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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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桜恋

文体が迷走しているのはわかってるんです。

 

 最近あいつのこと気になる。いや、もともと興味深いし面白い存在だとは思っていたけど、今の気持ちには、それ以上の何かまでもが紛れ込んでいるようだ。経験したことのない、苦しくて、切なくて、甘酸っぱい気持ち。なんと名前をつけたらいいのだろう。












 最近なんだかおかしい。なんというか、僕の地位というかそんなものが不当に貶められているようなそんな気持ちがする。ただの被害妄想だとは思うけれど、不安だ。
















 最近、面白いことが増えた。迷惑なだけかと思っておったが、なかなかどうしてあやつにしては面白い。





















 最近ねー。うん。あの子が剣を見る目が変わった気がする。なんでだろうか。いつものごとく剣は剣で勝手に滑り倒しているだけのはずなんだけど。
















 最近⋯⋯ ? 何か変化ありましたか?



 うん。君はそのままでいて。




















 と、いうわけで一行はなぜだか妙に気まずそうにする人を抱えながらも、旅路だけは順調にほとんど尾根の上を踏破していた。ユウキ以外自然と山の方に足が向いちゃう人種なので仕方がないと言える。


 そのユウキも楽しそうだったので問題はないだろう。全くもって物好きな連中だ。


 度々ユウキと剣は戦った。その両者の手には当然のような顔をしてイチフサとサクラが握られていた。なんでも、今までやったことのない戦いに心が踊っているんだとか。二人ともいざとなったら肌を傷つけない材質に変わることができるというので、剣とユウキは渡りに船とでも言いたげに二人を酷使した。この前の盗賊に限らず、別の盗賊やら野生のクマやらと対面した時はすぐさま二人の手元に収まって殲滅した。戦力的に穴であったはずの人間二人が神にも等しい力を手に入れたのだ。死角などどこにも存在しなかった。








 サクラはやっぱり自分の感情に戸惑っていた。確かに彼女は今までずっと一人だった。大概のことは自分でできたし、それ以上のことなど想像することもしてこなかった。でも、今はサクラにも大切な人ができた。ともに戦う戦友というには少しばかり頼りなくて、でもやっぱり一緒に戦ってくれる人で、サクラが守らなきゃと思う人。なんでもないような旅路だって、彼と一緒に行く道はただひたすらに輝いていた。いつからか、サクラのツンデレ風味の言葉には本物の照れ隠しが混じり始めた。それに気づくことは誰も、サクラでさえもなかったけれど、確かにそれはツンデレ風味の何かでなくて本物のツンデレであった。




 何よ何よ何よ。なんでこんなになってるの。なんでこんなにドキドキしてるの。あいつらが、あいつがいるから噴火で発散することもできないし。まったくもう。なんてことよ。どうすればいいのよ。八方塞がりじゃない。



「サクラ⋯⋯ ? どうしたんだ?」

「どうしたこうしたもないわよ!それよりやりましょう。やるんでしょ!」

「ぼうっとしていたのはサクラの方じゃないか。」

「っうるさい。」


 自分でも理不尽なのはわかってる。でもドキドキして思考能力が鈍ったようで、どうしても、そんな反応をしてしまう。






 剣が私を振り下ろす。彼の力強い手が私を掴んで操る。幾度となく繰り返される戦い。剣も毎回善戦はするのだが、相手の技量が神がかっていてどうしても勝利というわけにはいかない。私も悔しい。勝ちたい。思いは高まり炎が吹き上がり舞い、高く高く天へ登り空を焦がす。でもユウキの剣戟はそれさえもかき消すほどに苛烈で素早い。結局、その日もまた、私たちは負けた。









 

  その日の夕暮れ。いつものように一人家の外でぼんやりと山景を眺める剣の姿があった。ぼうっとしているように何も考えていないように見える剣だが、この時ばかりは頭の中は高速回転し、明日ゆくべき道程を天候を自力で予測するなどして組み立てていることをサクラは知っていた。その思考を邪魔しないように、離れた位置に静かに腰を下ろす。なんだか無性に彼の近くにいたい気分だった。


  剣の思考が雑然と舞い始めたのを見計らってサクラは剣のそばへとにじり寄る。毎度のことながら彼の思考は可笑しい。聞いているだけで笑い出したくなってしまう。でも、それは表層的なこと。深層には強くて決して崩れない思いがあるって私は知っている。正直、羨ましい。でも、彼はただの人間でそのことを思い出すと諦めがつく。


「どうしたんだ。サクラ?」

 どうしたのと迷って強い口調を選択した心の動きでさえ例えようもなく愛おしい。決して自信満々ではなくて、それでも強くあろうとしてみせる。その思いは尊いものだと、いつからか知った。絶えず動く心の儚さと美しさを知って、好きになった。永遠を生きるサクラ。彼女は神の中では例外的に感情的な人だった。人に近いと言っても悪くはない。でも、発露する手段は自分を動かすこと、すなわち山を鳴動させ、熱い飛沫を吹き出すこと。ただそれだけに限定されてしまっていた。ぶつける相手なんていなかった。でも、剣にならばぶつけられる。頼りないし、吹けば殺してしまえそうだけれど、でもなんだか変な感じの生き汚なさを発揮してくれそうだ。



「別に。ただなんとなく気が向いただけよ。」

 そんなことを素っ気なく言ってしまう。自分の気持ちに素直になることができない。本当はなんとなくではなくて剣の姿を確認してから近づいて行ったことなんて言えるわけがない。

「そっか。」

 剣は短く答えて気にしない構えを見せた。そうなったらそうなったで面白くないのがサクラという面倒くさい娘だ。そのまま寄って、剣の腕を取る。その手を自分の膝の上に安置させ、サクラは身を寄せた。少しばかり赤くなっている顔は照れの表れ。絶対に剣の方を向かぬようにサクラはただ正面を見つめた。

「あのー。サクラさん?」

 剣の訝る気持ちがよく出ている問いかけであった。ただ、心の声が素直に嬉しがっているのは全く誤魔化せていなかったが。こういう素直なところもいいなってサクラはいつのまにか剣の寛容が移ったかのようにぽうっとしていた。

「しばらくこのまま。」

 ゆっくりと放たれた音は不思議と風に乗って向こうの山々まで伝わるかと思えた。その声音にテンパリと緊張が消えていったようで剣もはいと頷いた。


「綺麗ね。」

「うん。」



 風流とは縁遠い二人。こうしてただ景色を眺める時間は山さえ見えればいい派の剣はともかくサクラは普段ならこうすることになんの意味も見出せなかっただろう。でも、今は隣に剣がいる。

 そのことだけで無限にこの時を過ごしていても許せるしむしろ幸せであるような気がした。


「あっ、ずるいよ。サクラ。」

 ユウキがその現場を見つけた。考えるよりも先に声が出たと言ってしまいたいほど彼女は焦っていた。


「剣は渡さないからね。」

 ユウキは状況を正しく把握していた。威嚇するようにサクラの方を睨む。


 剣の方は鈍感系主人公を地でいっているため、ここにきてもなお気づいてはいないのだが。



「今日のところは、これくらいにしてあげる。」

 サクラはとってつけたように言って、剣からつっと離れた。サクラとしてもこの二人の仲を邪魔する気はもともとない。と多く離れてこの地まで来た剣の思い。それに応えようとするユウキの覚悟は、心に浮かぶことはなくとも、これまでの道筋で十二分にわからされたことだ。割って入る余地は、あるとしても畳一畳ほどだろう。4畳半だったとしても4分の1以下。でも、それでも、サクラは剣のことが好きであった。そこに優劣など存在しないと彼女は信じている。




 旅は進む。それぞれの思惑と試みと関係性を変えながら。道は続く。この世界の果てへ。




ア「三人称下手だね。」

石「直接的すぎる。」

オ「ところで、私の性格もうちょっと練って欲しいんだけど。」

石「いや、敵役で少ししか出てこない人にリソースが裂けるとは思わないで。」

オ「でも、やりにくいでしょう。戦闘描写だって、性格によって変わるところが大きいんだから」

ア「なるほどこりゃ収拾がつかなくなるわけだ。」

石「あとがきは、登場人物が出番を求めてやってくるところじゃないんですよ! なんでみんな集まるかなあ」

ア「どう考えても誕生日会と、本編が変わってしまった実績があるのが悪い。」

石「だって、思ってた以上に桜にたどり着くまでが長かったんだもの」

ア「はいはい。言い訳は向こうでしてね。」

石「やっぱり扱いぞんざいになってるよね!」

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