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大罪持ちの復讐計画  作者: 晴
幼少期編
7/29

母-1 奇妙な我が子

『なんかあの子、普通の子供と違うのよねー』


 時刻は深夜遅く。

 ヴァンを寝かしつけて、今は団員たちと酒を楽しんでいる。

 場所は台所近くに有る飲み場。

 部屋の中は薄暗く、テーブルや椅子は無秩序に置かれている。


 団員の数が多いので、この飲み場はそれなりの広さがある。

 百人は余裕で入れるだろう。今も五十人ほどの団員が酒を楽しんでいた。


 今日は私たちを殺しに来た冒険者たちを返り討ちにしてやった。

 私達の山賊団【赤髪の狼】は高額の懸賞金がかけられている。

 そのため懸賞金目当ててくる冒険者が後を絶たない。


 まあ、私たちを殺したいんだったら最上位Sランクの冒険者を連れてこないと無理だけどね。


 そんな山賊団を率いる団長の私、ヴァナディース・ワーグナーは悩んでいた。

 私は自分の息子を奇妙に感じている。我が子をそんな風に感じることが、そもそもおかしいと思う。でも息子ヴァンは何かおかしい。


 まずほとんど泣かない。子供は泣くのが仕事だと聞いていた。だから私も夜泣きなどで眠れない日々が続くのだと覚悟していた。

 けどヴァンは違った。一日に三、四回しか泣かず、泣くときも決まってパンツを汚してしまった時だけ。

 そして稀に、赤子とは思えない表情で物思いにふけっているときがある。


 私がそばにいる時は、大抵笑っている。

 まるで天使のような笑顔で。

 親バカに聞こえるかもしれないけど、世界で一番かわいいと思う。


 きっと将来はイケメン。

 彼女よりもお母さんを大事にしてくれる親孝行息子になってほしいな。

 なんて考えてしまう。


 でも私がそばを離れると、途端に子供とは思えない表情になる。その瞳には確固たる意志と、大人顔負けの知性を感じる。


『頭とあの方のお子様ですよ。 普通の子供と違うに決まっているじゃないですか』

『あの年で、ハイハイであそこまで動けるんです。 将来が楽しみですね』

『顔つきも凛々しいですし、そっち方面も楽しみですわね』


 団員たちはそれほど心配はしてないみたい。

 そしてそっち方面とは、どの方面のことを言っているのか。


 ヴァンは生まれた当初は全く手間がかからない子供だった。

 夜泣きはしないし、ぐずらない。

 とてもおとなしい子。


 いや、たまに変な声を出して叫ぶときはあるか。

 あとおっぱいを飲むときの顔は、なんとも言えない表情をしている。

 性的に嫌な感覚を覚えるときもある。

 乳幼児にそんなこと考えるなんて、やっぱり私がおかしいのか?


 しかしハイハイを覚え出すと、洞窟中のどこにでも移動するようになった。

 今までとは一転、騒ぎの種となった。

 洞窟内には山賊団の仲間しかいないので、誘拐される心配はない。でも危ない場所は多数ある。

 そのためヴァンがいなくなったのがわかると、団員総出で探すこともあった。


 ある時は、台所。またある時は鍛錬場、洗濯場……などなど。

 とにかく目を話すといなくなり、子供部屋から遠く離れた場所で見つかる。

 さすがに鍛錬場にいたときは驚いた。しかも何か決意をしたような表情だったし……。


 見つかる場所もいつも同じ場所ではない。毎回違う場所。まるでこの洞窟内をマッピングしているかのよう。

 まさか二歳になったばかりの子供がそんなことできるのか。

 ……無理だわ。


『んー、やっぱり私の考え過ぎかしらね』

『頭考え過ぎですよ。 あんな可愛い赤ちゃんみたことないですぜ』


 団員のティンバーが私の呟きに反応した。彼はたまにヴァンの面倒を見てくれる。顔は怖いが中身は優しい奴だ。


『あっ! おかしな点あります! あの赤ちゃんティンバーのゴブリンみたいな顔みても泣かないよー』

『んだとこのガキャー!!』

『キャー! ゴブリンが攻めてきたー』


 今日も我が盗賊団は平和なのであった。


『そういえばここ一週間くらい、ヴァンの行く場所が一つに絞られたのよね』

『そうなんですか、頭』

『それってどこですかー?』


 神出鬼没に様々な場所に行っていたヴァンが、最近では特定の場所で静かにしていた。

 そこはほとんどの団員が行くことがなくて、私も月に一回行くか行かないかくらいの場所。

 目の前でじゃれあっている彼らは一度も入ったことがないだろう。


 子供にとっても私たちにとっても、なにも面白くない場所。

 そんな場所にヴァンは毎日行っているのだ。



 そう、本が大量に置かれた書庫へ。

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