こちら恋文速達係、第八支部ですが?
その空間は、一言で言えば「上品で優雅」だと気品を感じるようなものであった。
カップの中から漂うコーヒーの匂い、天井で豪華に輝くシャンデリア、蓄音機から奏でられるクラシック音楽…一般的な庶民の価値観からして、上流貴族のお屋敷にいると勘違いしてしまう者もいるだろう…その部屋の中心にある円卓には四人の少女がいた。
「真桜様、ティータイムセットをお持ちしました」
「ありがと聖果…あぁ、この時間は久しぶりな気がするな」
まず四人の中で唯一立ちながら、淹れたてのコーヒーをカップに注いでいる。聖果と呼ばれている女学生は、眼鏡と白いカチューシャが特徴の和風文系な美人であった。
「全くですよねぇ真桜様、最近は草毟りばっかで…こちとら高貴で気品あるレディだってのにさぁ」
椅子にあぐらを掻いている彼女は日焼けしており、しなやかでありつつも手足が長い。手元にあるお徳用の煎餅パックに手を突っ込んではバリバリと頬張っている。
「言動が一致してねぇですよwダンプ女様w」
「あ…? 誰がダンプじゃミミズ女?」
「アレぇご自分で理解していませんかw?この間他校の100キロ級の奴らを突き飛ばしたじゃないですかw☆これ以上ネーミングセンスの感じるあだ名ってありますゥwww??」
「ンだと…だったら試しにテメェもド突いて飛んでみっかコラァ?!」
「いい加減にしなさい悠ッ、それにシャルさんも…!!」
シャルと呼ばれた少女は、片結びに結んでいる頭部にヘッドホンを着けていた。毒を吐いている彼女の口からはギザギザした歯がチラッと見えている。そして…
「シャル…「あの法」ができて以降、今みたいにこうした時間はそうそうない。お前らが仲良くしているのを見るのも楽しいが、それよりもこうして風紀委員の皆で円卓に囲んで茶菓子を楽しもうではないか…貶し合いは無しでな」
「ごめんなさい、真桜さまぁ(´;ω;`)」
(相変わらず彗星みてぇな態度の変わりよう…)
周囲の三人の様子からして絶対的な権威を持っているであろう真桜と呼ばれている少女は他の少女と違ってネクタイをしており、そして気品と覇気を感じさせた。
「悠、私たちだけならば構わない。けれどもこの学校の生徒誰もが色々な意味で注目されてるのだから…生徒たちの前では注意はすべきだぞ」
「分かりました、申し訳ありません…」
「分かってくれるなら問題はない、悠」
「ありがとうございます、真桜様…」
「ふっ…やめてくれ、それより茶を楽しもうじゃないか」
「では…」
全員が円卓の席に着き、全員分のカップと茶菓子が用意された。真桜がカップを口につけ、コーヒーを一口飲むと―――
パァンッ!!
『侵入者ありッ、侵入者あり…風紀委員会と教師の方々は至急現場へ…繰り返しますッ…』
優雅な時間を踏み砕くような外の爆発音と非常事態用の召集放送。スターティングピストルや爆竹の破裂音に似たソレが部屋にいる四人にも聞こえるように響いた。
「やはり小休止も、ままならない…か」
真桜は口にしたカップを円卓に置いた時、真桜以外の女子たちは全員立ち上がった。それぞれ個人によって反応は異なるが、先程喧嘩していた彼女ら同じように…
「やっぱり来やがったかァ雑草共がァ!!!!」
「…では参りましょうか? ですが、今度は徹底的に…一寸残さず根絶やしにしましょう…」
「「処す。」一択しか選択不可wwwキャハハハハハ!!!y( ☆∀★ ###)y」
憎悪や憤怒、あるいは嫌悪感を感じるような表情が見えた。
「真桜様、申し訳ございませんがこちらで少々お待ちしてて下さい! 直ぐに終わらせますので…」
「雑草共をブッチしてくるね~( ̄m ̄###)☆」
表情を戻した聖果と紗流亜は真桜に一礼して部屋から退室し、部屋から三人いなくなったが本人は気にせず優雅にコーヒーを飲み干す。
「実に、騒がしくなったモノだな。 この『天嶺ノ宮女学院』も…
―――――――君も、そう思うよな?」
説明しそびれたことだが、その部屋はテーブルが2つある…。一つは部屋の中心に設置された円卓、そして部屋の端に置いてあるもう一つの小さい楕円形のテーブルには飲み終わった茶のみが置かれていた。
~~~
「天嶺ノ宮女学院」、第二校舎一階・廊下にて―――
「よし、この先の階段を登ればッ!」
女子高の廊下であるのにも関わらず、騒動の中心であった五名の男子高校生の姿がそこにはあった。女子生徒たちが散らばっていた廊下で突き走る彼らの行く先には上階へと続く階段が見えた。
「グアアアッ!!!」
「渡泉ィ!!!」
一緒に走っていた男子の一人が後ろに飛ばされ、男子たちは足をとめると腕章を着けた悠と紗流亜が複数の女子生徒と共に通さんといわんばかりに階段の前を塞ぐ。
『土足のまま廊下走ってんじゃねぇよ…そこまでだッ侵入者共!!!』
「遂に出てきやがった……天嶺ノ宮女学院、〈風紀委員会〉!!!」
「見てッ射場山様たちよ~!!」
「そんな奴ら、けっちょんけっちょんにしちゃって~!!」
ヤジと歓声混じいて響く廊下で、侵入者である男子たちとその進路を阻む女子たち。相対してにらみ合う中、悠と紗流亜はスピーカーに繋げた拡声器を手に持って口元に近づける。
『天嶺ノ宮女学院高等部ゥ! 風紀委員会「執行班」班長…射場山悠だァッ!!』
『同じく風紀委員会「戦略班」班長の大橋紗流亜……コッチは数名確保した…大人しく捕まってねw』
風紀委員たちの中から投げ捨てられたのは作業服を着た男二名…どうやら彼らが破裂音の犯人だったらしい。
「田端ッ、古田まで……!」
『いいか、よく聞けこのドぐs%@●&◎/×¥y○共ォ!!』
※表現に適した発言ではなかった為、この音声は放送委員会の特殊拡声器により一部遮断させて頂きました。
「お~い、放送コードにかからない程度の発言しろよwww」
悠の顔からビキビキと青筋が浮かび、収まらない怒りが表情となって露わとなっていた
『こほんっ…貴様等はあろうことか無礼にもアポイントメントを取らずに無断侵入した挙句、校門前でチョークの粉を入れた袋を爆発させて滅茶苦茶にした…。最後に何より我々の貴重なお昼休みの時間を潰した!! これらは我らが誇り高き名門ッ、「天嶺ノ宮女学院」に対する侮辱行為だッ!!! 他校の生徒だろうが容赦しないと思え!!』
「へッ、そいつはワリィことをしたな…でも俺達にはよぉ、やらなきゃならねぇ事があんだよォ!!!」
男子の一人がおもむろに胸ポケットから取り出したものは、一通の手紙であった。だが手紙から発せられる光は角度によって七色に輝いており、一般的な手紙とは違うことは明らかであった。
「きゃああああ!!!」
「眩し過ぎるわ!!」
その光は別の校舎で様子を見ていたギャラリーたちの眼にも直撃する程のもので近くにいた.
風紀委員たちも腕で眼を抑える(サングラスを用意していた紗流亜と悠を除いて)。
「っチ、やはり恋愛文書か…!!」
「相っ変わらず目障りレベルにマブだわww」
「お座りしてる余裕なんてこれぽっちもねぇんだ、決死・爆死上等…だからこそッ俺らは女学院にいんだ!!俺たちの気持ちは…
この「錬愛闘函」だけは、絶対に成功させてやる!!!!!」
「いくぞ野郎共ォ!」
「「「「ウオオオオッッッ!!」」」」
男たちの気合の入った進軍に怖気ることなく、悠は手を挙げて準備のサインを出す。
「ふっ、学習能力の無い雑草共が。…弓道部ッ前へ!!!」
「「「ハッ!!!」」」
「狙い定めェ‥射てえええ!!!!」
悠と紗流亜の前に一列で現れたのは、弓を構える天嶺ノ宮女学院の弓道部たち。悠が挙げた手を前へ振り下ろすと同時に無数の矢が男子目掛けて撃たれてゆく。
「ぐほあぁッ!」
「っく、なんのォ!!」
無数の矢によって一名倒れ、一歩も前進できない状態となってしまった男子たちは防戦一方となってしまう。
「オホホホォ~特殊ゴム製の弓の大嵐を受けやがれェ!」
最早これまでかと思ったその時、一人の男子が無数の矢を受けながら前へ前へと進んでいく。体型的にはお世辞にも良くなく、むしろガリガリな彼であったが…
「僕らの恋は、退かない…僕らの恋は、屈しない…僕らの恋はぁああああ―――
鋼の如しィイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!」
―――青春武装、「鋼鉄の恋心装甲」!!
男子の学生服の中を湿布のように素肌に直接貼られている数十枚の「恋愛文書」が変形・膨張し、仮ではあるが、まるでボディビルダーの様な巨大でムキムキの姿となった。
「ウォオオオオオオ!!!!!!!!!」
「きゃあああああああ!!」
ムキムキな巨体を手に入れた彼は、矢の攻撃などものともせずに猛突進してくる。危険と判断した風紀委員たちは反射的に道を開けてしまった。突進してきた男子はそのまま階段へ登って行った。
「よしぃ…皆アイツに続けェ!」
「オオオオオオッッ!!」
この猛突進に続き、他の男子たちも階段へ突き進み…いつの間にか一階には男子が一人もいなくなっていた。状況を見た悠は冷や汗をかいていた。
「っく、っべぇ通しちまった…聖果副会長すんません! そっちに数名いっちまいました…!」
インカムの無線で連絡をとる悠。だが隣にいる紗流亜は我関せずといった様子であった。
「あ言っときますけど全部無能ダンプの責任なんでねw」
「う、うっせぇ! 現場にいたテメェも指示すらしてねぇじゃねぇかよ!!」
『そうか。ありがとう…もう本部に戻って良いぞ、二人共』
「ええそうしときま…ってその声ッ、も、ももしかして真桜様ッ!?」
聖果の声が聞こえるかと思っていたのか、悠は声が少し裏返ってしまった。
『残り数名なんだろ? 少し手合わせをしようではないか…』
「そんなっ…真桜様直々に戦わなくても……」
『そうですよ、真桜様はこの学園の「最後の剣」とも呼ぶべきお方、そんなお方にお手を煩わせては…』
無線の向こうから聴こえてくるのは聖果の声だ、どうやら二人は近くにいたらしい…
『止めてくれるな、悠…それに聖果。 いつもお前らにこの様な苦労させているのだ…部下たちの苦労を知るというのも上に立つ者が経験すべきことだ』
『ま、真桜…様……』
~~~
「よしっ最上階まであと少しだ…気合入れるぞ!!」
階段を駆け上がり最上階を目指す三人の男子…すると
「…おい、あそこに立ってるのって?」
男子の一人が指差した先には誰かが巨大な何かが見えた。しかし巨大な物体は倒れてそのまま階段を滑り落ちていき、男子たちの足元に届いた。…逆光で見えなかったが、落ちてきた物体が先程ムキムキとなった
男子生徒だった。
「ッッ!!!」
「やっと来たね、侵入者残党の諸君…」
男子たちがその声が聞こえる上階に顔を向けると、後光を刺しながらも真桜の姿をみることができた。
「た、天嶺ノ宮の風紀委員長……」
「2年2組、霞岬真桜…君たちの恋路、悪いが断たせてもらう!!」
真桜はブレザーの袖から腕に巻いていた白い紙の帯を解いた。取り出された紙の帯は瞬時に刀に早変わりした。まるで男子たちの持つ「特殊な恋文」にも似た性質のものであった。
「君たちが」
「こちとら何か月も前から用意してたんでなぁ…」
「業者の作業員に装い、チョークの煙幕で攪乱させて複数箇所から侵入して階段で合流する…
即席の集団ではここまではできないだろう…」
「お褒めの言葉ありがてぇッスけど、そろそろ行かせて頂きますよ!!」
息を整えた男子たちは自分達の持っていた恋愛文書を一斉に手に取った。
「全員で討ち倒すぞッ!!」
―――青春武装・「弩棍杖・伐鍍」!!
―――青春武装・「五百字弾装填式恋装砲」!!
―――青春武装・「義獣・猟拳」!!
男子たちはそれぞれの恋愛文書を武器に変え、真桜に襲い掛かる。三対一の戦いというのは、一般的にフェアとは言えない。しかし、彼女がその「一」である場合は…
「良かろう。 では、その度胸と策略に免じて…一撃で仕留めよう!!!」
こうやって多(他)を圧倒してしまうからこそ、彼女は風紀委員長であるのだ。一振りの剣が起こした斬撃は服と共に大破し、男子たちは見事に吹き飛ばされる。
「ううっ…」
「嘘……だろっ?」
(正直、「化物」の規格を見誤ってた…。 ここまで違うのか?!)
パンツ一丁となった男子学生たちが真桜に跪くように倒れている。真桜は階段の踊り場にいるリーダー格と思われる男子の傍へと近寄ってゆく。
「これで終わりか? 遠い所から来ていただいたのに残念だなぁ…ねぇ、雫城第一の岩嶋君?」
「なっ……俺の名前と高校を知っているだと!?」
「そちらがこの日の為に準備したように、我々も敵の情報は完全に網羅している。 君が2年4組の道川エンジェリーナさんと接触していたことも、ね…」
「うぅっああ、そうだな。俺達にもう手はねぇ…だがなぁ、せめて最後の一矢くらいは…!!」
その時だった。天井に割れ目が生じそのまま崩壊した。瓦礫の中から現れたのは一団にいなかったもう一人の男子のパンツ一丁の痛ましい姿だった。
「…ッッッ!! あっ荒崎!!!」
「君の言う一矢とは、彼みたいな伏兵のことかな…?」
伏兵であった男子とは別に、煙の中からからもう一人の影が見えてきた。煙が晴れると、和服の男性が現れた…男性は和服を着た浪人風の出で立ちをしている。極めつけに被っていた笠を脱ぐと、その笠には「兵」の字が刻まれていた。
「あの校章…まっまさか、「兵」学園の…!!?」
「今回は君たちみたいな集団が襲撃した時の為に、彼には数日この学園に居座ってもらった。
『天下最強の高校生たち』の巣窟、総本山と呼ばれている……国立「兵」学園の生徒である彼を…」
「……」
「さて、これで全員の恋愛文書は破棄された…ではそろそろ覚悟してもらおう!!」
沈黙の中、「兵」学園の生徒らしき人物は手にしていたのは一本の鋭い剣であった。
「ひいィっ……」
「まさか、そこまで準備しておいて…作戦が失敗してしまうという覚悟だけしていない訳ではあるまいな? この天嶺ノ宮女学院において無断で侵入した者、校内で無礼を働いた者…そして―――」
「兵」学園の生徒は、今度こそ本音から怖気づいている男子たちに剣の矛先を向けた。
「突討…御免!!」
「「錬愛闘函」で敗北した者たちをッ! 以降この天嶺ノ宮女学院から、永久追放とするッ!! 最早君たちに…自らの愛を証明する資格も機会も失ったのだッッ!!!」
――――――突針技法・「磔」!!!
攻撃を受けた男子らは踊り場の窓から外へ衝き飛ばされ、校門前で全員仲良く積み重なって一つの小さい山となった。
「ヴ…ぶほぁ!!」
真桜は踊り場の窓で校門前の残骸の山の様子を見ていた。街中で何かが反射したのか一瞬だけ光ったのを感じ光が見えた方向に顔を向けると、光は一瞬出たものであった為か再び見ることは無かった。しかしその光ったであろう場所を見つめる真桜に聖果が階段の踊り場に歩み寄ってきた。
「…聖果か、放送部からは許可をもらったか?」
「はい、屋上の方でご用意しております」
「ありがとう、では…」
~~~
屋上へと向かうと、階段を防衛していた悠たちと風紀委員が待機していた。拡声器を有線によって繋げたスピーカーからキィーンという音が発せられ、スイッチをオンにした聖果が拡声器を真桜に渡した。
『私の声が届く範囲にいる全ての者たちに告げる!! たった今数名の男子たちが困難な試練に挑み、恋路に散った…!!彼らは昼休みに急襲したわけだが私個人としては大いに構わない…我々風紀委員会は如何なる時や場合だろうとッ、「恋愛闘函」を強行しようと構わん!!』
「流石は真桜様…何とお勇ましい」
「いやっ、でも今の宣言で今後も来るんじゃ…」
「まぁでもぉ…それは、安心しても良いんじゃないw?」
『だが心しておくが良い!! 貴様らが踏み入れるこの聖域は…学園の規律を守る我らが〈風紀委員会〉ッ!!! 幾多の戦場へ駆け巡った猛者たちのいる〈部活動連合〉!!そしてこの天嶺ノ宮女学院全生徒の頂点に位置する〈生徒会役員〉!! その他に我々を支えてくれる内部の生徒・外部の方々…この学校に居る人々が、君たち挑戦者を阻む巨壁と思え!!!』
スピーカーから大音量で流れる決意表明ともとれる発言であるが、その言葉一つ一つに女子高生から発せられない筈の重い覇気を感じ取れる。それほどに…遠くの者にも感じ取れる程に、霞岬真桜にはカリスマ性を持っていた。
「絶対的カリスマ性って怖いよねぇw」
「ああ、そうだな…」
『ある者は己が愛を伝え、またある者は想いを伝えられずに朽ちるだろう…。 それを恐れず、知略や力を以て我が校の投函所に向かうのならッッ!!!規律守りし風紀委員会の代表として君たちの全身全霊の「錬愛闘函」を全身全霊を持って死守しよう、心に刻んだかッ勇士諸君!!!!』
「きゃあああああああああああああ!!!!!」
「真桜様~~!!!」
真桜が「決意表明」のスピーチを言い終え、拡声器を下ろした直後だった。
「……!」
小さい物体が自分の眼めがけて飛んできたのだ!! ただ小さな物体は真桜が反射的に掴んだ為当たることはなかったが、他の三人はその様子をみて慌てて駆け寄った。
「真桜様…御無事ですか?」
「ったく、宣言直後から早速かっ!?」
小さい物体の正体はなんと折紙でできた手裏剣であった。手にした手裏剣を見て真桜はフフッと微笑する。
「案ずるな。ただの紙手裏剣だ…校外から飛んできた」
「ウソぉん(・ω・)…ここ一応10階建ての屋上なんスけどww?」
「とはいえ、確実に言えることがあるとすれば―――
―――これを投げた本人には会えそうだ…直ぐにな…」
真桜は手裏剣型に折られた折紙を拡げると、そこにはアルファベットの「Q」のようなマークと筆で書かれたメッセージが記されていた。メッセージ内容は…ごくシンプルだ。
『その言葉を忘れるな、サムライ女!!』
~~~
天嶺ノ宮女学院から数キロ離れた某所、天嶺ノ宮で起きた喧騒とは程遠い程に静かな建物の屋上――。
そこで焼きそばパンを頬張る少年がいた…。少年は足を使って、器用に雑誌のページをめくる。傍らには他の週刊誌が山積みになっており、その雑誌の特集記事にされていたのは「天嶺ノ宮女学院」…そして、「錬愛闘函法」という法律案についてのものばかりであった。
「………」
カッッッ!!!
焼きそばパンを持っていた左手を使わずに、顔に向かって撃たれた手紙付きのゴム製の矢を右手でつかみとった。食事を終えた少年は手紙を開いた…書かれていた内容は短文であった。
『来るが良いッ、忍び共!!』
「へッ、上等だ…………!!」
恋と悪意…知略と武力、そして陰謀と欲望渦巻く青春活劇が、今始まろうとしていた…。
END………?
[作者にて]
どうも、作者のTHE黒と申します。短編小説…というよりも「エピソード0」小説第一弾の本作はいかがでしたか? 小説だけでなくここでも長いと読み飽きちゃうかもなんで(笑)、手短に話したいと思います。今回の「3連続0話小説」は、今後自分の書く小説の方向性であったり、反省点やをみつける為のモノなので読者の皆様の意見や感想を多く聞きたいのが正直な気持ちです。ですからもし、可能であるならばTwitterとかで一言でも構わないのでよろしくお願いします。第二弾の小説のジャンルは「探偵もの」を出したいと思うのでお楽しみに!それでは一週間後までごきげよう‥