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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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登山2

おりゃ。久しぶりの日常パート

 その日は結局もう少し高度を上げて、丘の上に家を建てた。三匹の子豚並みの手軽さである。あの話でもなぜだか子豚たちが家を建てたのって丘の上だったという記憶があるし、やはり丘の上の家は一種の様式美なのだろう。⋯⋯ よく考えたら童話にそんな細かい風景描写なんてない気もするし、ただの僕が見た本の絵師さんの好みだっただけという可能性も否定できないけど。


 ちなみにサクラとシロの部屋は同じにしておいた。どちらも嫌がったんだけど、サクラが自然発火する事態を考えて対応策を講じた結果だ。うなされたサクラが燃えているのを見つけたときの僕の驚きをわかってほしい。すでに前科数犯。安全には最大限の配慮をしなくてはならないのだ。流石に家屋全焼とかした日には浮かび上がれない。


その点、イチフサは大人しいもので、安心して一部屋を預けられる。同じ神だというのにこの差は何なのだろうか。




ユウキがご飯を作ってくれるので、僕はいつものごとく外に出て、暮れゆく景色をぼうっと眺めていた。上空を早い風に流されて小さな雲が凄まじいスピードで流れていく。行く雲流れる水とか言うけど、本気を出した雲のスピードは地上の者にとっては早すぎる。気ままな旅ぐらしの投影などと習った気もするけど、流石にもう少しのんびり行きたい。


横に誰かが座った気がしたけれど、僕は敢えてそちらを向かなかった。シロやサクラなら話しかけてくるだろうし、ユウキは料理中だ。それならイチフサに決まっている。

僕らは並んで、ぼうっとしていた。どちらとも疲れていて、のんびりとしたい心地だったからかもしれない。

「剣さん。」

だから彼女がそう口を開いた時も僕はとりたてて意識することは無かった。

「私、ここまであなた達と一緒に旅をすることが出来て良かったです。」

その声は少し平坦で、だからこそ万感の思いが込められているような気がした。

「うん。僕も全く同じ気持ち。」

僕はシンプルにそう返した。それ以上の言葉は不要だと思った。どちらも顔を合わせることはなかったけれどそのまま二人で並んで山を眺めて時を過ごした。





「はい、はーい。ご飯できたよー!」


 ユウキの宣言にみんな食堂、じゃなくてダイニングに集まる。食堂は、さすがにもう少し広い部屋を指すだろう。


「今日は寒かったし、あったかなスープを作ってみましたー。」

「私が焼いたパンもあるわよ。」

「焦げておろうが。全く、わしがおらんじゃったらどんなことになっておったことか。」

 なんか疎外感。⋯⋯ 火力に関しては神様に頼ってるから仕方のない部分はあるんだけど。僕だけ協力してなかったみたいじゃないか。⋯⋯ ひたすらに山を眺めていた僕が言えることではないですわかってます。そんな僕からイチフサは目をそらす。いや、正直言って君も同罪だよね。一緒にゆっくりしてたよね!


 しかし、てっきりシロは料理できない系なのかと思ってたけど、火加減を扱うことに関しては一流みたいだ。⋯⋯ サクラは全てダメそうだけど。


「そんなことないわよ。私、料理は結構うまいのよ。」

「でも、焦がしたんだろ?」

「それはそうだけど⋯⋯ 。」

「ほんとだよ。サクラはシロよりはるかに才能があるあるよ。」

「ユウキ⋯⋯ 。」


 サクラは感動に目を潤ませる。

 ユウキの言うことだ。本当なんだろうけど。⋯⋯ でも、やっぱり信じられないな。このところ構わず爆撃する子が料理上手いなんて。翔鶴姉はうまそうだけど、妹は下手そうだもんな。⋯⋯ 料理ボイスないから偏見だけど。



「信じてないわね。なら、明日は私が作ってあげるわ。」

「心配だ。」

「私がついてるし、大丈夫だよ。」




「そうじゃのう。ユウキばかりに負担をかけるのも悪いし、サクラに任せてみようではないか。」

「シロはパンを焼くとき以外は役に立たないけどね。」

「ぐはぁ。」

 シロは胸を押さえた。傷を抉られたようだ。


「それはそれとして、早く食べようよ。冷めちゃうよ。」

 スルーして、ユウキは僕らを促す。美味しそうな匂いが漂っていて、早く食べたい。


「わしのことはどうなるんじゃ。」

「でも、ユウキが言ってたのって料理に関して言えば真実だよね。」


「お主に言われたくはないんじゃがのう、剣。お主だって何も出来ぬではないか。」

「出来ますー。ラーメンと炊飯出来ますー。」

「こやつ、いつかぶっ殺す」

「やめろって言ってるでしょ。飯抜きにするよ!」

 滅多に怒らないユウキの怒気に僕とシロの背筋は思わずのびた。


「はい。」

「いただきます。」

 借りてきた猫のように大人しくなる僕ら。

「すごいわね、ユウキ。」

「本当に」

 サクラとイチフサは感嘆したように言った。



「まあ、この人たちがこうなるのは割といつものことではあるからね。慣れないとやってけないよ。」


 ユウキは肩にかかった髪をひらりと払った。


「やだ、ユウキ、かっこいい。」

 二人は憧れの目線を向ける。


 何なのだろうか、そんなに僕らを抑えるのは大変なんだろうか。口の中に食べ物を含んで租借しながら僕はちょっと悲しくなった。




ア「ついに具体的な料理を描写する気もなくなったか⋯⋯ 。」

石「これは料理本ではありません。」

ア「まあ、それはそうなんだけどね。でも、具体的な料理描写しまくってたのは君なんだけど⋯⋯ 。」

石「気が向いたら付け足します。」

ア「自由か!」

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