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交渉決裂

「もし月宮の主があなたたちを拒んだら」


その言葉に二人が瞠目する。


「我々を・・拒む?」


まるで考えていなかったかのようにたじろぎ、何度も顔を見合わせている。


「殿下方が生まれながらに王族としての使命と責任を自覚されていらっしゃることは、民としては頼もしい限りです。ですが、相手はどうでしょうか。幼い頃から王族に嫁ぐ覚悟で教育を受けてきた。または目指してこられた方ならまだしも、いくら神が定めたからと言って、王太子妃、ゆくゆくは王妃となるのです。名誉や華やかさだけでなく、重責も計り知れない。望んで受け入れる者ばかりではないと思いますが」

「そのようなこと、そなたの考えすぎだ。知ったようなことを申すな」

「そうです。そのような不安を抱かせるようなことはいたしません」


その月宮が陽妃本人だからこそ口に出来た発言なのだが、一瞬たじろいだものの、二人は揃って陽妃の意見を否定する。

どこからそのような強気な発言が出てくるのか。二人の容姿を含むステータスなら、拒む者など殆どいないとは思うが、それでも人には好みというものはある。


「そこまで仰るならこの件はこれ以上申しません」


陽妃本人も今は彼らと未来など考えられない。生まれたこの方恋人どころか友達もないコミュ障なのだ。

向こうが諦めてくれればと思ったが、一筋縄ではいかないようだ。


「話を元に戻しましょう。それで音楽室ではどうだったのですか」


リュシオン殿下が調査に話を向けたので、陽妃はあったことをそのまま伝えた。


「戯れ言だ」


認めたくないのかマリオン王子が言い捨てた。しかしその顔は言葉とは裏腹に思い当たる節がありありなのがわかる。

この王子、腹芸できないな。

と紫水は思った。竜騎士としては優れていても、あれでは政治家としては勤まらないだろう。

時に政治の場面でははったりも必要。非情な決断を迫られた時、果たしてこの王子は最適な結果を導き出せるだろか。

そしてもう一人の王子も、明らかに狼狽えていて、これまたまだまだ頼りないと思った。

紫水もなぜ陽妃の髪色が夜になると変わるのか、瞳はまだ黒いままなのかわからない。

出来るならこのままでいてほしい。

姿形は変わっても、魂だけになっても、すでにこの世を去った妻の分も、あちらの世界にいる頃からずっと見守ってきた。

妻は守れなかったが、この子だけは守り通したい。


「戯れ言でも何でも、その霊は確かに月宮に対して恨みを抱いていました。このまま放っておけば、その者の命を脅かすことになります。月宮の主が誰かわかったとして、失う可能性もあると思います。それにトイレの花子さん」

「はなこさん?」

「それがその霊の名前なのですか?」


つい日本で有名な名前で呼んでしまった。


「あ、いえ・・トイレにいた霊は、王妃様と護衛騎士の不貞の現場を見て殺されたと言っていました。心当たりありますか?」

「不貞だと? それこそ戯れ言だ」

「どうしてそう言い切れるんですか。誰も彼もが高潔のままではいられないんです。さっきのことも、この件もあなたは『戯れ言』だと言い切りますけど、人がみんな貴方の思うような行動をするとは限りません。王妃でも何でも人なんですから」

「なに?」

「兄上、落ち着いてください。あなたも少し遠慮がなさ過ぎです。不敬と罰せられても文句は言えませんよ。少しは言動に気を使ってください」

「ふん、あれこれ難癖をつけて、結局は何もできない無能を認めたくなくて、こちらがわからないのを良いことに、挙げ句は王家を侮辱するようなことを。リュシオンの言うとおり侮辱罪で罰することもできるのだぞ」

「そもそも此方に相談されてきたのはそちらです。ご自分たちでは見つけられないから、藁をも縋る思いで尋ねてこられたのですよね。依頼を取り下げるならどうぞご自由に。いただいた金品はお返ししますよ。交渉決裂と考えてよろしいですか?」


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