第1話 始まり
車窓から見える景色は自然そのものだった。
今まで住んでいた都会の景色とは違う。
一面ビルだった景色から一面田畑に変わった。
しかし僕はその景色を綺麗だと思わなかった。
世間一般的に見たらその景色は自然豊かで綺麗なのかもしれない、しかし僕は必死でその景色を綺麗だと思わないようにしている。
あの日を堺に僕は一切の感覚を限りなく無にしている。
いや無にしているではなく、無にしなければならない。
そうでもしないとあいつの気持ちは理解できない。
それが僕に天が与えた使命だった。
あいつが自立するまで、僕はあいつを導かなければならない。
その道が正解であろうと、間違えであろうと僕はあいつを導く義務がある。
度々出てくることもあったが、今回は道を大きく外れたせいで1年かけて修正しなければならない。
最初はめんどくさいと思っていたが、いざ入れ替わるとスイッチが入る。
そんなことを考えていたら車が止まる。
「着いたぞ」
「.......うん」
父親が車から僕を降ろす。
長い車の旅も終わり、やってきたのはどこが分からない村だった。
町かもしれないが、僕の頭の中にある村のイメージと合致したため村と思うことにした。
どうやら祖父母の家がここの村にあるらしい。
父親の仕事の関係でここに引っ越してきた。
正確には僕だけ。
父親は今まで僕が住んでた場所に戻るらしい。
母親がいないということもあるだろうが、主な理由は僕を家に置いときたくないだけだろう。
幸い祖父母の家にはテレビがないので、あの事件のことは知らないだろう。
「じゃあねお父さん。お仕事頑張ってね」
僕はできる限りの愛想笑いをして父親を見送った。
僕はそのまま祖父母の家を尋ねた。