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異世界山行  作者: 石化
第4章:神闘会

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盗賊

この章はちゃんとやれたら一番長くなる予定です。⋯⋯ 五万字があとがきの影響で全没を食らってまだ復帰できていない章でもあるので気は重いんですけれど。

 イチフサとサクラと共に移動を始めてかなりの時がすぎた。二人も増えた旅路はわりかし大変ではあったけど、神というチートが二人増えたことを考えると、イーブンな気がする。事あるごとにシロと対立するサクラに、シロの味方をして話を大きくするイチフサ。そんな騒がしくも楽しい道中が続く旅路であった。


 シロが僕らに注意を促したのは、割と平らな道が続く、行動の途中であった。

「気をつけるんじゃ。囲まれておる。」

 ざっ。一糸乱れぬ動きでこちらの周りに姿を現したのは盗賊にしては身なりの綺麗な一団であった。金回りがいいのか、それとも本来は盗賊ではないのか。その二択だろう。まあ、神3人という過剰戦力を相手に向かってきたのは運が悪かったなというしかない。どらまたにでも会ったと思って諦めましょう。身ぐるみはがしていかないだけマシだから。


 シロが護身用に剣を二本生成して、僕らに渡してくれた。まあ、一面はサクラが焼き払い、一面はシロが凍りつかせ、一面はイチフサが無力化することに成功したため、それを振るう機会はあまりなかったのだけれど。でも、少ないとはいえ少しくらいはその熾烈を極めた攻撃を切り抜けることのできた類い稀な運の持ち主がいたので、ユウキの剣技の餌食となってもらった。⋯⋯ 僕もちゃんと足止め程度の剣戟の交わし合いならしたから。他全員やられておきながら、僕と互角の戦いを繰り広げるしかなかった相手の人はご愁傷様です。倒し終えた他の4人が、暖かく見守っていたのもさらに絶望感を煽るだろう。もういっそ楽になってみてもええんやで。まあ、楽に倒してやるほどの実力のない僕が考えていいことではない気もする。


 結局僕がなんとか敵を倒すことができたのは他のみんなに遅れること十分後のことだった。謎の拍手が巻き起こったが、十分戦い続けるという偉業を成し遂げた僕にはそれを気にするような余裕を生む体力は残されていなかった。


 剣道の試合は中学時代で最長三分。同本で延長戦に突入することになるが、それでも10分間というのは想像を絶するほどに長い。僕が息を切らしてしまうのは仕方のないことだ。


 死屍累々といった有様の道。その有象無象どもを一瞬で意識の埒外に置いたようで、イチフサは、僕たちの手にあるシロの作った剣を指差して言葉を作った。

「シロさん! 前見たときも思いましたけれど、それ、すごいですね!」

 シロが自分の力を分かち、僕らの護身用に分け与えた2振りの青い名刀だ。

「べっ、別にすごくないわよ!」

 サクラも口ではそう言いながらもチラチラとこちらを見てくる。羨ましそうである。

「なら、サクラとイチフサもやってみたらどう?」

 僕は何も考えずにそう提案した。

「なるほど。」

 閃きを得たように頷くイチフサ。

「私の実力見せてあげるわ。」

 自信満々で言うサクラ。

 何はともあれ、サクラに関しては失敗フラグが立ってる気がするけど、どうなんだろうか。

 苦笑を浮かべるシロの監修のもと刀作りはスタートした。

 無論周りに放って置かれている盗賊たちにはお構いなくだ。こんな雑魚一人や二人逃げたところでどうにでもなると思っているのだろう。僕にとっては今まで戦った中でも最強の一角に数えてもいいほどの難敵だったけれど。

 神様と、ついでにユウキの戦闘力も意味のわからないほどの領域に達しているからな。僕は凡人、僕だけ凡人。パーティー最弱。⋯⋯ 言ってると辛くなってきた。



 さて、力を刀に変化させると言っていた二人だったが、シロの余裕の作成とはえらい違いで、かなり努力している形跡は認められるし、二人とも息を荒げているのだが、少しも体から生まれ出る兆候が現れない。



「もっとこう、必死になるのじゃ。」


 シロのアドバイスも的を射ないもの。こんなので二人ができるようになる可能性は無に近い気がする。期待せずに見守っておこう。




 しかし、さすがは神、曲がりなりにも神といったところだろうか。いくらもしないうちに、二人の全身が光に包まれた。目も開けていられないほどの眩しさ。その光の爆発の後、二人がいた場所には2振りの太刀が浮かんでいた。宙に。これが、神剣。あれっ? サクラとイチフサは? 姿が見えない。彼女たちは忽然とこの場から消え去っていた。


「全身のすべての力を刀に凝縮するバカが二人もおったとは。その姿でも動けるのじゃろうか。」

 シロは困惑を隠せていない。


「えっあれ、イチフサとサクラなの?」

「ええっ」

 僕らは二人とも驚き声を上げてしまった。


「シロってすごいんだな。」

 いとも簡単に自分の力を分離して見せていたけど、よく考えたら、腕一本引きちぎるのと同じようなことなのではないのだろうか。常人には無理だ。


「わしは天才じゃからのう。」

「そーだね。」

 僕は軽く同意してみる。まあ、ふたりの同格っぽい神にできていないことをいとも簡単にやってみせているところを考えると、その通りだし、この頃はこうして事あるごとに自慢してくるシロが可愛いと思えるようになってしまった。


「そう開き直られると逆に照れるのう。」

 白い頬に少しばかりの赤みをさしてシロは顔に手をやった。なるほど、学習した。褒めるといいことありそうだ。

「⋯⋯ 割と真理な気がするわい。」

 真顔に戻ってシロは言った。綻ぶのは一瞬。それ以外は完璧。これがシロ。⋯⋯ あれ? 飯作れなかったりお寝坊さんだったりするけど完璧って⋯⋯ 。まあ、欠点は少しくらいあってもいいから。


 しかし、見事な刀だ。近寄って見て、僕はそんな感想を得た。シロの刀よりも放つ雰囲気は上だ。

「そりゃあ、わしのは一部じゃが、これらは全部じゃからのう。」

 あい変わらず解説はデフォで付いてきて非常に助かる。便利なことこの上ない。


 僕は、その見事さに心を奪われた。自然と手が出る。桜色の刀身をもつ、全てを破壊する羅刹のように荒々しくも美しい刀へ。握りしめる。大きさはあつらえたようにぴったりでよく手に馴染んだ。


 ユウキは僕に応ずるように、イチフサの変化した刀を左手で掴んだ。白の刀身に黒の刃をもつこれまた黒いつかのまっすぐな直刀。すらっと伸びたそれは切れ味を保証しているかのように艶を塗ったかのごとく鈍く光っていた。純粋一途なイチフサの人柄を偲ぶことができる。そんないい刀だ。



「ちょっと、何勝手に私を握っているのよ。」

 握った刀からサクラの思念が流れ込んできた。どうやら、直接接触ならば喋れなくても、思考のやりとりができるようだ。

「あんまりにもさ、君(刀)が綺麗だったから。」

「そっ、そう。なら仕方ないわね。」

 サクラの照れたような声が脳内に響く。ちょろいんだよなー。可愛いけど。


 あちらでは、ユウキがイチフサとの対話を終えたようだった。剣に語りかけていたユウキが顔を上げてこちらを見た。


「剣、わかってるよね。私が何考えているか。」

 ユウキの交戦的な目を見れば嫌でも察するよ。

「わかったよ。」

 ユウキ立っての希望だし、僕もサクラを試したいからな。


「えっ、ちょっと。何やるのよ、あなた。」

 サクラの焦った声を無視するように、僕とユウキは対峙する。

 鯉口を切るように、刀を横に振る。いい手応えだ。空を切る刃に刀身の重みがちょうどいい。



「や、怪我するわよ。自分で言うのもなんだけど、私多分すっごく切れるわよ。⋯⋯ あと、イチフサのも私を両断しそうな勢いで刀身光らせてるんだけど。下手したら私も切られそうなんだけど!」

「それは、自分に自信を持とうよ。」

「ああっ、もういいわよ。やってやるわよ。かかってらっしゃい。」

 やけくそになったようにサクラは叫んだ。

「いい覚悟だ。」

「あんたは何様なのよー!」


 よし、集中しようかね。

 中段にお互いに構え、向き合う。ユウキの持つイチフサの黒の切っ先がこちらの喉をさして、僕はそこを震わせた。自分を殺せる武器に対する本能的な恐怖。それを押し殺し、打ちかかる。この時点で、気持ちの上で負けているんだよな。どこか冷静な僕の一部がそんな判断を下していた。僕が上部から一条の帯のように打ち下ろした一撃は、ユウキの刀により合わせられ、すりあげられた。予期せざる力により無力に浮く僕の刀。それをユウキは軽く払う。いとも簡単に僕の手中を離れかける桜刀。冷静だった部分の総動員により、気力だけでそれを掴む。これで、最初からの戦闘終了という最高にカッコ悪い状況はなんとか避けられた。が、そこで開いた体にユウキの一撃が迫る。戻すべき刀は間に合わない。それほどの速度だ。くっ、この程度で終わりか。結局早かったな。でも、最後まで足掻くことはやめない。僕はユウキめがけてサクラを振り下ろした。相打ち覚悟の素人丸出しの剣戟。どちらも死ぬ可能性のあるその体勢を止めたのは、僕の持つ刀から急に吹き出した炎であった。刀身が炎を纏い、僕には不可能な速度でユウキの一撃を払う。

「なんなのそれ?!」

「サクラ!」

「わかんないわよ! あんたを守らなきゃって思ったら急に⋯⋯ 。」

「守らなきゃって思ってくれたことは嬉しいんだけど、ちょっと暑いかな。」

「消すわよ。消せばいいんでしょ!」

 一瞬で燃え盛っていた炎は無へと消えていった。


「サクラが操れるんだ。」

「当たり前でしょ。私は神様なのよ!」

 威張った思念が届く。

「羨ましいな。イチフサ、私たちもできない?」

 ユウキは自分の刀に語りかけた。だから側から見ると危ない人なんだって。


「えっと、派手なことはできないけど、剣を加速させることはできるみたい。」


 試しにユウキが振ってみた剣は確かにただでさえ神速のユウキの太刀筋が見えなくなるほどに加速していた。⋯⋯ ユウキと一緒だったらめっちゃ強いじゃんその能力。ぶっちゃけ反則だ。


「私だって、こんなこともできるし。」

 対抗意識を燃やしたのか、サクラは別のことをし始めた。

 自分の切っ先に火球を膨らませ、反動とともに打ち出す。⋯⋯ あの、それ剣じゃなくて砲台なんですがそれは。


「ふっふーん。どんなもんよ。」


「いい度胸じゃのう剣。わしの方へ向けて打つとは。」

「いや、僕じゃない、サクラサクラ。」


「はっはっはー、すごいでしょう。あなたの命もここまでよ。長年にわたるライバル関係、ここで終止符を打ってあげる。」


「いや、喋れてないから。それシロに通じてないからー!」


 僕の叫びとは裏腹に、刀は逃げるシロを自動追尾し、炎を吐きだし続けている。




 しゅんしゅんしゅんしゅん。一気に4つの火の玉が消えた。その真ん中にいるのはイチフサを構えたユウキ。剣圧でかき消したようだ。


「シロさんはやらせない。だってよ。」

 構え直して、ユウキはイチフサの言葉を伝えた。

 使い手と剣の意思がリンクしてるな。⋯⋯ こっちは振り回されてるんだけど。


 神剣というより狂剣と呼んだ方が正しいんじゃないだろうか。


「まったくじゃ。さしずめ、イチフサは犬剣けんけんじゃのう。」



「ねえ、シロ、イチフサ怒ってるんだけど。シロでもいっていいことと悪いことがあるっていってるんだけど。」

「うん、シロ、それはつまらない。」

「や、ほんの出来心だったのじゃ。」

 二人から責められてシロは言い訳を始めた。


「シロ、ごめん。止められない。」

 ユウキは守っていた筈のシロの方へ切り掛かった。息があっていたというのは気のせいのようだ。気のせいというより、外されたというべきだろうか。

 ⋯⋯ 使い手より道具の方が強いというのも良し悪しだな。


「剣、私たちも負けてられないわね。」

 こんなふうに語りかけてくるサクラはやっぱり好戦的だし。僕も斬りかかるより仕様がない。二人してシロへ斬りかかる。⋯⋯ まあ、シロなら切り抜けてくれるだろう。大丈夫。⋯⋯ 大丈夫だよね?


「まあ、なんとかなるわい。」

 斬りかかられているのにも関わらず、シロの声に焦りの色は見られなかった。僕らの斬撃を木の葉のようにかわしながら、いなして、それでいて反撃はしない。実力者の片鱗を見せている。⋯⋯ 片鱗というか、全鱗のような気もするけど。



「シロ、こんなに強かったかしら」

 サクラは驚いたように思念を飛ばした。

「割とこんなものだったと思うけど。」

「いつの間に差が開いたの。前は私と同じくらいだったのに。」


 ⋯⋯ 勘違いじゃないかなあ。少なくとも肉弾戦でシロを捉えることはできないだろ、これ。

「前は、いい勝負だったのよ!」

「うん、まあそういうことにしておく。」

「全然信じてないじゃない!」


 こんな会話をしつつ切り掛かっているのも捉えきれない理由の一つかもしれない。この伝達をちゃんと使えば色々と連携とれるかもしれないけど。まだ無理だな。意味のないことを伝え合うだけで終わってしまう。



 結局僕とユウキはシロを捉えきれず、疲れ切って動けなくなってしまった。


「わしの勝ち、じゃ。」


 膝をつく僕らを上から見下ろして、シロは勝利宣言をする。⋯⋯ 信じられるか? シロのやつ、これでまだ、氷も炎も一度も使ってないんだぜ。



 ようやく、サクラとイチフサの変身も解け、元の姿へと戻った。だが、二人とも疲れ切っていて、もう一度シロと勝負する元気はないようであった。使用者とリンクしているのだろうか。







 この後、何事もなかったかのように旅を再開することができたのは、切り替えの早い人だらけだったことが大きいだろう。














ア「結局、全没食らったあの二人に関しては出ないということでいいのかな?」

石「その設定をこっちの二人にあげちゃったからもう無理だよ。」

ア「設定は気に入っていたんでしょ?」

石「そう。平家ぽい人と源氏っぽい人!」

ア「そんなにちゃんと決まっていたわけでもなさそうだ。」

石「でも、どうしてもユウキにもたせた方の描写が薄くなってね。」

ア「主人公はあんなものでも偉大であるということか。」

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