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爺ちゃんの形見は世界の鍵でした。  作者: 柚木
三章 恋の始まり
37/52

37話 幕間

 喜門町の町はずれにある山道で、吾平(あいら)調(りつ)は呼び出した十纏二人を待っていた。

 全員に声をかけなかったのは自分の策に乗ってくれそうなのがこの二人だったからだ。


 約束の時間になり、一人の少女が山には似つかわしくない、フリルの付いたロリータ服を着て現れた。


「早かったね輪廻、エイデンはまだ来てないよ」


「早く終わらせたかったからね」


 呼び出した一人は厳島(いつくしま)輪廻(りんね)

 十纏でも最年少の少女だった。


「少し待っててくれる? エイデンが来たら説明するから」


「その前に何をするのか教えて、興味が出なかったら帰るから」


 エイデンの名前を聞いて、少し不機嫌そうにする輪廻に調は言う。


「大丈夫興味はあるはずだよ。鍵を手に入れる算段を立てたんだ。私一人だと勝ち目がないから、二人を誘ったんだ」


「それで輪廻達を使って手柄を上げようってこと?」


「まさか、手柄なんていらないよ。私だけで手柄を上げるなんて無理だろ?」


 使い込まれた車椅子を叩き自分の無力さを嘆いてみせる。


 調がどんな策を考えてるかわからないけど、輪廻の準備にはお金も時間もかかるし、二人を手伝わせた方がいいかな。 


 それから数分経ち、もう一人のエイデン・メッシングもやって来た。

 黒のジーンズに黒のパーカー、見た目も雰囲気も暗いエイデンは来て早々頭を下げる。


「遅れてごめん」


「いいんだよ。こちらこそこんなところに呼び出してごめんよ。揃ったし改めて僕の作戦を伝えようか」


 作戦の説明をすると、予想通り二人は二つ返事で頷いた。

 他の奴らなら、役立たずの私の作戦なんて聞く気も無かったはずだ。

 だけど、この二人なら話は別だ。

 輪廻は自分の手伝いを押し付けるため、エイデンは自分に自信がないから話に乗ってくる。

 もし私が手柄を独り占めしようとしても、私くらいなら楽にあしらえる。そう思っている。

 こっちも本気で手柄が欲しいなんて思ってないしね。


「それなら確かに仲間は必要だね。いいよ、輪廻は手伝ってあげる」


「僕もいいよ。最初から誰かに助けてもらおうと思ってたから」


「助かるよ。私に門番と戦う力はないからね」


 ある程度作戦について話し合うと二人は帰っていく。


「さて、後はあの二人がどこまで戦えるかかな。倒せないまでも深手を負わせてくれれば、私の手で律の敵討ちはできるかな。後は万全を期すために収穫しに行かないと」


 キィコキィコと使い古された車椅子で山道を下っていった。



「ライアン、お前はいつ来るつもりだ? 双子が倒されたって報告からかなり立ってるだろ?」


「ミアが飼っていた人間の死体が見つかってしまったんだ。その事情聴取で出発できないんだ」


 十纏をまとめる風見(かざみ)(れい)は、三毒のライアン・ジャックに連絡を取っていた。

 零の怒りなんて気にもしていないライアンに、零の怒りは強くなっていく。

 電話口から聞こえる波音や、捕まっているはずなのに使える携帯でライアンが捕まっていないことはわかっている。


「もうしばらくそっちの事は頼むよ」


 嘘がバレていることもわかっていながらも、ライアンは平然とそう言いのける。


「早く来い。これは十纏としての命令だ」


「俺は三毒だ、どっちが上とかないだろ? そういう脅しはお仲間とやってろよ」


 そのまま通話が切れ、零は受話器を握り潰した。


「ライアン達もレイラも自分の本分がわかってねぇな」


 十纏や三毒の本分は鍵を手に入れ二つの世界を融合させ、両方の生物が共存できる新しい世界を作ること。

 それなのに、レイラは鍵の入手を止めた、ライアンとミアはこちらの世界の生物を楽しんで殺している。

 こんなバラバラなままで勝てるはずがない。


 風見零は十纏の中で唯一ヴァクダの理想を引き継いでいた。

 そんな彼には他の十纏や三毒の行いは目に余るものがあった。


 そういえば調の奴も勝手に動き始めていたな、輪廻とエイデンを呼び出していたはずだ。

 残りはメイヴィスと彩李(いろり)か、この二人はこちらに置いておこう。

 後は輪廻とエイデンと話をしておくか。

 その上で手を貸して向こうの手綱も握っておきたいな。


 零はバラバラになろうとする味方のために知恵を絞り始めた。 

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