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親子

観念した陽妃を見て、マリオン達はしたり顔で微笑んだ。


「もう地上に戻してもらえませんか」

「ユーレシア、降りよう」


マリオンがそう言うと、ユーレシアはゆっくりと下降し、地上へと降り立った。


「ありがとう、ユーレシア」


陽妃はここへ来る前にマリオンが用意してくれたショールを頭に被り、すっかり変わってしまった髪色を隠す。


三人で地上に戻ると、すぐに世話係や他の竜騎士達が駆け寄ってきた。


「殿下、さっきのは『竜の歌声』ですよね」

「ああ、俺も初めて聞いたが、どうやらそうらしい」

「と、いうことはそちらの女性が・・?」

「お前達、今日ここであったことは暫く黙っていてほしい。百年前、竜達が『月宮の主』に対して歌ったことは事実だが、まだ他にも理由があるかも知れない。変に騒いで大事になって後で間違いでした、なんてことになっては大変だ」

「そ、そうですね」


マリオンの脅しが利いたのか、竜騎士達は許可無く今日あったことを話さないと誓った。


ユーレシアを厩舎に戻し、厩舎の奥にあるもうひとつの建物に入った。

そこは竜騎士や竜の世話係が寝泊まりする部屋があり、三階建ての一番上が貴賓室になっていた。

そこは二間続きになっていて、奥に寝室があるようだ。

陽妃たちはそこにあるソファに座った。

陽妃を真ん中にして右にマリオン、左にリュシオンが座る。


「さて、話してもらおうか」

「その前に、紫水達を呼んでもいいですか? 彼らにも事情を知っておいてもらいたいと思います」

「呼ぶのはいいが、まさか逃げたりはしないな」

「姿を現したり消えたりできるのは彼らだけで、私は消えたりできません」

「本当か?」

「そう疑われても仕方がありませんが、逃げるならとっくに竜の背中にいる時に逃げています」


きっぱりそう言ったが、まだ二人は半信半疑で陽妃を見ている。


「まあいいだろう」


胸元にあるポケットから形代を三枚取り出すと、陽妃はそこにふう~っと息を吹きかけた。

三枚の形代はそれぞれ紫水、白銀、石榴の姿となった。


「陽妃、どうしましたか?」


紫水が現われてすぐ、その場のただならぬ雰囲気に気づいて訊ねた。


「『竜の歌声』って知ってる?」


陽妃がそう訊ねると、紫水の美しい顔が順次に険しくなった。


「まさか」


その言葉に陽妃がこくりと頷いた。


「最初から知って黙っているとは、ずいぶんと無礼では無いか」

「会ってすぐに気づかなかったのに、何を今更」


マリオンが紫水に言うと、臆せず彼は言い返した。

言われた言葉が二人に突き刺さったらしく、今度はマリオン達が顔を険しくした。


「最初から知っていたのか?」


もう一度マリオンが問い質す。

その言葉は陽妃にではなく、紫水へと向けられていた。


「だったらどうだというのですか」

「開き直ったか」

「私は陽妃の命令しか聞きません。陽妃以外の人間にどう思われようと、私はまったく気にしません」


人の理の外にいる紫水達に、人の国の法など通用しない。

故に紫水はマリオンをまったく恐れていなかった。


「陽妃、こちらへ。そんなところにいてはいけません」

「そんなところ?」

「失礼しました。三人では手狭でしょう。陽妃様はこちらへおいでください」


紫水は陽妃の肩を抱いて、マリオン達から引き離した。


「お前は、彼女の何なのだ。他の二人は従者のようだが」

「私はこの子の父親です」

「は?」


紫水の言葉に、二人は目を丸くした。

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