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俺氏、女の子になってしまった。

 深夜の突然の高熱にうなされた翌朝9時。


 熱は既に引き、体の調子も戻りつつあった。汗を洗い流す為に風呂場へやってきた俺の目の前に飛び込んできたのは一人の美少女だった。


 ふむ。まるで俺がコスプレしてガチメイク決めて写真屋さんで修正したかのような美少女だ。


 長くてゆるくウェーブがかかっている艶のある黒髪。

 身長は俺と同じ164センチ。

 タレ目ながらも大きな瞳に長い睫毛が加わって、可愛らしさとセクシーさが同居している。

 そして巨乳。


 ……素晴らしいっ!!


 俺が理想とし、日々メイクと写真屋さんの研究を重ね、写真の中でしか再現出来なかった、夢にまで見た女の子がそこにいた。


 ドキドキしてしまい、やぁ、と、震えながらも声をかけつつ右手を上げる。彼女もまた、左手を上げて挨拶をしてくれた。


 それはつまり、鏡に映った俺だった。



 いやいやいやいや!!ちょっとまて!!!


 なんで俺、女の子になってるの!? 理想の顔になれてむしろ嬉しいけれどさ!!


 俺は別に女の子になりたい訳ではなくてですね!!心は男で恋愛対象は女の子!!ノーマルなんです!!別に女装コスプレしているからって性自認は女性という訳でもないし、男が好きという訳でも当然ない。


 無いはず。


 女の子が好きが高じて女装コスプレが趣味になっただけの、ごく普通のオタクですよ?


 いつ女の子になってしまったんだ俺? 暫し回想してみる。昨夜の時点ではまだ男だったはずだ。


 ミシンでダダダダっと次のイベントで着る予定のコスプレ衣装を縫っていたんだ。そこで……そうだ。珍しく針で指を刺してしまったんだ。その後、謎の筋肉痛と高熱が出てきてベッドに潜り込んだのだ。


 そして目覚めたら理想の美少女になっていたのである。


 よくよく見てみると、完全に別人になった訳ではなくて、ベースはあくまでも俺で間違いないみたいだ。親戚の子だと言ったら通用しそうなくらいには、面影が残っている。



 ……取り敢えずお風呂に入ろう。パジャマがぐっしょりしていて気持ちが悪い。


 風呂場で改めて、鏡に映る自分の全裸をじっくり観察してみた。


 まず巨乳である。これ大事。


 今後コスプレでシリコン胸入れなくても済むじゃん! いやっほーい!! 自然な胸の谷間が作れるぞ!! これならあのキャラもこのキャラもコスプレし放題だ!! 水着系衣装も着れちゃうぞ!! 貧乳キャラは胸潰しでいくらでも対応出来るから無問題だ。


 そして感動すべきは腰からふとももにかけての魅惑的なライン。肋骨の下できゅっと締まり、そこからお尻とふとももにかけての肉感がとてもリアル。コスプレする時はウレタンパッドを敷き詰めて再現していた物だが……。今後はそれすらも必要ないって訳だ!!


 ふははは!!


 あれ!? 女の子になってよかったんじゃね?俺!


 ふははは!!



 そんな魅力的な自分のカラダを見ているとムラムラしてしまい……だって男の子ですもの……色々と堪能したあとで我に返ってシャワーを浴びなおした。気持ちが良くてびっくりした。


 しかしそんなテンションもまた、お風呂から出る頃には低めに戻っていた。



 これからどないしよ。男に戻れるのかね、これ。


 目下の問題としては、そうだ、学校。どうしよう。


 ちらっと時計を確認すると、今は朝の11時。


 今朝は熱が出ていたので、学校へは親から連絡をしてもらっている。熱も完全に引いたし、むしろ体調は良いくらいだ。一日くらい休んでしまっても構わないのだけれど、このカラダが何時、元に戻るか分からない。


 となれば、徹底的に楽しむしかないのでは? テンションがまた上がってきたぞ!


 制服は……そうだ! お姉ちゃんのお古を借りてしまおう!! 一度着て見たかったんだよね、うちの女子制服!


 そうと決まれば善は急げだ。お姉ちゃんの部屋を捜索する。お姉ちゃんとは仲がいいので、よくお互いの部屋を行き来していた。だから制服が仕舞ってある場所も知っていた。


 発見。まだまだ十分キレイな状態のが二着。


 お姉ちゃんは大学の近くで一人暮らしをしている。そうそう帰っては来ないので、暫くは借りっぱなしでも大丈夫だ。……お姉ちゃんに今の状態が見つかったら絶対玩具にされそうなので怖い。


 問題は下着ですな。流石にお姉ちゃんのを着る訳には行かない。というか上下共にサイズが合わない。


 パンツは取り敢えず自分のボクサーを履けば良いとして、問題は胸である。巨乳用ブラジャーなんて……そういえば持っていたわ。コスプレ時にシリコン胸を入れる用途で海外通販で買った奴が。


 着用してみた……ぴったりという訳にはいかなかったけれど、ないよりマシであろう。あ、こうなったらパンツもコスプレ用の縞パン履いておくか。気分は完全にコスプレです。



 下着を着用し、これまたコスプレ用に使っていたキャミソールを着て、お姉ちゃんの制服に腕を通す。


 鏡の前でくるっと一回転し、コスプレイヤー的決めポーズを取った。


 おお……可愛いじゃん、俺!


 ……制服の胸が結構キツイがしょうがない!


 これで取り敢えず学校へ出発出来るようになった。到着したら……まぁ、俺の親戚の子だという事にでもしておけば問題なかろ。



 女装して外出するのは実は初めてではないので、堂々と家から出る俺。


 ……女の子になって初めて実感出来た事その1。本当にみんなの視線が胸に行くのな……。巨乳コスプレの時もみんな胸を見るけれど、あくまでもイベント会場での事だったからなぁ。日常生活で胸を見られるのは……男の俺としては気持ちが分かるので、快感であった。



 そして学校に到着。ちょうど昼休みの時間である。自分は朝食を食べたばかりなので、今日は学校でお昼を摂る必要はない。


 自分の上履きを履き、

 自分の教室へと入り、

 自分の机へと座る俺。


 自然すぎる一連の流れに、休み時間でざわめいていた教室が、一瞬、静まり返った。



「えーと、教室、間違えていませんか?」


 恐る恐るとそう言ってきたのは、左側に座っている女子の白城さんだ。少し天パがかかったセミロングの栗毛色の髪の毛が可愛い子だ。隣に座っている事から分かるように、身長は俺と同じくらい。趣味は小説だと対外的には言い張っているけれども、実はラノベの愛読者である事を知っているくらいには、俺と仲がいい。いつかはコスプレに誘おうと思っている子の内の一人だ。


 さて、どうしようかな。俺だとバラすか……親戚の子だと言うか……でも戸籍とか無理そうだしなぁ……。


 そもそもうちは結構上位な進学校。成績がいつも低空飛行な俺である。編入試験とかやらされたら死ぬ事は確実。ここはもう、俺は俺である事にするとしよう。


「白城さん、わからないかな? 俺だよ俺、俺。 天野」


 自分を指差し、にっこりと笑う俺。


「えっと、……天野……君の……ご親戚でしょうか?」


 突然現れた天野と名乗る、一人称が「俺」の謎の美少女と、クラスでも人気の高い女子である白城さんとの会話を、クラスメイト全員が、固唾を飲んで見守っている。


「いやいや、俺だよ俺。天野耕太。 朝起きたら女の子になっちゃててさ!」


 出来るだけ自然に言ってのけた……つもりであった。


「「「はああああああああ!?!?!」」」」


 クラスメイトの絶叫が、休み時間の学校にこだました。

勇者アイドル百合ハーレム ~アイドルな勇者が百合ハーレム率いて魔王討伐~

https://ncode.syosetu.com/n2380en/


百合エルフは科学と魔法で無双する

https://ncode.syosetu.com/n6224ex/


上記二作品もよろしくお願いします。

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