アニメ「からくりサーカス」のはしょり方の凄さと、原作者藤田さんのヒロイン像への疑問提起
藤田さんの描くメインヒロインはなぜこう魅力がないのだろうか、けれどサブヒロインの魅力的なこと言ったら。
アニメ『からくりサーカス』、いま2クール目の半分を超えたくらいだが、なんというか。
あのアニメを、原作ファンがみれば、そのストーリーのはしょり方に悲鳴が上がったりするのだろうか。
はしょり方というより、はしょった分のストーリーが大事だからはしょったらダメだということではなく、はしょったあとの物語の進め方があまりにも原作を無視し過ぎているところなんかに、それじゃあ、「伏線を敷く」や「それを回収する」といった物語の細やかな色合いが全て無視されているのではないか、との悲鳴というか、非難というか、そういった声が聞こえてきそうである。
私なんかが思ったのは、あのアニメは、オムニバス形式で、前後の脈絡伝わりにくいことを前提に、物語を原作どおりに置いていったほうが良かったのではないか。
へんにはしょるのではなく。
べつに、最低の絵や音楽ではないし、藤田節で感動させるところは、十分に感動させていただいているところもあるし。
その、シーン、シーンのアニメにしたから良かったところも、数多くはないにしても、あることはあると思われる。
たとえば、この前みた、フランシーヌ人形とギィとのからみ、あの井戸のシーンとかは、ふつうに涙腺を刺激されたりもした。
だから、けっきょく原作のあるアニメは、原作の良いところをアニメ化しようとしても、原作読者が満足行くように成功するとは限らない。
「もっとも良いシーン」やそれに準ずるシーンは、あまりブレないにしても、それ以外で「ここが必要だと思うシーン」は、読者それぞれ、千差万別ではあるだろうから。
だから、さっきも言ったように、いっそオムニバス形式で作ってしまえば、今回は、そのシーンは外しているのか、みたいな一応の納得はできるのではないのか。
そう思う。
で、この話を書こうとして、ふと、フランシーヌ人形が好きな自分に気づいて、冒頭のヒロインの話の後半を声高に主張したくなったのです。
原作者、藤田和日郎描くところの。
サブヒロインは、なんて魅力的なんだろう!
と。
で、さらに一歩進めて、冒頭の冒頭の話、メインヒロインは、なぜあんなに、魅力がないのだろうか?
藤田さんが一躍有名になった、アニメにもなった「うしおととら」のメインヒロイン、麻子さん。
今回のアニメ「からくりサーカス」のメインヒロイン、しろがね、エリオノール。
その後の長編マンガ「月光条例」のメインヒロイン、エンゲキブ。
みんな、それぞれに全然べつの理由で、残念だ。
わざとだとしか、思えない。
なぜなら、その周辺にいる、サブヒロインが、前述のフランシーヌ人形はじめ、「からくりサーカス」でいえば、その人形の元となったフランシーヌ。
狂気を内包した、猛獣使いの魔眼リーゼさん。
元殺し屋で、サーカスではナイフ投げの流星ヴィルマ。
感情がないとされてきたしろがねの中で、突然変異のように感情豊かな、唯一子どもを産み、それとは別にギィの『ママン』となったアンジェリーナ。
目的の為には手段を選ばない、感情を持たないしろがねそのもの、もっとも最初のしろがね、老ルシール先生。
さらに、敵役だったコロンビーヌでさえ、その大人バージョンも、子どもバージョンも、そのどちらともなんとも魅力的ではないか。
これらのヒロインには、作者が、読者に好きにさせようとして描いているとしか思えない、愛の魔法がふんだんにかけられている。
で、これだけのサブヒロインを魅力的に描ける作者が、メインヒロインをより魅力的に描けないわけがない。
たとえば、「ゴーストアンドレディ」のメインヒロインのナイチンゲールは、とても魅力的だったし、古いところでは、これは昔のアニメで知ったのだが、「からくり姫」の主人公のお姫様も、その暗部も含めて非常に魅力的だった。
そして、これらのメインヒロインが魅力的な作品には、サブヒロインというものが出てこない。
つまり、サブヒロインを出す必要のない作品において、作者は、メインヒロインを自由に魅力的に描くことができる、ということだ。
ということは、いわゆる長編もので、サブヒロインがいっぱい出てくる作品で、メインヒロインがああいう描き方しかできないということは、あきらかに、なにかの意図を持って行なっている感情操作だよなぁ。
これ、でも。
逆に、違ったら、怖いけど。
作者は作者なりに、メインヒロインがいちばん魅力的な存在として描いてる気でいるとか。
ないと思うけど、もしそんなことがあり得るのなら、作者の藤田和日郎さんの理想の女性って、メインヒロインの方なのだろうか?
なんか、えーっ?な、話ではある。
まぁ、読者としてば、サブヒロインを好きな自分のままでいいので、とくになにも問題にはならないのではあるが。