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転移門

体の大きな竜が暮らす場所は王宮の敷地内では手狭なため、王宮の裏手にある山の中腹に設置されている。

そこには王宮の一角から転移ゲートで移動する。


「山だから、少し風が強くて寒い。これを着ろ」


マリオンが途中で衣装部屋に寄り、厚手の毛織物のショールを渡した。


「私が魔法で防風と保温をしますが」

「俺の竜は、たとえリュシオンと言えど、他人の魔法を嫌う。竜は繊細なんだ」

「兄上の竜は特に、ですね」

「だが、とても強い。俺のユーレシアは強くて美しい」

「ユーレシア…女の子ですか?」


陽妃が尋ねると、マリオンが驚いてこっちを見た。


「何か変なことを言いましたか?」

「いや、大抵の人は竜の性別に対して『雄』か『雌』かと聞いてくるから」

「それが?」

「竜騎士はパートナーの竜を息子や娘、または兄弟姉妹のように呼びます。たから性別についても男か女かと表現します」

「そうなんですね」


知らなかったとは言え、間違っていなかったことにホッとする。

猫や犬を溺愛している人は、雄でも雌でもなく、男の子女の子と言ったり、餌もご飯だと言う。飼いだして何年?と尋ねると「一緒に暮らして○年」という。と、テレビで見た。

半身だと言うくらい強い絆で繋がっているなら、当然そう考えるだろう。


頑丈な扉を開けると、そこに地面に複雑な模様が描かれていた。


「これは殿下、今日の訓練はお済みになられたのでは? リュシオン殿下までいかがされましたか」


この場所を守護する警備の人が、マリオンたちの登場に驚いて近寄ってきた。


「訓練は済んだが、ユーレシアに用がある」


彼らはマリオンからリュシオン、そして陽妃を見て更に驚きに目を瞠った。紫水達は何かあれば駆けつけると言って姿を消している。陽妃の胸元には形代があれば瞬時に姿を表すことが出来る。


「こっちだ」


王子達に訊ねるわけにもいかず、黙って陽妃達を見ている彼らに何も説明せず、マリオンは模様の中心に向かう。


「転移門は初めてか?」

「はい」


陽妃がそう言うと、マリオンが彼女の手をぎゅっと握った。


「え?」

「余計なことを考えず目を瞑って握っていろ。空間の狭間に入った時に行き先を見失うと迷う」

「あ、そういうこと」


理屈はわからないが、場所を移動する際によくわからない空間を通るのだろう。


「頼む」

「はい」


中心にリュシオンと陽妃が立ったのを確認してマリオンがそう言うと、模様の外に置いてある水晶に警備兵の一人が手を翳す。

すると透明だった水晶に淡い光が満ち、陽妃達が立っている場所から外に向かって光が走り抜けた。


眩しさに目を瞑った陽妃は自分の手を掴んでいるマリオンの手の感触だけを感じていた。


「もういいぞ」


時間にすると、ほんのひと呼吸程度だっただろうか。すぐ側で声が聞こえて目を開けた。


四方を壁に囲まれた小屋のような場所に陽妃達は立っていた。


「殿下、いかがされましたか」


突然のマリオン達の登場に、その場にいた人々が驚いた。


「ユーレシアは?」

「はい、今は厩舎におります」

「連れてきてくれ」

「畏まりました」


彼らもマリオンからリュシオン、そして陽妃を見て怪訝そうな表情をしているが、質問をすることはなかった。

必要ならマリオン達が話すだろうと思っているのだ。


マリオンとリュシオンが先に立ち、その後を陽妃がついていって小屋の外に出た。


「わあ」


そこは切り立った山の間にある盆地のような場所で、遠くにバイルシュタインのお城の尖塔が見えていた。

思わずヤッホーと言いたくなった。

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