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女神の導き

暫く陽妃はその美しさに見惚れていた。バサリバサリと羽ばたくユーレシアの羽の音だけが聞こえる。


「本当は雲の上まで行けるが、慣れていないと肺が潰れる」


雲はもう少し上だ。飛行機でもマイナス何度かにはなっている雲の上まで、生身の体で行けるものなのかと驚く。


「雲の上って、とても寒くて空気が薄いでしょ。本当にそこまで行けるものなのですか」

「訓練が必要だが、行ける」


陽が落ちかけると、あっという間に辺りは暗闇に包まれ始めた。

それに合わせて、陽妃の髪も薄紅色に変わっていった。

彼らにはもう知られていることだから、隠すつもりはないが、その変化にマリオンもリュシオンも見入っている。


「さっきの、『竜の歌声』のことだが、百年前というのは俺とリュシオンの曾祖父。二代前の国王の頃だ」

「なぜ『歌声』が聞けたのですか?」


自分を見た瞬間、歌い出したユーレシア。他の竜達もそれに呼応するようにして歌い出した。


「先々代の王も、俺と同じ竜騎士だった。そして彼は自分の竜にある人物と会わせようとして連れてきたら、突然竜達が歌い出したそうだ」

「ある人物?」


陽妃は嫌な予感がした。逃げようと思ったが空の上なのでどうすることもできない。


「まさかと思っていた。気のせいだと」

「な、何のこと・・ですか?」

「お前はいつから気づいていた」

「いつからって、何を」

「百年前、『竜の歌声』はその時代の『月宮の主』のために歌われたんです」


ここに来て何度聞いたかわからないその名前。


「お前がそうなんだろう?」

「嘘はなしですよ。あなたが『月宮の主』となる人なのですよね」


薄紅色の髪をひと房、リュシオンが掴んだ。

引っ張るでもなく、易しい手つきで壊れ物のようにそっと触れる。


「瞳の色が花心と違う理由はわかりませんが、『竜の歌声』がそうだと言っています」


どうしよう。どうしたらいい? ここで認めてしまうか、それともシラをキリ通すか。

陽妃は悩んだ。


「黙っていると言うことは、そういうことだと受け取って良いな」

「や、そ、それは・・・」

「嘘はなしだと言いましたよね。潔く認めてください」


マリオンではなくリュシオンが答えを求めてくる。

後ろにも前にも引けず、陽妃は胸元に手をやろうとした。


「待て。あの侍従達を呼んだところで、俺たちは諦めないぞ。素直に認めろ」

「色々聞きたいことがあるんです。あなたが『月宮』なら、なぜ一年前から花が咲き始めたのか。なぜ魔力がないのか。なぜ、素直に認めないのか」

「一年前からなら、あなたたちどちらかのお相手は一歳って事なんじゃないの」

「冗談はやめろ。そうでなくても散々言われてきたんだ。次代の『月宮の主』はハイハイもしたことがない幼児だとな」


マリオンは苦々しく呟いた。


「そんなことを言われても何も言い返せませんでした。何しろ何の手がかりもなかったのですから。でも、やはり女神トリシュのお導きです。最初は占い師など余興にしかならないと思っていましたが、まさか本人だとは」

「あの、私は認めていませんけど」

「無駄な抵抗だとだけ言っておこう」


もう陽妃が何を言っても、彼らは陽妃を「月宮の主」だと確信したようだった。


「わかりました」


はあ~と重々しいため息を吐いた。



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