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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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ヤクシ3

  

 山頂にある神様の家は千差万別だ。シロは地下のスペースが大きかったし、イチフサは日本家屋だったし、サクラはホームレスだったし。ならば、このヤクシの家はどんな感じになるのだろうか。多量の期待と一抹の不安を抱えて、僕はその中に足を踏み入れた。



 「わあ。」

ユウキの口から漏れ出たのは、ため息のような感嘆。僕も同じ感想を持った。


 頭上に垂れ下がる燭台が照らす空間は、広かった。上を見上げて3mとまでは行かないまでも僕の二倍くらいの高さを確認する。頑丈で堅牢だけど、雄大で、おおらかだ。そして広い、木のベンチ。見るようによっては縁側だが、使われている木材が大きく丸いため全くの別物にしか見えなかった。そう。特筆すべきは木である。周りを石で覆っておきながら、家の構えはまるでコテージ。おしゃれな山荘であった。


「はいはいっと。上がっていいよー。」

軽やかにその上の木床に飛び乗るヤクシ。


ふわっと髪が後追いするように動く。決して長くはないというのに、目が離せない。




急にヤクシは振り向いて、ニンマリ笑った。

「あんまり、目移りするもんじゃないぞー。結局、長く一緒にいれる人が一番いいんだから。」


こちらの心理を読んだかのような発言。⋯⋯ そうだった。神様だった。でも、何だろう。他の神様と比べて余裕があるように感じる。


「気のせい気のせい。私なんてほんのペーペーだよ。」

「⋯⋯ お主が下にいるとしたら、やりにくいことこの上ないわい。」

「やだなあ、シロ。謙遜はしておくものじゃん。」

テヘッと舌を出して表情が動く。



「⋯⋯ こんな人だったのね。」

「遠くから見てるだけでしたから気づきませんでした。」


続いて上に上がりながらサクラとイチフサは困惑気味だ。あれっ? タテに関して言えば二人とも性格を把握していた気がするけど。


「あの人は、面倒見がいいから。困っているとすぐに声をかけてくれるのよ。」

「私も助けてもらいました。」

「へえ、あの人がねえ。」

正直怖いイメージしかないんだが。


「なになに? 何のお話ー?」

きゅきゅっとするするこちらに近づいて、ヤクシは興味を示した。



まあ、言って困るということもないしと言うわけで、二日前のエピソードを話す。まだ二日と言うべきかもう二日と言うべきか。変な感慨を抑えきれない。主に話数と字数的な意味で。三郡の頃を思い出すなあ。



「ふうん。あのタテがねえ。信じられないなあ。」

後ろの感慨については聞こえなかったのかそれとも聞こえててスルーしているのかわからないが、ヤクシの漏らした感想はそれだけだった。⋯⋯ いや、実際僕も何でああなったのかはわからないよ。


「ま、特別機嫌が悪かったんでしょ。気にしない気にしない。」


これがヤクシの結論というか処方箋らしい。まあ、僕も、次に会うときにはまっさらな気持ちで向き合うことにしよう。



「それがいいよ。うん。それがいい。」

ヤクシのお墨付きも得られたし、これで大丈夫だろう。次会ったら、仲良くなりたい。




「さあさあ、何もないけど、ゆっくりして行ってくれたまえ。」

意識した威厳ありあり風の言葉をヤクシは発する。わざとだというのが見え見えで、可笑しい。何気ない言葉の端々にヤクシらしさが現れているようだ。



「何もないとは言うけれど、私はこのクッションがあるだけでだいぶ幸せー。」

ユウキは手近なクッションに頭を埋めて、背を猫のように伸ばす。




試しに腰を下ろしてみると、なるほど良い手触りと反発だ。硬すぎず柔らかすぎず。ちょうど良いとはまさにこのこと。






「ふっふっふ。まあ、素材にこだわってるからね。そう。私手ずから育てた羊の毛を刈り取ってだね。」


神様が育てた羊⋯⋯ なんか、毛が金色に輝いていそうだな。


「なるほど、お主に世話をしてもらえるのであれば、こんな材質になるのも頷けるのう。さすがは健康と回復を司る神じゃ。」

同じように気持ち良さそうにクッションに体を預けたシロはそう言って感心した。




「えっ。そんな需要の高い。」

ユウキのつぶやきに僕は同意する。健康祈願は僕らの世界でも最優先事項の一つであったと言える。


「まあ、そうだね。私のところまでたどり着いた人間が望むならほとんどの病気は治してみせるよ。まあ、さすがに遠すぎるのか誰もこないんだけどね。」


可笑しそうにヤクシはくくっと笑った。


「ヤクシはきてほしいの?」

僕はその姿に疑問を感じて尋ねた。


「一人や二人なら別にいいさ。ただ、私の山が騒がしくなって、行列が絶えないと言った事態は願い下げだね。だから私は、この場所でよかったのだよ。」



心の底からそう思っている様子のヤクシ。まあ、語尾には彼女特有の茶目っ気も混じっていたので、どこまで本気かはわからないけれども。


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