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俺氏、家族会議をする。

 「ただいま~」


 ショッピングモールで買った大量の荷物を抱え、俺は家に戻ってきた。


 両親は共働きで、二人共この時間はまだ家には帰ってきていない。しかし俺はいつもの習慣でただいまと声を上げた。


 「ん?」


 見慣れた靴が、玄関に揃えられていた。その持ち主は外で一人暮らしをしているはずの人物であった。


 こ、これはあかん……。


 案の定、その人物が玄関まで出てきた。


 「どちらさまです~?」

 「お姉ちゃんなんで居るの!?」

 「……あれ、こーちゃん?」


 俺の趣味を理解しているお姉ちゃんだ。流石である。一瞬で俺が俺であると見抜いた。


 お姉ちゃんは俺が女装している時の顔と似ている。多くの女装レイヤーが『メイクをすると母か姉妹の誰かに似る』と語るように、俺も普通にメイクしたらお姉ちゃんに結構似ているのだ。


 つまり、お姉ちゃんは結構可愛いという事でもある。何を隠そう、俺の初恋はお姉ちゃんだったのだから。


 コスプレの為に体重コントロールしている俺と違って、一歩間違えればややだらしないと言われるグラマラスなボディ。タレ目がちな瞳に、今の俺と同じくウェーブのかかった長い髪。身内贔屓を差し引いても、ぶっちゃけエロ可愛いお姉ちゃんなのである。



 「うっそ!いつのまに女声まで習得してたの!?いやん!可愛い!!」


 そう言って、お姉ちゃんは俺に抱きついてきた。そういや俺の声も女の子の物になっていた事をすっかり失念していた。


 「ちょっと、やめろってば!」


 大量の荷物を抱えたままである俺は、お姉ちゃんを振りほどく事が出来ない。


 「なになに? なんで女子制服着ているの? もしかして文化祭かなにかの出し物?」

 「あー、そう、そうなんだよ。この荷物もその為に買ったんだ……そうだ、お姉ちゃんは、晩ごはん食べていく?」

 「うんにゃ。 ちょっと忘れ物を取りに帰ってきただけだから。またすぐに帰るよ」


 よっし!どうやらお姉ちゃんは俺がコスプレしていると思いこんでいるようだ。ならばそのままやり過ごすとしよう。俺が女の子になった事がバレると、絶対オモチャにされる。


 俺はお姉ちゃんに抱きつかれたまま、リビングへと移動した。荷物を置き、俺は部屋にあがろうとする。


 「あーん、まってよ、こーちゃん!もうちょっとこーちゃん成分補給させてよー」

 「なんだよこーちゃん成分って。そろそろ離してよ鬱陶しいなぁ」


 早く離さなければ、バレてしまう可能性が高くなる。


 「うふふん、コスプレとは言えこんなおっきな胸パッド仕込んじゃって。おませさんめ」


 そう言ってお姉ちゃんは、俺の後ろから俺の胸を揉み始めた。


 「あっ、くうっ……や、やめろって、お姉ちゃんっ!ひゃうんっ」


 俺のこの体はやけに敏感なのだ。揉みしだかれてしまい……つい喘ぎ声を漏らしてしまった。


 「おおお、今の演技、すっごいエロいよ、こーちゃん。というか、シリコンパッド、触り心地もこんなにリアルなんだねぇ」

 「ひうっ! や、やめてってば!」

 「んもう!そんな声出されちゃうとお姉ちゃんも興奮してきちゃう!!お姉ちゃんのキスマークつけちゃる!!」


 そう言ってお姉ちゃんは、俺の首筋に唇吸い付けた。


 ちゅーっと、エロい音が響いた。


 「あああ……なんかこーちゃんから女の子の匂いがする……なに?もしかして男の子でも好きなっちゃった?」

 「ち、ちがうってば!ひゃうっ!」

 「あらあら?興奮しちゃってるの? どれだけ興奮してるか、お姉ちゃん、チェックしなきゃ!!」


 お姉ちゃんはそう言いながら、俺のふとももの間に手を差し入れ、ススっとそのまま股間まで触ろうとしてきた。


 ああああそこはダメだあああああ!!


 「あれ?無い?こーちゃんのおちんちんが………無い!?!?」


 ここまでバレたらしょうがない。素直に打ち明けるとするか。お姉ちゃんを振りほどいて、俺は叫ぶ。


 「俺は今朝からなぜか女の子になっちゃったんだよ!!」

 「は? なにを馬鹿な事を……?」


 デスヨネー。


 「で、でも確かにおちんちんが無かったわ!!」


 うーんとお姉ちゃんは考え、俺を浴室まで引っ張っていこうとする。


 「なんで浴室行こうとしてるんだよ!!」

 「今は女の子同士でしょ!本当に女の子になってるなら、恥ずかしがる必要なんてないじゃない!」


 それもそうか。



 という訳で浴室で全裸にひん剥かれた俺は、お姉ちゃんからボディチェックを受けていた。セクハラともいう。


 「ああ~、妹になったこーちゃんも可愛いなぁ! っていうかなんで私よりもおっぱい大きいの!?」


 お姉ちゃんは自身も裸になり、自分の胸を俺の胸へと押し付けてきた。


 「ひゃうっ!」

 「んもう、敏感だねぇ、こーちゃんは」


 にししっと、いたずらっぽく笑むお姉ちゃん。


 「さぁ、お姉ちゃんと洗いっこしようか」

 「なんでそうなる!?」

 「こーちゃんはウィッグの手入れは得意でも、自分の髪の毛の手入れはそうでもないでしょ?」


 そうなのである。 俺はムダ毛処理もお肌のケアも、普段からしている。だがしかし、髪の毛だけは別なのだ。こんなに長い髪の毛の手入れの仕方なんて研究した事はない。


 「……」

 「ほらみなさい。お姉ちゃんが教えてあげるから。ほらほら入った入った!」




 シャワーを一緒に浴びながら、お姉ちゃんが鼻歌まじりに俺の髪の毛を手入れしてくれる。


 「んふふ、まさかこーちゃんとまた一緒にお風呂入れるなんてね」

 「俺は今更お姉ちゃんと入るのってなんか恥ずかしいよ」

 「んもう、……なに、こーちゃん、お姉ちゃんの裸に興奮しちゃうの?」

 「っ! しねえよ!」

 「本当かなぁ~?」


 何かを確認するかのように、指先を俺の胸に這わせながら、再び首筋にキスをしてくるお姉ちゃん。そのフェザータッチに俺はまた、湿っぽい声を出してしまう。そのまま、為す術もなく、お姉ちゃんからの激しいスキンシップを受け入れてしまう俺であった。





 リビングでぐったりしていると、両親とも帰ってきた。お姉ちゃんは今夜は泊まっていく事にしたようだ。同じようにラフな格好に着替えている。


 「お母さんとお父さんにこーちゃんの事説明しないといけないでしょ? それと、明日の学校、私もついていくわ。こーちゃんの担任、私の担任でもあったから。私が居たほうがよりスムーズに話が通るでしょ」




 お母さんはさすがというか、一発で俺の事を見抜いてくれた。お父さんは、初めは半信半疑だったが、お母さんとお姉ちゃんが俺が俺である事を証明してくれている以上、信じざるを得ないという感じで受け入れてくれた。


 あとは担任に話を通せば、俺は特に障害なく女子生徒生活を過ごせるように……なるはずだ。

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