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繫ぎの王妃④

アーリチェ王妃の言葉の意味が、バーネットにはすぐに理解できなかった。


『もうこの世にはいない』


とは、すなわちそれは「死」を意味する。

生物なのだからこの世に生を受けた瞬間から「死」というものは等しく皆に訪れる。

誰も亡くなっていない家なのいないのだし、それはバーネットもアーリチェもエステバンにもだ。


「どうして・・王妃様はそんなことをご存知なのですか?」


本当に王妃の言うことが真実ならば、なぜエステバン殿下が知らないのだろう。

すでにこの世にいないなら、諦めるしかないのに、なぜエステバンや臣下の者たちは今も「月宮の主」となり得る女性の捜索を今も続けているのだろう。


「なぜ、私だけが知っているのだろう。どうして私が知っているのだろう。そう思っているのでしょう」


そんなバーネットの考えを王妃は読み取った。


「はい。それが本当なら、エステバン様はこの世のどこにももういない方を探していらっしゃる。ということですよね」

「そういうことになるわね」


至極もっともだと王妃は頷く。


「なぜ誰もそのことを知らないのですか」

「なぜならその存在を人々が知る前に、彼の者はこの世からいなくなったからです」

「え?」

「彼の者は母の胎内の中で、この世の光を見ること無く亡くなった。だから誰も、エステバンも気づかない」


流産、もしくは死産。「月宮の主」となる予定だった者は、そうしてこの世からいなくなった。

妊娠しても、無事に産まれるかどうかはわからない。バーネットの生国でもその貧しさ故に母体に子を育む力が無く、流れることはあった。

また、産まれてもすでに亡くなって産まれたり、産まれてすぐに亡くなることも多々あった。


「そうだとして、王妃様はそのことをどのようにお知りになったのでしょうか」

「ふふ、それはいずれあたなもわかります。なぜならあなたも、『あの方』に選ばれた存在だから。いずれ『あの方』からあなたに呼びかけてこられるでしょう」


謎だらけの言葉にバーネットは混乱していた。「あの方」とは誰のことを言っているのか。選ばれるとはどいうことなのか。


「あの、そのことをエステバン様には」

「話してどうなりますか。どのように知ったのかと問い詰められるだけです」

「それは・・そうですが」


この世のどこにもいない。今生ではもう会うことの無い人を探し続けているエステバン様のことを思うと、バーネットは何ともやりきれない。

だが一方で、もう彼女は「月宮の主」を恐れなくてもいいのだと気づいた。

自分はずっとエステバンの唯一の妃としてい続けられる。

加えて今お腹の中にいる子が王子なら、自分はその生母として確固たる地位を維持し続けられるのだ。


(もう彼女はこの世にいない)


心の中で彼女はほくそ笑んだ。


「ようやく事態を理解したようね」


アーリチェもそんなバーネットの気持ちを理解していた。

同じ「繫ぎの王妃」だからこそ、理解し合えるのだと思った。







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