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俺氏、ゴスロリデートする事になる。

 全校に、あっと言う間に俺の噂が広がった。


『もともと男だった二年生の天野って奴が、超絶美少女になって登校してきたってよ!』


 客寄せパンダのように、休み時間になる度に俺を見に全校から生徒がやってくる。


 初めはウンザリしていたが、あっという間に慣れてしまった。この程度の人混み、お盆や年末イベントに比べればなんて事はない。見物客たちも、流石に教室までは入って来ないのだから。


 問題はまだ担任には俺の事を知られたくないんだよなぁ。親にもまだ女の子になった事は伝えてないから、担任に解説するのが面倒そうで。


 幸いにして、本日はもうホームルームも担任の授業も無かった。これで少なくとも今日は逃げ切れる。今夜家に帰ってから親に状況を説明して、明日一緒に学校に来てもらう事にしよう。



 見世物になっている俺はというと、堂々と教室で友達とお喋りをしていた。普段俺がお喋りする面子とは違い、全員女子生徒だったが。


 ああ、俺もカケル達のグループに加わりたい……。親友共を俺の魅力でメロメロにしてしまいたい、という誘惑もある。というか、カケルがこっちを見る度に顔を赤らめるので、してやったりという感じだ。けれど女子生徒が俺を離してくれないのだ。


 ふっ、美少女はつらいぜ。



 そん中、一人の小柄な女子生徒が、教室の外の人だかりを押し避け、ツインテールを揺らしながら俺の前にやってきた。


 ツインテールの先にカールがかかっている。ゴスロリ雑誌とかでよく見るヘアスタイルだ。コスプレならともかく、日常生活でその髪型は、一歩間違えれば痛い子なのだが……それが様になっているから誰も何も文句は言わない。


 俺が所属している漫研の笹宮部長だ。三年生であるが、小学生だと言われたら信じられるくらい童顔だ。当然つるぺたである。


 彼女も、俺がコスプレに誘いたいと思っている人だ。絶対ロリキャラやお嬢様キャラが似合うと思うのだ。しかし彼女はコスプレには興味がないと言っている。漫研に所属していながら興味が無いとは。わりと謎である。



 「部長、どうしたんです?」

 「天野……君でいいのだな? 噂になっているから来てみれば。どうした、こんなに可愛い姿になってしまって」


 くすくすと、どこぞのお嬢様のごとく笑う笹宮部長。


 「でも、なんか見た事のある顔だな……」


 棒読み気味にセリフを喋りながら、ジーと俺を見てくる部長。あ、これはあかんやつかもしれない。


 「えーと、俺の男時代の顔面パーツの面影が残っているからじゃないですかぁ?」


 思わず目線を逸してしまう俺。


 「ふーん……?」


 彼女は何かを確信しているかのように、ポケットからスマホを取り出し、指先で操作し出した。そして目的の物を見つけたのか、俺とそれを見比べてニヤリと笑い……SNSで公開されている俺の女装コスプレ写真を見せつけてきた。


 俺の耳元に顔を近づけて、そっと囁く笹宮部長。


(……女装レイヤーのアマミヤちゃんって、やっぱり天野君の事だったのだな)


 やっぱりってどういう事だ!? 前から疑われていたって事か!?


 混乱する俺に、微笑む部長。


 「今日の放課後、部室に、来てくれるよな?」


 俺は「はい」としか言えなかった。




 教室から出て行く部長を見送り、丁度入れ違いにお手洗いから戻ってきた白城さんへと振り向く。


 「ごめん、白城さん。放課後、漫研の部長から呼び出された」

 「天野君、漫研だったっけ」

 「そう。ほとんど幽霊部員みたいなもんだけれどね」


 俺が部活の時間すらもコスプレ衣装や小道具制作に時間を費やしていたからだったのだが。


 「漫研の部長さんっていうと……笹宮先輩?」

 「知ってるの?」

 「ちっちゃくて可愛いからね」


 それには同意する。白城さんはうーんと考え込み、


 「それならそんなに話も長くならないと思うし、私は教室で待ってるよ」

 「え、そんな、迷惑じゃない?」

 「大丈夫だって」

 「じゃあ……お言葉に甘えて」



 俺は放課後、漫研の部室に向かった。


 部室は事前に人払いされていたようで、部長以外誰もいなかった。


 「来たな、天野君」

 「あとで女物の服とか下着買いに行かなきゃなんで、話、短めにお願いしますね」

 「ああ、聞いている。白城とだろう?」

 「あれ、お知り合いだったんです?」

 「まぁな」


 白城さんとの関係はそれ以上は話すつもりはないようだ。まぁ良いだろう。


 「で、なんですか、要件は」


 「……天野君。 漫研に所属していながらコスプレ活動を黙っていたとは、どういう了見かね?なんでウチでコスプレしない!?」


 なぜか怒られる俺。


 「いやいやいや! 前から俺、暗に部長も誘ってましたよね、コスプレ!全然興味なさそうじゃなかったですか!」

 「興味はあったよ!一人でするのが恥ずかしかっただけだ!」


 顔を赤らめて、告白する部長。


 なん……だと……。


 「……つまりなんですか。もし俺が素直に自分がコスプレしている事を打ち明けていたら、部長もコスプレする気になっていたという事ですか?」

 「……そういう事だ」


 俺は予想外のその告白に、満面の笑みを浮かべた。


 「俺もずっと、部長と合わせしてみたかったんですよ!部長絶対似合いますって!」


 部長の手を握り、我が身の事のように喜ぶ俺。狙っていた部長がコスプレしてくれる!やった一!部長とならあの組み合わせやこのカップリングの合わせが楽しめそうだ!!


 「ほ、本当か?」

 「本当ですとも。部長可愛いですもん!だから前から誘っていたんですよ!」


 もじもじと恥ずかしがる部長。


 「じゃ、じゃあ!!! 私と原宿でゴスロリデートしてくれ!!アマミヤちゃん!!!」



 は?



 「は?」


 なんでそうなった。

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