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大罪持ちの復讐計画  作者: 晴
幼少期編
2/29

生-1 ただの平凡な一日だったはずが……

『で、お前は京子(きょうこ)ちゃんの告白をもちろんOKしたんだよな?』


 よく冷えた紅茶のストレートティーをすすりながら彼は言った。

 僕も同じものを飲んでいる。口の中に爽やかな風味と甘みが広がっていく。やはり紅茶はストレートに限る。


 今僕たちがいるのは大学の学食。今日は授業が午前で終わりだったので、午後からは友人の(たかし)と話をしていた。

 隆は僕が大学生になってからできた友人だ。髪は明るい茶髪、原宿の美容室で切っている髪は、ワックスで無造作にスタイリングされている。身長は僕より高く、顔は中の上といった感じだ。

 父さんと暮らしていた頃は、友人と言える人は誰もいなかった僕だが、なんとか人並みに友人を作ることができた。


 ボッチ卒業!!


「いやー、実は……断ったんだ」

『なに~~~!?』


 隆は紅茶を持ったまま、椅子を蹴って立ち上がった。

 う○こ漏らしたんじゃないかって思うくらい驚いてやがる。


 四限が始まったばかりなので、学食には僕らを入れて8人ほどしかおらず、隆の叫び声は学食中に響き渡っている。


『お、お前、あの京子ちゃんだぞ!大学で一番人気がある、あの京子ちゃんだぞ!!』


 隆は再び椅子にかけ直し、続けていった。


『お前もしかして……男に興味があるとか?』

「んなわけないだろ」


 僕は少し呆れながら、隆の言葉に反応する。

 もちろん女性は好きだ。いや、大好きだ。

 京子ちゃんをおかずにしたことだって、一度や二度じゃない。

 けど僕は京子ちゃんの告白を断った。


 いやいや、だって、ねえ?

 彼女とは無理でしょ。


 理由は簡単。彼女のスペックがあまりに高かったからだ。自分と不釣り合いすぎて、彼女と一緒にいる自分が想像できなかった。


 僕は身長が低いわけではなく、顔も悪いわけではない。恋人も過去にいたことがあるし、やることはやっていた。

 しかし彼女はというと、容姿端麗、性格も良く、勉強もできる。両親が営む会社の社長令嬢。

 そもそもなんで僕なんかに興味を持ったのかが不思議なくらいだ。


「本当になんで僕なんだよ」


 こめかみを掻きながら呟いた。


 隆はというと、僕をじっと睨みつけている。まあ気持ちもわからんでもない。

 アイドル顔負けの女性からの交際の申し出を断るなんて、普通考えられない。僕だってそう思う。


「そういえば京子ちゃん、隆のことも気になっている的なこと言ってたぞ」

『マジか!?』

「おう。今度デートにでも誘ってみたらどうだ」


 隆は表情を輝かせる。


―――簡単なやつだ。


 実際は、「元気な男の子とよく一緒に学食にいるよね」と言っていただけだ。

 小躍りするような隆を見ながら、僕は紅茶をまた一口飲む。


 そういえば読みかけのラノベがあったな。

 時間がある時に読もうと思っていた一冊だったが、一度気になると読みたい衝動が収まらなくなり帰ることにした。


「じゃあまた明日な」

『また明日。もし京子ちゃんがいたら、隆は学食にいるって伝えておいてくれ』


 幸せな表情をする隆の顔を見て、少し罪悪感に苛まれながらも、僕は席を立って自宅へと向かう。

 自宅は大学から徒歩15分ほどの場所にある。朝目覚めが悪いので、少しでも大学の近くにと思い、今のアパートを借りた。


 歩いていると、いくつか遊具が置いてある公園が見えてきた。

 普段はたくさんの子供が遊んでいるのだけど、今日は子供が一人もいない。


「こんな日もあるんだな」


 軽く呟きながら、誰もいない公園の中を歩く。

 公園にはブランコやシーソー、砂場などがある。砂場にはシャベルやバケツ、公園の隅にはサッカーボールが忘れられていた。ついさっきまで子供達が遊んでいたような、そんな感じがした。


 不意に嫌な感じがした。僕には霊能力といった不思議な力はない。でもこの時は、凄まじく嫌な感覚に襲われた。

 すると公園の中心に突如巨大な魔法陣が現れた。


 複雑な模様が描かれた魔法陣が強烈な光を放ち始め、僕は事態の異様さに気がついた。


(これって、やばいんじゃないのか)


 直後、光が一際強くなり、耐えきれなくなり目を閉じる。


「――――ッ!!」


 激しい爆音と共に、勢いよく身体が後方に飛ばされる。


 襲い来る激痛。


 身体中が熱い。


 頭の中が真っ白になった。




 そして僕は死んだ

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