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大罪持ちの復讐計画  作者: 晴
冒険編
29/29

異-24 ダンジョン下層の地底湖 

「畜生ー! 数が多すぎだろっ!」

『『『『『キィィィィッ!』』』』』


 僕の悲痛な叫びがダンジョンに響き渡る。

 バッドバッドの群れに背を向けて現在逃走中。サイクロプスを倒した後、血の臭いに惹きつけられ大量の魔物が現れた。


 そして現在、その魔物達に追いかけられているのだ。

 四方八方に続く通路を全力疾走。後方に【ウインドカッター】を飛ばして倒してはいるが、数は一向に減る気配がない。


 迷宮の奈落の底に落ち、サイクロプスに襲われ、大量の魔物に追いかけられる。

 碌な目に合っていない。

 僕って【幸運】のスキル持ってたよね?


「くっそー! まだまだぁー! 【ファイヤーウォール】!!」

『『『『『キィイアァァアーーーーー!!』』』』』


 なけなしの魔気を使い巨大な炎の壁を通路いっぱいに作る。

 バッドバッドの燃える香ばしい匂い。意外に食べたら美味しいのかもしれないな、と思う。

 これで当分は後ろから襲われることはないだろう。


(これはマズイかもな。逃げるのに闘気と魔気をかなり使ってしまった。次また大量の魔物に襲われたら……)


 ゴクリ、と唾を飲み込む。最悪の結末が頭をよぎった。

 頭をぶんぶんと振り、別のことを考えようとするが、なかなか違うことを考えることができない。

 めちゃくちゃに走り回ったため、現在どこにいるのかも全くわからない。


(一旦落ち着くんだ、僕。とりあえず深呼吸。吸ってー、吐いてー。吸ってー、吐いてー。……ん? 今の音。もしかして)


 スキル【超聴覚】を発動させ、耳をすます。ピチョン、ピチョンとどこからか水の音が聞こえる。

 辺りを注意しながら音のする方へ進んでみると、そこには綺麗な湖があった。


(すげー!! 神秘的ってこれのことを言うんだろうな)


 地底湖と言うべきか。

 広大な湖が広がっており、神秘的で魔物の気配は一切なかった。

 魔物が通った形跡も一切ない。ここはもしかしたら僕が落ちた場所のように、魔物を近づけない力が働いているのかもしれない。


 水の音以外しない、静かな世界。

 人に汚されていない美しい景色だった。

 ダンジョンの入り口から何十もの階層を降り、辿り着いた場所。並大抵の冒険者ではここまでくることはできないだろう。


「ここを一旦拠点にするか」


 ただ闇雲にダンジョンを歩いていたのでは、すぐに体力が尽きてしまう。ここに拠点を張り、少しずつダンジョンを攻略することにしよう。

 そうすればレベルも上がり、攻略も楽になるだろう。

 幸いなことにここはなぜか魔物が入ってこないので、拠点としてはベストな場所だ。


「まずはレベルを上げるかな。今のまま進んでも、きっと最下層にたどり着く前に死ぬだろう」


僕は前世でRPGゲームをよくプレイしていた。僕のゲームの進め方としては、とにかくレベルを上げまくってから、新しいダンジョンやボス戦に挑むスタイルだった。


 時間はかかるけど、その方が楽に進めるのでストレスも溜まらず、僕の性に合っていた。この転生した現実世界でも、RPGゲームのようにまずは極端にレベル上げをしてから先に進む、というスタンスで行こうと思う。


 そんなんじゃつまらなくないか? という声が聞こえて来そうだが、いいのだ。

 これはゲームじゃなく、現実世界だ。

 死んだら終わりなんだ……。




―――




 地底湖を見つけてからどのくらいの時間が経っただろうか。

 三ヶ月はゆうに過ぎたと思う。


 この階層は主にバッドバッドが生息しており、休憩したらバッドバッドを狩る。疲れたら休み、回復したらバッドバッドを狩る。というサイクルをずっと繰り返していた。


 食事は魔法袋の中に大量にあるので困ることはない。まだ数年は持つだろう。

 丸焼きにしたバッドバッドも食べて見たが、案外おいしかったので時々食べることにしている。


 たまに【サイクロプス】や【デュアルドッグ】もこの階層に現れる。デュアルドッグは双頭の犬だ。犬といっても見た目が似ているだけで、身体能力はずば抜けて高い。その速さもさることながら、口から吐き出す炎は強力だ。


 デュアルドッグに遭遇したら、炎を吐き出される前に魔法で速攻で倒すようにしている。サイクロプスは最初会った時はかなりビビっていたが、今では難なく倒せる。慣れって怖いね。


 もちろん彼らのスキルもゲットしております。サイクロプスからはスキル【威圧】。デュアルドッグからはスキル【灼熱の息】。スキル【威圧】はいいけど、【灼熱の息】は人前で使えないね。

 口から炎を吐き出すとか、人外すぎるでしょ。


 この階層では敵となしとなった今、下の階層に行こうと思う。ちなみに現在のレベルはこんな感じだ。


【 職業 】☆=3

剣士:LV.32 ☆

武闘家 : LV.34 ☆

魔法使い : LV.43 ☆

冒険者 : LV.7


 うむうむ。かなり強くなったでしょ。

 普通の人は一つしか職業が就けないとしたら、どんなに頑張ってもレベル99だろう。それ以上があるかもしれないが。


 僕は今、職業を三つ就けることがことができ、総レベル数109。やっと僕も人外のレベルまできたか。しかし強くなってわかるが、まだまだ山賊団を壊滅させた彼らには及ばない。


 強くなればなるほど、彼我の力の差が離れていることを痛感する。

 あいつらを倒すとか無理ゲーじゃねぇー、と考えることもある。


 そんなことを考えながら、下の階層に進む階段を見つけ進むと、新たにおデブなヒキガエルが僕を出迎えた。

 汚い緑色の皮膚に、なんかテカテカ光ってる。

 脂性ですか?


【鑑定結果】

グラン・トード : 巨大なカエル型の強力な魔物。肉は非常に美味。強力な酸を皮膚から分泌し、触れたものを溶かす。


 酸はやっかいだな。触れることができないときたか。しかも肉が美味しい……じゅるり。おっと、これから戦闘なのに涎を垂らしている場合じゃないぞ、僕。


 ここは魔法で遠距離から倒すのがいいか……いや、やっぱりここは剣で倒そう。そう決意し、魔剣を取り出す。

 グラン・トードは地面を蹴り、高々と飛び上がる。次には猛烈な勢いで僕に向かって落下してきた。

 僕もグラン・トードに合わせて飛翔する。


「カァアアアアー!」


 皮膚から垂れている酸を風魔法で散らしつつ、魔物との距離を縮める。交差する瞬間に掛け声と共に剣を一閃。

 いとも簡単にグラン・トードの身体を真っ二つにした。


 実は魔剣の力の一つがわかったのだ。この魔剣に自分の魔気を巡らせることにより、斬れ味が何十倍にもなった。

 サイクロプスとの初戦では弾かれてしまった斬撃も、魔気を巡らせることによって、スルンっと、まるで豆腐を切るかのように刃が身体を通った。

 今ではこの魔剣は僕のメインウェポンだ。


 グラン・トードを回収し、奥に進むと小さな影が凄まじい速さで近ずいてくるのがわかった。剣を前に構え、影が来たところを一閃。


「おりゃっ! えっ!! おりゃーー! くそっ当たらない! うりゃ! くそっ! ……あれいない……いてっ! こんにゃろー!」


 とても小さい魔物。リスのように可愛い外見なのだが、こいつがものすごく厄介だ。攻撃力は低く、今のところ致命傷を喰らうことはないが、問題なのはとにかく素早いことだ。

 どんなに剣を振り回しても避けられてしまう。そしていつの間にか背後を取られ、噛みつかれる。これが地味に痛い。

 一撃一撃が弱くても、数が重なるとこちらとしても危なくなる。


 どうしたものか……。


(ちょっと魔気を多く使っちゃうが……しょうがない)


「うぉおおおおおお!!」


 咆哮と共に魔気を身体中を包み込むようにはわせる。そしてこの魔気には電気を付与する。バリバリバリと音を鳴らしながら、身体を包む電気。まるでスーパーサ○ヤ人になったような外見だ。


―――ビジャーーン!


 影がそんなことは御構い無しに攻撃してくるが、僕に届く前に電気の魔気によって、大きな音とともに黒焦げになって地面に倒れ伏した。


 魔気を多く使ってしまうので、そう何度も使えないので今後はこの魔物からは逃げるようにしよう。


 暫く進むと、大きな門が道を塞いでいた。存在感が半端ないっす。

 もうこれはそういうことでしょう。

 RPGではお馴染みの、ボス部屋前の扉。


 ここでHPやMPの回復、装備の変更をして、ボスに挑む。

 あとセーブも忘れずにね。


 さて、ついにやってきましたか。

 心臓はドキドキバクバク。

 一旦、地底湖に戻って体力を回復させてから挑戦しようかな。と考えながら扉の前に立つと、突如軋む音を立てながら扉が開いていく。


(えっ、まだ心の準備が……)


 扉が完全に開く。

 開けた視界の先には広い部屋があった。真っ暗だった部屋は明かりが灯り、全高三メートルほどの人型ゴーレムが姿を現した。


(……なんだ……あれ……)


 黒曜石のように黒光りする巨体。

 僕の脳内では警鐘が鳴り響いている。逃げろと……

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