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大罪持ちの復讐計画  作者: 晴
幼少期編
12/29

異-8 恋のライバル登場

 職業はある特定の分野をこなす事により習得することができる。

 剣の鍛錬をすれば【剣士】、武闘の鍛錬をすれば【武闘家】、農業をすれば【農夫】といった具合だ。

 職業は基本的に生まれた直後は持っていない。 しかし例外もある。

 【勇者】や【神子】といった特別な職業は生まれた時から持っている者もいるらしい。

 勇者なんて大層な職業を持ってなくてよかったー。 必然的に魔王と戦わなくちゃいけないなんて僕には無理っす。


 職業を習得したかどうかは特別な水晶に手をかざすとわかる。

 水晶に習得している職業が表示されるのだ。

 僕も一回試したことがあるが何も表示されなかった。

 まあ僕の場合、水晶がなくてもボードを見ればすぐに自分の職業がわかるんだけどね。


 職業は一つ身につけたら終わりではない、その後の鍛錬により別の職業も習得可能なのである。

 しかし複数職業を身につけたとしても、実際に就ける職業は一つのみなのだ。

 もし習得した別の職業に転職したい場合は教会に行く必要がある。そこにいる神官により転職をしてもらう。

 まるで某RPGゲームのダー○神殿のような感じだ。


 流れとしては水晶により習得した職業を確認して、教会で好きな職業に転職するといった感じだろう。


 僕はボードにより【剣士】の職業を習得したことを確認したが、あえて母さん達に知ってもらうため、母さん達の前で水晶を使う。


 そして今、僕は水晶に手をかざす。

 すると水晶は虹色の輝きを放つ。

 そして水晶の中心には【剣士 LV.1】という文字が浮かび上がっていた。


『嘘でしょ……』

『これほどの才能を持っていたとは。 もしかしたら魔気も……』


 母さんはあんぐりと口を開けて呟いた。

 冷静沈着な魔法使いのヒュミルさんも驚いているようだ。

 周りの団員の人達も驚きをあらわにしている。

 それほど僕の習得スピードは早かったらしい。


 母さん曰く、今まででの最高記録は十歳。

 それでも鍛錬を開始して四年後のことだ。

 僕はというと、現在六歳で鍛錬を始めてまだ二ヶ月ちょっと。 これは異例の速さというほかないだろう。

 僕もなぜこんなに早く習得できたのかはわからない。

 もしかしてスキル【幸運】の恩恵?


『まさかもう剣士の職業を習得するなんてな……はははは……』

『顔も負けて、剣士としての才能も負ける。 哀れだねー』

『そうだな。 オレなんて哀れなゴブリンキングだな……はははは…』


 リムさん。 いつでもティンバーさんをディスる姿勢、尊敬っす!!

 そしてティンバーさんは、自我が崩壊気味だ。 そんなにショックだったのか。

 ……大丈夫かな。


 僕の横にいる母さんは、そんなティンバーさんを見て少し居たたまれない表情を浮かべている。

 そしてティンバーさんとリムさんのやりとりを見て笑う団員達。

 今日も山賊団は賑やかだった。


 僕の職業習得の発表会は終わり、本日の鍛錬が開始された。

 未だに自我が崩壊しているティンバーさんは放っておくことになった。


 僕は以前よりも増えた闘気のコントロールと併せて実戦形式の稽古を行っている。

 相手はリムさん。 武闘家の見た目ロリっ娘だ。

 武闘家のリムさんは闘気量が非常に多い。 その闘気を自在に拳や脚に集中させる。

 拳に闘気を集中させれば、拳で敵を砕く。

 脚に闘気を集中させれば、舞うような動きであらゆる攻撃をかわす。

 拳と蹴りを使いこなすリムさんは接近戦にめっぽう強い。


 素早く動き、重い打撃を打ち込む彼女は、剣を持った僕に一切ひるむことなく突っ込んでくる。

 僕は防戦一方になり、一方的にやられてしまった。


「やっぱりリムさんには全く敵わないや」

『いやいや、ヴァンちゃんの成長速度は半端ないよー。 きっとすぐに追い越されちゃうんじゃないかなー』


 リムさんに悪かったところを指導してもらい、再度稽古を行う。

 この繰り返しでお互いに経験を積むのだ。




−−−




 午前の鍛錬が終わった。


 すると一人の少年がこちらに向けて歩いてくる。

 年齢は僕よりも年上だろうか。

 短く切った金色の髪、身長は僕よりも十センチ以上大きい百六十センチほどだ。

 手にはショートソードを持っており、挑戦的に見える眼差しを僕に向けている。


 少年の姿がはっきり見えた。

 確か名前はラウル。 年齢は十一歳。

 彼の話を聞いたことがある。

 彼は僕が現れるまで職業習得の最短記録を持っていた。

 非常に努力家で毎日村から洞窟まで通っている少年だ。

 この山賊団の中で彼は僕の次に年齢が低い。


 思うところがあった。

 僕がフレイヤといるときに、しばしば遠くから冷たい視線を向けていたからだ。


 そんな彼が話しかけてきた。

 僕は出来る限り、凛々しい顔を心がけ、ラウルの言葉に耳を傾ける。


『お前最近フレイヤとよく一緒にいるらしいな』

「……そうだけど、それがなにか?」


 いきなりフレイヤの話題を出してきた彼に、幾ばくか苛立ちを覚えた。


『彼女は俺の女だ。 手を出すんじゃねぇ!』

「……はい?」


 何を言っているのか理解できず、聞き直してしまった。


『お前は馬鹿なのか? もう一度行ってやる。 フレイヤは俺の女だから彼女に近寄るな。 わかったな』


 お前の方こそ馬鹿なのか。

 いきなりそんなこと言われて、「はい、わかりました」とでもいうと思っているのか。


 二人の間に沈黙が流れる。

 心地よくない空気だ。

 リムさんとティンバーさんは黙っている。


 僕は嘘偽りなく己をぶつけることにした。


「僕は彼女に惚れている。 彼女を大事に思っている。」


 一呼吸置いて、僕は発言を続ける。


「お前に彼女を渡す気は一切ない」


 言い切ってやった。


 視線が混じり合う。お互いに逸らそうとしない。

 ラウルは殺気をむき出しにしている。


『オレと勝負しろ!!』


 意地悪そうな笑みを浮かべながら僕に問うてきた。


 もういい、わかった。

 こいつは話じゃ拉致があかない奴だ。


「……わかった。 その勝負受けてやる。 その代わり負けた方が彼女から手を引くということでいいな」

『もちろんそれでいいだろう』


 どう答えるか迷ったか、勝負を受けることにした。

 彼は僕の恋敵だ。

 この勝負を受けなかったら彼女に悪口を言われると思った。

 それに舐められたら終わりだ。 ここで引くわけにはいかない。


 僕の横では母さん達が、マジで、という表情をしている。

 すまん。

 マジだ。


 そういうわけで僕は五歳年上のラウルと戦うことになった。

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