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爺ちゃんの形見は世界の鍵でした。  作者: 柚木
一章 門番との出会い
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4話 契約するためには

 鬼石さんは黒い巨体を圧倒しているように見える。

 それでも決め手に欠けていた。


「どうした? これくらいだとまだ俺はやれるぞ」


「頑丈で嫌になるわ」


 保健室の壁に何度もたたきつけられても、それは平然と立ち上がる。


「来ないならこっちから行くぞ」


 鬼石さんは、ゴオとまた風を押しつぶしながらの攻撃を、受け流さずに避けた。


「どうした、まさか真上からの攻撃は受け流せないのか?」


「それがどうかした? 散々私の攻撃を受けて得たのが上からなら受け流されないって、非効率よね」


「あのくらいなら攻撃に入らないからな」


 真上からの攻撃が弱点とバレると、鬼石さんはさっきまでのように受け流すことができない。

 それから数分の攻防が続き、鬼石さんの息が荒くなり始める。


「どうした? 呼吸が荒いぞ」


「はぁはぁ、そうかしら、気のせいじゃない?」


 ふとカルマと目が合った。

 黒い人型に顔はないはずなのに、にやりと笑い体がこっちをむいた。

 それが、僕を狙ったものじゃないのがわかった。


「鬼石さん、避けて! 僕じゃない!」


 僕を狙ったように見せ、最初から変わらず鬼石さんを狙っていた。

 カルマの蹴りが鬼石さんを捉えた。


「やっと当たったな。直撃を避けたのは褒めてやるよ。って聞こえちゃいないか」


「ま、待て!」


「ああ? もう少し待ってろよ。まずはこいつを殺した後にゆっくりといたぶってやるから」


 さっきとは違う圧倒的で明確な殺意。

 たぶんこいつがその気になれば僕は一瞬で肉塊に変わる。


「そこで見てろ」


「嫌だ!」


 たぶん僕がここで反抗したところで十秒も稼げない。

 それでも、僕だって男だ。

 守られてばっかりではいられない。


「そうかなら死ね」


「鬼石流炎技 牙炎」


 カルマの拳が僕の目の前で砕かれた。


「悪い、遅れた」


 駆けつけてくれた焔さんはすでに戦闘衣に着替え腰には刀があった。


「秋良、氷美湖の側にいてくれ」


「いてぇ……、調子に乗ってるんじゃねぇぞ!」


「それはこっちのセリフだ。鬼石流炎技 炎星・七連(えんせい・しちれん)


「あっがっ……」


 七本の赤い線がカルマの体を焼く。

 鬼石さんがあれほど攻撃してもダメージが入らなかったのに、いともたやすくカルマに傷を負わせる。


「まだ、負けてない、俺の力は最――!!」


 最後までカルマは言葉を吐くことはなかった。

 赤い月の残像がカルマの体に触れ、黒い靄になりやがて霧散する。


「鬼石流居合術 地裂き・炎月。お前みたいのは、最強にはなれっこないんだよ」



 全てが終わった帰り道、気を失った鬼石さんと、そんな彼女を背負う焔さんの荷物を持ち二日連続で鬼石邸にやってきた。

 そしてなぜか僕が鬼石さんが目を覚ますまで、彼女の部屋で待機していることになった。


 もちろん自分からそう言ったわけじゃない。

 客室で待っていると言った僕を無理矢理にここに置き去りにされた。

 手当や着替えは流石に焔さんがやってくれたが、寝ている女子の隣にいるって結構ソワソワする。


 鬼石さんの部屋はイメージ通りきちんと整頓されていた。

 女子の部屋と言うよりは書斎って感じがする。


「人の部屋をじろじろ見るって、趣味が悪いわよ」


「大丈夫ですか?」


「今まで意識を失っていた人に聞くことじゃないでしょ」


「そうですよね。水飲みますか? 焔さんが起きたら飲ませてやってくれって」


「頂こうかしら……、ねえ、なんで私パジャマに着替えてるの?」


「制服のままだと皺になりますから」


 コップに水を注ぐと、コップが砕けた。


「少しは感謝してたんだけどね、所詮男子は男子よね」


「えっと、何のことですか?」


「私の裸を見たことは記憶にも残らないのね」


「えっ? ああ、それは誤解ですから、焔さんが着替えさせたんです!」


「嘘だったらお前の首をあれで撥ねる」


 指の先には一本の薙刀(なぎなた)があるけど、あれって本物なの?

 目が本気だし、ここの家ならきっと本物なんだろうな。


「仲良くなったみたいでよかったよ」


「これが仲良く見えますか?」


「お姉ちゃんが保健室で変身してたあれが、私達の本来の力なんだよね?」


「そうだ。氷美湖も契約したらどうだ?」


「嫌よ。私まだこの男を信用してないもん」


「昨日聞き忘れてたんですけど、契約って結局何なんですか?」


 昨日からただただ流されて、ここまで来ちゃったけど、詳しいことは聞けていない。


「門番としての契約よ。対象の人を守るために力を幽世から貰うの。昔はそんな契約はいらなかったらしいけど、昔事件があったみたいで」


「それなら二人で契約したらいいんじゃないですか?」


 そっちの方が簡単で確実だし、門番同士が互いを守れる。


「それも昔はできたんだがな、守る対象は現世の人間じゃないとダメなんだ。それも昔に事件があったらしくてな。どんどん厳格になっているんだ」


 誰でも力が得られれば悪いことに走るって感じなのかな?


「でも、結局人間と契約しても変わらなくないですか?」


「ただの人質よ。人間を見殺しにすれば当然力ははく奪、その上で契約違反で即死亡ってわけ」


 つまり僕は人質にされたわけだ。


「でも、それなら僕以外に適当な人と契約しちゃってもいいんじゃないですか? 別に幽世に反逆しようとはしてないですよね?」


 門番ってのをしっかりこなしている分には、デメリットはなさそうに思える。


「契約するには、唾液の交換、つまりその、キスしないといけないの! 最初のキスがそんな投げ槍は絶対に嫌!」


「氷美湖は中々に乙女だな。そんなのササッと済ませればいいじゃないか」


 そうは言っていますけど、あなたも中々恥ずかしそうにしてましたよ。


「あんた、お姉ちゃんと契約したってことはさ、お姉ちゃんとキスしたってことよね?」


「当然だ」


「殺すわ。お姉ちゃんの純潔を穢したその男は殺処分する」


 僕の目には鬼石さんが揺らいだ姿が見えただけだったのに、目の前には薙刀が突きつけられていた……、というか焔さんが止めてくれなければ僕の体は真っ二つになっていた。


「お姉ちゃん退いて、そいつ殺せない!」


「あたしのパートナーを殺すのはやめてくれ」


「うーー……、もう帰れえ!」


 鬼石さんはクールなキャラに似合わず、その場で何度も子供のように地団太を踏む。

 これは僕が帰らないと殺される奴だな。

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