異-12 スキルゲット!
様々な魔法を使えるようになったが、未だ【魔法使い】レベル1だ。
なぜなら魔法で戦闘することができないから。
もし団員に魔法なんて使ってみな。
さすがに死んじまうぜ。
まあ、ティンバーさんなら死ななそうだけどね。
ヒュミルさんは僕に『そんなに焦らなくても大丈夫』と言ってくれる。
ヒュミルさん曰く、僕の魔気量は普通のLV.1の魔法使いより断然多く、魔気のコントロールも段違いにうまいらしい。
魔法使いとしてレベルを上げ、経験を積むことにより魔気のコントロールが上手くなっていく。しかし僕はすでにベテラン魔法使い並み、もしくはそれ以上のコントロールなのだとか。
ヒュミルさんがしみじみと教えてくれた。
しかし魔気量の関係で何発か強い魔法を放つと魔気を使い果たしてしまう。
長い時間魔法の鍛錬をしたくても、魔気量が持たずに満足な鍛錬ができない。
僕は早く強くなりたいんだ!
という事で、僕は森の中に入ることを決めた。
もちろん職業【魔法使い】のレベル上げのため。そして実戦での魔法を使う訓練のため。
運が良ければ、魔物を倒して【暴食】でスキルもゲットできるかもしれない。
母さん達には内緒でニョルズの森に入る。
魔物はとても狂暴だ。僕たち人類なんて餌くらいにしか思っていないだろう。
彼らに見つかったが最後、彼らの餌となってしまう。
だからニョルズの森に入る馬鹿はいない。 僕を除いて。
母さん達にニョルズの森に入るなんていったら、確実に反対される。
だから内緒なのだ。
まず狙うは野生動物。
経験値も得られて、肉も得られる、いわば一石二鳥ってやつですね。
しかし油断は禁物だ。 狼の群れや熊に襲われて餌にされる村人も少なからずいるからだ。
ニョルズの森少し奥に進めば魔物も出るので、できるだけ入り口付近で狩猟を行おう。
今回の目的はあくまでも野生動物。魔物はもう少し後だ。
まあ、万が一魔物が出てきても、多分大丈夫だろう。
なんたって僕は今や、泣く子も黙る山賊団一の魔法使い。
山賊王に俺はなる!!
そして僕はニョルズの森へと入っていく。
−−−
「うわぁー、すげぇー」
この森には目立った草や怪しく光る鉱物がたくさんある。
その中でも砂糖の原料であるテンサイがたくさん生えている。テンサイの根を搾り、その汁を煮詰めると砂糖ができる。洞窟の近くでも仲間が大量に栽培している。
自分用に大量にテンサイを集める。
なんの鉱物なのかわからないが、一応鉱物も回収しておく。
そんなに物を回収していたら重くないかって?
ノンノンノン。
ちみたち甘いねー。甘々だよ。
まだ僕のことをかわいくて、キュートなヴァンちゃんだと思ってないかい。
今の僕は泣く子も黙る【魔法使い】様だよ。
そう、選ばれたものだけが就ける職業!
そしてその選ばれたものだけが使える物を持っているのだ!
ジャジャーン!!
その名も『魔法袋』!
これは魔法使いしか使えない品物。中にはありえないくらいの量の物を入れることができる。袋の中に入れられる量は、魔法使いの魔気量に比例して多くなる。
実はこれ、母さんからもらったのだ。以前貴族を襲った時に手に入れたが、魔法使いがヒュミルさんしかおらず、使えずに倉庫にしまっていたらしい。
ちなみにヒュミルさんは自分用の魔法袋を持っている。
そこで魔法使いになった記念として、母さんから魔法袋をプレゼントしてもらったのだ。
今の僕の魔気量でも相当な量が入るらしい。確認したことはないが。
というわけで、今は使えそうなものは片っ端から袋に入れているのだ。
どんなに入れても不思議に袋自体の重さは変わらない。
まさに魔法の袋だ。
草や鉱物を回収していると目の前にイノシシのような豚がいた。いや、豚のようなイノシシなのか?
そもそも豚はイノシシを家畜化したものだからどっちも同じか。
とそんなことを考えていると、濁ったピンク色をしたイノシシ豚が突進してきた。
僕は躊躇わずに、イノシシ豚の首めがけて【ウインドカッター】を放つ。
【ウインドカッター】は今僕ができる魔法の中で、消費する魔気は少なく、威力もそれなり。戦闘のメイン魔法の一つになるかな、と思っている魔法である。
凄まじい速さで放たれた風の刃は、空を切り裂きイノシシ豚へ到達する。
それは一瞬だった。風の刃はイノシシ豚の首を刎ねた。とてもあっけなく。
おお……まさかここまで簡単に倒せるとは。
そして……豚肉だ。いや猪肉か。
どっちでもいいか。とりあえず肉だ。
「やったぁあああああああー!」
肉は高価だ。そこまで頻繁に食卓には出てこない。しかも大きい。三百キロはあるだろう。これだけ大きければ当分は困らないな。
ぶひひひひひひ。
−−−
イノシシ豚を倒してから僕は調子に乗ってしまっていた。まさかいきなり肉をゲットできるとは思っていなくて。
もっといろんな野生動物を倒そうと意気込んで、森の奥まで入ってしまった。
そしてアイツが現れた。
唐突に。
そこにいたのは楕円形で水色の物体。高さが五十センチくらいあり、ぽよんぽよんという擬音が出そうな動きで移動していた。
こいつはド○クエの序盤で登場する、あの【スライム】に違いない。
某ゲームとの違いというと、目がなく先端が尖っていないところだろうか。
そう目がないのだ。
なぜだ!?
これじゃあ、『なかまに なりたそうに こちらをみている!』ができないじゃないかぁー!
まあ、それは置いといて。
ゲーム序盤でも二発くらいの攻撃で倒せちゃうやつだ。今の僕は、【はがねのつるぎ】を装備していてもいいくらいのところまできているはずだ。
油断しなければ倒せるはず!
色は青いので、ブルースライムと名付けよう。
ブルースライムの動きを確認しながら、魔法を放つタイミングを見計らう。
ブルースライムはゆっくりした動きで僕の方へ近づいてくる。
――ー今だっっっ!!
日頃の練習の成果を見よ!!
「うおぉぉぉぉぉぉっ!」
【ウィンドカッター】でブルースライムを真っ二つにする。
(ふっ、ちょろいぜ、キラリン)
と思ったら、真っ二つになったらブルースライムが動いている。そしてすぐに二つはくっつき、元に戻ってしまった。
「ただ切るだけじゃ死なないってわけね」
これならどうだ! と【ウォーターボール】をブルースライムに放つ。
凄まじい勢いで放たれたウォーターボールはブルースライムに見事命中、するが……。
「あれ……なんか大きくなってないですか」
もしかして水を吸って大きくなったパティーンですか。
えっ、そんなことあるー!?
するとブルースライムは意外に素早く動きで体当たりをかましてきた。
今職業は魔法使いに就いているので、闘気量が少なく、素早い動きができない。
それでも身体に少し擦りながらも左に傾くことによりギリギリ避けることができた。
(あっぶねぇええええええー!)
絶対当たったら痛いよ! 今魔法使いだから闘気少ないし! 骨折じゃすまないって!
どうするどうするどうするどうするどうする……。
職業を一旦別のに変えるか。いや、剣士の斬撃や武闘家の拳でもダメージは与えられない可能性が高い。
最弱な魔物だと思ったけど、まさかこんなに苦戦するとは。
もしかして僕って相当弱い?
そんなことを考えているうちにブルースライムは再度こちらに突っ込んでくる。
「くそっ……【ファイヤーウォール】!!」
咄嗟にファイヤーウォールを放つ。
ブルースライムの前に炎の壁が出現させる。
ジュワッ
ブルースライムは炎の壁にぶつかり、直後大量の水蒸気が発生した。
ブルースライムを見ると、体の大きさが半分ほどに小さくなった。
(あれ、これってもしかして……)
すぐさまファイヤーボールを三個、空中に出現させる。
「もしかして……火が弱点だったりしてー! いっけぇえええええー!!」
ほぼ火が弱点だと内心思い、表情を輝かせる。
ファイヤーボールが見事決まり、ブルースライムは一瞬で灰になった。ブルースライムの最後は実にあっけなかった。
しかし驚いた。
まさか火系統以外の魔法が効かないとは。
ちょろいとか思ってすいませんでした。
だけどブルースライムの弱点はわかった。
それからはブルースライムを見つけるたびファイヤーボールを撃ち放ち、灰に化していく。
そしてブルースライムを倒して五匹目のとき。
《スキル【液状化】を獲得しました》
『誰かいるのか!?』
周りを見渡してみるが、人の気配は全くしない。
なんだ、今変な声が聞こえた気がした。
いや、よく考えると声が聞こえたというより、頭の中に言葉が浮かび上がってきた感じだ。
なんて言ってた?
スキル……獲得とかだっけ?
ん? スキル?
―――まさか!?
すぐさまボードを開くとそこには新しいスキルがあった。
【スキル】
暴食
幸運
液状化
疾風切り(剣士)
やった! これってブルースライムが持ってたスキルだよね!?
そうだよね!
ということはスキル【暴食】が機能したってことかな。
うんうん、テンプレ通りだ!
やっぱり倒した魔物の持ってるスキルを奪う能力であってたんだな。
しかしスキル【液状化】かー。
どうやって使うんだ、これ?