長くなりましたが、書籍版の『軍人少女〜』も、

どうぞよろしくお願いします。



そして、web版の更新も頑張ります!(汗)

ご感想の返信が滞っておりますが、全て読ませていただいております。本当にありがとうございます。

(実は、書き下ろし番外編は、読者さまの感想からアイデアをいただいていたり……)


これからも応援していただけると幸いです。

何卒、よろしくお願いいたします。



皆さまも、どうかお身体にはご自愛くださいませ。



                   冬瀬

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 書籍化おめでとうございます! この作品、本当に自分の好みにドンピシャでとても面白いです! もっと読みたいです!!!更新待ってます!
[一言] 書籍化おめでとうございます! 感想を書くのは初めてですが、前から読んでいて、面白いと思っていました。好きな作品が書籍化となってとても嬉しいです。 これからもラゼちゃんの活躍を楽しみにしてます…
[一言] 書籍化おめでとうございます!!かなり前から読んでいて、面白いから絶対書籍化すると思ってました!!!とりあえずおめでとうございます!!!!!!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ