初めての知り合い
『チュン』
『チュン』
『チュン』
『ピィ』
俺は鳥の鳴き声が聞こえて目が覚めた。
何故か俺は何処かの部屋の清潔感漂うベットの上で眠っていたようだ。
俺は森の中にいたはずだよな?なんでこんなところで寝てるんだ?
俺がそんなふうに混乱していると部屋の扉が開いて赤髪赤瞳のイケメンが入って来た。
クソ!イケメン滅べ!
じゃなくて、
こいつは誰だ?こいつが俺をここに連れてきたのか?
そんなふうに俺が思っていると男が心配気に話しかけてきた。
「やっと目が覚めたんだな。良かった。体調は大丈夫か?」
「え?体調?」
「君は5日間も眠っていたんだ。医者はおそらく疲れているのだろうと言っていたが。」
どうやらあれから5日も経っているらしい。
ずっと寝ていたってことはこいつが俺の世話をしたのか?一応お礼は言ったほうが良いよな。
「お世話してくださったんですね。ありがとうございました。」
「ああ、それは別にかまわない。それよりお前、名前は何という?俺はジーン・アーカーだ。」
ジーン・アーカー?外人みたいな名前だな。俺もそんなふうに名乗ったほうがいいのか?蓮司だからレンジか?なんか電子レンジみたいで嫌だな。だったらレーンジ?いや、レンージ?どっちもおかしいな。やっぱレンにしよう。ていうことはレン・サガラか?うん、これがいいな。
「えっと、名乗らずにすみません。俺はレン・サガラと言います。」
「レン・サガラ、か。聞いたことないな。苗字があるってことはレンは貴族か?」
どうやらこの国には貴族がいるらしい。しかも苗字持ちは貴族だけなんだと。俺はなんと答えればいいんだ?まぁ、下手に誤魔化すよりも正直に言ったほうがいいだろうな。
「俺は、貴族ではありません。ジーンさんこそ苗字持ちって事は貴族ですよね?」
「そうだ、俺は貴族だ。まぁ、貴族って言っても一番下の男爵位だがな。それよりさ、レン、お前はどこから来たんだ?苗字があるのに貴族じゃないってこともおかしいし。しかも子供があんな山にいるなんて。」
「あの、子供が山にいるのはおかしいんですか?」
「いや、普通の山ならおかしくはない。だがお前のいた山は闇の森と言ってな、迷い込んだら誰も出てくることはできないところなんだ。」
「え?でもジーンさんは」
「奥に行けばって話だ。だからお前も無事に出てこれてるだろ?」
「そう、ですね。」
えーでも俺森の奥に行ったけどいつの間にか出て来てたぞ。
「で、さっきの質問の続きだが貴族じゃないと言うのは本当か?苗字があるのに?」
「はい、本当です。俺は貴族ではありません。」
俺は嘘を言っても仕方がないと思い、事実だけを話すことにした。
「じゃあ、爵位を剥奪された貴族の家かなにかか?」
「いいえ、そういうのでもありません。俺はただの平民です。それにおそらく孤児と言うものだと思います。親がもういないので。」
「孤児……親………いない………だったら………いい……」
ジーンは何か一人でブツブツ言っているが俺にはよく聞こえない。
「あの、ジーンさんどうかされましたか?」
「はっ、いや、なんでもないよ。辛いことを思い出させてすまないがじゃあ、レンは身寄りがないのか?」
「はい、そういうことになりますね。」
何故か俺が辛いと思っていると言うことになってる。まぁ、確かに両親に会えないのは悲しいがいつか日本に帰る方法を見つけて帰るつもりだから別に気にしてないんだがな。
「では、俺と一緒に暮らさないか?行くところがないのならな。」
「えっ?あ、はい。。」
俺が考え混んでる間に話が勝手に進んでいたようだ。一人で勝手に進めるなよ!つい返事しちゃったじゃんか!
それにしても俺は住むところもましては食べるものも何もないからありがたい申し出だが、こんな見ず知らずの孤児と一緒に暮らそうとか大丈夫か?ジーンは。物取りとかだったらどうすんだ?まぁ貴族らしいから取られても大丈夫なのか?
…ていうか俺がこんなこと考えても仕方ないな。ジーンの問題だし。
「じゃあそういうことで今日はもう寝な。疲れてるだろ?お休み。」
「は、はい。お休みなさい。」
またしても考え込んでいる間に話が進んでいたようだが確かに疲れていたから俺はその申し出にありがたく頷いた。
ジーンは俺の返事に満足したのか「じゃあまた明日な。」と声をかけてそのまま部屋を出ていった。