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慰めの言葉

「とりあえず、今確実なことはお二人のお母上、王妃様が無関係では無いこと。王妃様は意図があって温室に通っている。もちろん本人が仰ったような花や樹木を愛でるためではありません」

「ただの壁に用があると?」

「あそこはただの壁ではない。少なくとも私の目には、あそこは壁ではない」

「私には多くの属性魔法の適性があります。魔力量も国内でも群を抜いている。魔法の目くらましは、私には通用しない。兄上も同じです。そんなことに惑わされたりしない。貴方の言う大木など本当にあるのか」

「魔法なら、そうでしょう。でもあれは魔法ではないもので封印されているのです」


この世界に陽妃のように霊能力を持つ者が他にいるのかどうかわからない。でも封印が魔法でないなら、それを施した者は魔法以外の能力があるということだ。


「魔法でないものがあるとして、母上がなぜ・・・」

「そこまではわかりません」


女神オルケイラが関与しているかどうかもわからない。


「でも魔法で無いなら、俺たちは君に頼るしかないわけだ」

「他に為す術がない。情けないことに、私たちはこの件に関しては無力です」

「誰しも万能ではないでしょ。そんなに落ち込む必要は・・・」

「これが落ち込むなと? 俺たちはまるで役立たず、頼りは君、しかも、よりによって『月宮』である君に頼るしか無いなんて」

「そうです。これが落ち込まずにいられますか。多属性の魔法の能力も竜騎士の力も、私たちが持っている能力は役に立たず、まるで丸腰。貴女の力に頼らなくてはならない。貴女自身が命を狙われているというのに」

「だから、それが何?」

「陽妃さま、そこは男の矜持、プライドというものです。察してあげてください」


白銀が言葉をかけた。陽妃はそれを聞いて落ち込む二人を見比べる。

その言葉が図星だと顔に書いてあった。


「王子として、男として、自分の持つ能力が及ばず、あろうことかその本人自身に頼らざるを得ない。落ち込むなというのが無理な話です」


更に紫水が説明する。二人の表情が強張る。


「ありがとう、さらに塩を擦り込んでくれて」


紫水は人形のように無表情だが、わざと王子達に追い打ちをかけようとしたのがわかった。


「紫水、意地が悪いわ」

「これくらいで落ち込むようでは、器が小さいとしか言いようがありません」

「器が・・」

「小さい」


精神的ダメージに二人の顔が歪む。


「持っている能力が違うのです。出来ることが違うのですから、そこを認めないと」

「確かに。私も魔法を使いたかったけど、魔力無しだから諦めるしかなかった。霊能力もなかったら違う人生があったかも。でも私はこうだし、それを受け入れるしかない」

「陽妃の方が前向きですね」

「これまで挫折なしで生きてきた人間は、一度膝に土が付いただけで立ち直れなくなるものなんだ」

「もうそれ以上は・・」

「俺たちをいびって楽しいか」


表情のない紫水たちと違い、陽妃の口元が笑っているのを見て、二人は恨めしそうに言った。


「思っていたのと違う」

「何がですか?」


ぼそりと呟いたマリオンに陽妃が問いかけた。


「『月宮の主』、会えばすぐにわかると思っていた。なのに気づかないどころか・・」

「劇的な恋に落ちるとでも思っていました?」


陽妃の言葉にマリオンもリュシオンもばつが悪そうに視線を交わす。


「ご期待に添えずごめんなさい」

「いや、謝らなくて言い」

「そうです。私たちが愚かでした。『月宮の主』とバイシュルスタインの王族との運命的な繋がりに幻想を抱いていただけなのです。貴女の方が現実的だった」

「異世界育ちだからなだけ。私もここで生まれ育ったら、同じように思っていたかも」

「ありがとう」


慰めるつもりはなかったが、結果そうなってしまった。

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