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王妃バーネット

「王妃殿下には・・」

「そんなに怯えなくても、何も取って食べたりはしませんよ」


お茶会に呼ばれていると聞いて、ここへ来るまでにとりあえずこう言えとマリオンとリュシオンに教えられたことを言おうとしたが、早々に被せるように言葉を遮られた。


長方形の短辺に座った王子達の母親でこの国の王妃、バーネットはリュシオンと同じ濃紺の髪と、美しい青い瞳をした線の細い女性だった。


(化粧・・濃くない?)


第一印象はそれだった。化粧が濃い理由は色々ある。元々厚化粧なのか、それとも肌の状態や顔色が悪いのを隠す時。目元の隈が隠しきれていないので、多分後者だろうと陽妃は思った。


「あなたたちもいつまでも立ったままでいないで座りなさい。あなた・・」

「陽妃です。陽妃 瀬能です」

「セノー・・変わった名前ね。あなたもどうぞ」


息子である王子達には自分の右手側を陽妃には自分の左手側を示す。


「あの、よろしいでしょうか」


マリオン達は母親の言うままに席に着く。

しかし陽妃は彼女が示した場所へ、すぐには座るわけにはいかない。


「何かしら」

「その、王妃様がどのように思われて私のことをお呼びいただいたのかわかりませんが、私は王妃さまと同じ席につけるような身分ではございません」


何度も言うが、陽妃は元の世界でも友人と呼べる人はいない。

生きている人間とのコミュニケーション能力は殆ど無い。何しろ初恋も幽霊だったくらいだ。

だから家族以外の他人とお茶を共にしたことはない。


この世界、ガーネジアに来てからも基本的にそれは変わらない。

というか紫水も白銀も石榴も食事をしないので、孤食なのでもっと酷いかもしれない。


お茶会と言われてやってきた庭園の一角には、キレイなテーブルクロスのかかったテーブルと椅子が置かれていた。

テーブルマナーは知っているが、お茶会の作法など陽妃は知らない。

寺で修行している間に表千家の点て方は習ったが、ここでは役に立たないのは子どもでもわかる。

ガーネジアに来てからの一年間はこの世界のことを知り、文字を覚え、生活を成り立たせるために必死で、食べ物もお腹に入ってそこそこ美味しければ何でも良かった。

優雅なお茶会は、陽妃にとってはとても難易度の高いものだった。


「私と同じテーブルにつく者が誰か、それを決めるのは私です。ここは王宮で私は王妃。この国で一番位が高い女性は私ですから」


私は王妃だから。誰にも自分の決めたことに口出しはさせない。まるでそう言っているように聞こえた。


「では、失礼いたします。ですが、このような席に不慣れなことは先に申し上げておきます。ご無礼の程は平にご容赦を」


陽妃の知る限りの精一杯の丁寧口調で言った。


「俺たちに対する態度と違うな」


畏まった口調でそう言ってから侍従が引いてくれた椅子に腰掛ける陽妃に、マリオンが皮肉を込める。


「おっしゃっている意味がよくわかりませんわ」


ホホホと口元に手を当てて言い返した。

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