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トイレに潜む霊の正体

とりあえず音楽室は今夜はここまでと、四人でそこを出た。

時間は既に深夜になっていて、人通りは殆ど無い。陽妃たちの見張りもいない。ああいう風に追っ払ってしまったが、ちゃんと陽妃の言うことをあの王子達は聞き入れてくれたようだ。


「もうひとつ寄りたいところがあるの」


そう言って陽妃が立ち寄ったのは昼間にも行ったトイレ。

苦労して綺麗にしたトイレに入ると、そこにはガタガタと震える女性の霊が見えた。


『お、お許しください。わ、私は何も見ておりません。何も知りません』


陽妃たちを誰かと勘違いしているのか、やってきた陽妃たちを見てその霊は必死で命乞いをした。


「何もしないわ。安心して」


陽妃がそう声を掛けると、霊の目が此方をじっと見つめてきて、ようやく彼女たちが自分の思っている相手でないと気づいたようだった。

よく見るとその霊には胸の辺りに大きな刺し傷があった。それが彼女の死因だろうことは容易に判別がつく。


「どうやら服装から察するに王宮に仕える侍女のようです」

「侍女?」

「ええ、恐らく中級侍女」


侍女にもいくつか種類があって、女官と呼ばれる人たちが最も偉い。彼女たちは貴族の子女で、いわゆる行儀見習いとして王宮に勤める。その多くが家を継ぐことのない者達。そして中級侍女は準男爵や平民でも裕福なクラスの娘たちで占められる。下級侍女は試験を受けて採用された平民たちで構成されている。

彼女の着ている服は中級侍女の制服のようだった。


「彼女は剣によって刺されたのでしょう」


紫水が耳打ちする。


「ここで?」

「王宮内で帯剣を許されているのは護衛騎士だけです。犯人は騎士でしょうね」

「こんな王宮内で公然と殺人がまかり通るわけ?」

「もちろん理由も無く殺すことはいけないことですが、身分の高い者に無礼を働いたとなれば、簡単に処罰されてしまいます。人の命はその身分が低いほどこの世界では軽んじられます。逆に高ければ高いほど、人一人以上の重みがある。日本とは違いここでは人の命にも序列が存在します」


同じ王妃でも月宮の主かそうでないということで、いわれの無い中傷を受けるのだから、ここでは当然と言えば当然なのかもしれない。


「何だか気に入らないな」


こうして幽霊となっている姿に身分も何も関係ない。人は等しく皆死ぬのだ。


「そう思えるのは。陽妃があちらの世界で育ったからでしょうね」

「それってここではおかしいこと?」

「いいえ、その考えは間違っていません。でも、正論は時には諸刃の剣となります。それを口にするのは相手をよく見極めてからでなければ、逆にあなたを傷つけることになります」


殺した相手に真っ向から殺したお前が悪いと言っても、相手がそれを罪だと思っていなければ、何の意味も成さない。


「誰があなたをこんな風にしたの?」


彼女の前に跪き、そっと尋ねる。


『・・・・そ、それは・・・』


死んでもなお殺した相手を恐れているのか、彼女はすぐには答えない。


「大丈夫。私たちはこの国の王子様に頼まれてこうしてあなたに会いにきたの。だから怖がらなくていい」


嘘は言っていない。


『ほ、本当に?』


にわかに信じられず、彼女が聞き返す。


「本当よ。ねえ?」


陽妃が後ろにいる紫水達に同意を求めると、「そうです」と三人とも頷いた。


『え、あの・・わたし、見てしまったのです』


まだ周囲を気に掛けながら、彼女は何も見ていないということから一転、口を開きだした。


「何を?」

『お、王妃様と・・護衛騎士様が・・その・・二人きりでだ、抱き合っているところを・・』

「え?」

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