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行動開始

「あ、カツラ」


慌てて髪に触れる。


(しまった)


今は夜。髪の色は薄紅色に変化している。床には髪の色と同じ花弁が絨毯のように敷き詰められ、いくつかの花弁はまだフラフラと宙を舞って落ちていく。

リュシオン王子が右掌を上にして、そのひとつを受け止める。

花の香りが部屋中に充満している。


「月宮の…花? どうしてここに?」

「いきなり突風が吹いて、風と一緒に…」

「月宮からここまではかなり距離がある。それにこんな風に大量の花弁が吹き込んでくるなど、建物の状況から有り得ない」


マリオン王子が陽妃の言葉の矛盾を指摘する。


「え、そうなんですか?」


陽妃は窓の外を見て、それから王子の方をまた見る。


「じゃあ、誰かがわざと?」

「何のために?」


それもそうだ。陽妃が待機している部屋に風を起こしてわざわざ花弁を飛ばす理由など何もない。


「嫌がらせ…とか?」


コテンと小首を傾げ、疑問形で行ってみる。


「…………何のために?」


当然だが誰も肯定してくれなかった。


「この花が何の花か、知っているか?」


一度屈んで敷き詰められた花弁を両手で救い上げ、マリオン王子が陽妃に尋ねた。


「月宮の花…先程リュシオン殿下がおっしゃいました」


話をちゃんと聞いていれば答えられる簡単な質問に、バカにしているのかとムッとして陽妃は答えた。


「そうだ。王宮の庭園に咲くどの花でもない、月宮の花だ。そしてその花がただ、月宮の庭園で咲くからそう呼ばれているわけでないことも、知っているな」


その花の色は月宮の主となる未来の王妃の髪と瞳の色を表す。花の中心は新緑。そして花弁は薄紅色。

陽妃の髪の色と同じ。

その色だけを手がかりに、彼は総力を上げてその人物を一年前から探している。

だが、その成果は未だ実らず、彼らは占いに頼るという選択肢を取った。


「髪は黒で、それが地毛だと申したな。我らを謀ったのか?」


マリオン王子から怒気が立ち昇る。

彼らが正体を明かし、髪と瞳の色を本来のものに戻した時、陽妃は確かに自分は生まれながらに黒髪黒目だと言い切った。

なのに彼女の髪は今は花弁と同じ薄紅色をしている。

誰が考えても、彼女が嘘をついたとしか思うだろう。

リュシオン王子も厳しい視線を陽妃に注ぐ。

石榴が彼らの怒りから陽妃を守ろうと、ぐっと彼女を抱き寄せる。


「謀ったつもりはありません。本当に生まれたときから黒髪黒目です…でした」

「でした?」


マリオン王子が片方の眉を上げて尋ね返す。


「夜になると、勝手に色が変わるんです。だから昼間は本当に黒髪です」

「魔法も使わずに?」

「私には魔力がないことはご存知でしょう? それに、昼と夜で髪色を変えて何の意味があるんですか」

「それは我々にはわからない。そちらの事情だろ?」


マリオン王子の言葉ももっともだ。


「わざとじゃありませんし、私も理由なんか知りません」

「月宮に花が咲き、それが薄紅色と緑だと言うことは国中に知れ渡っている。関心を引くためでないのか?」

「それこそ、ないです。それなら瞳の色だって変えなければ意味がありませんし、わざと変えたところですぐ偽物だとバレるでしょ?」

「そこに魔法の痕跡があれば、すぐにわかる。そんなことをすれば王室を謀った罪で即処分だ。悪くすれば死刑だ」


問答無用で処分されるんだ。裁判などをして弁明の機会すら与えられない。罪人に人権などないんだろう。


「この問題はさておき、もう夜になりました。時間がもったいないので、そろそろ他の場所に案内してもらえませんか?」


髪色が変わったと言うことはもう夜になった。

さっさと終わらせてしまおうと、陽妃が話を切り替えた。


「勝手に話を変えるな」


マリオン王子が話の腰を折ったことに抗議する。


「でも、そちらが持ちかけた話ですよ。報酬をいただく限りは、きちんとやります。私の髪色については理由も原因もわからないんですから、今ここでグダグダ言っていても無駄です」

「無駄? 無駄だと?」

「あ、兄上、彼女の言うとおりです。この話は一旦置いておいて、調査を始めましょう」


リュシオン王子が兄を止めなければ、もっと険悪になっていただろう。

とりあえず、調査の合間に部屋を片付けてもらうよう手配して、残りの場所を周ることにした。


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