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異世界山行  作者: 石化
第3章:思い出話

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白黒世界8

  飛行機のエンジンがかかる時のような静かで、でも、パワフルな音が中から聞こえてきた。


 上部にラッパのような口がせり出して行く。


 次の瞬間。そこから色の奔流が流れ出していた。四方八方に盲滅法(めくらめっぽう、色が押し寄せて行く。


 白黒だった機械類が、綺麗に色分けされた状態に変わった。なるほど。殺風景だなとは思ったんだよ。


「なんだ、これは。」

 渋いバリトンボイスが短い音で驚きを伝えてきた。

 振り返ってみるとおっさんの肌が人間らしい肌色に戻っていた。そして、こちらを驚愕の表情で見つめている。指はわなわなと震え、それ以上言葉は続かない。色が戻ったら、人は元に戻るらしい。良かった。



 まだまだ色は溢れ出る。外が覗けないのが残念だ。白黒の景色が元の色を取り戻して行く光景はきっと素晴らしいものだっただろうから。



「どういうことか、説明してもらおうか。」

 ようやく、色が出て行った後で、彼は口を開いた。


 自己紹介をして、これまでの経緯を説明する。自分の機械の暴走の顛末について彼は、かなりの衝撃を受けたようだった。


「やはり、無謀だったか。」

 後悔を多分に含んだ一言が彼の思いの全てを代弁しているように思えた。


「ともかく礼を言う。剣、ユウキ。俺はオスカー・ブラッドだ。世界を救ってくれてありがとう。」


 彼の感謝の念は真っ直ぐで、この人には、悪気はないと言うことがすぐにわかるものだった。


「それはそうとじゃ。神防結界の方を解除してくれんかの。」


 指輪からシロの声が響く。


「誰だそいつ。」


「神様だよ。説明したでしょ。」


「あっ。」

 やってしまったとでも言うように顔を歪めるオスカー。うん。神様をそいつ呼ばわりはダメだろ。


「今すぐ結界を解くならばその件に関しては不問にしてやろう。」


「わかりました。」

 すぐにオスカーは折れた。まあ、神様は絶対だからな。⋯⋯ 後、結界のエネルギー源はおそらくあの色装置だろうから、傷の少ないうちに降伏しておいた方が賢いのは事実だ。



 オスカーは、足元に転がる機械の一つをいじる。そんな大事なのが転がってたのここ。⋯⋯ 踏まないようにして良かった。



 宙が白く輝き、空間が開く。シロがその中から姿を現した。⋯⋯ ここ、神様だなあ。



「さて、お主には聞きたいことがいろいろあるのじゃが。」

 シロは笑みを浮かべながら言った。だが、その笑みはどう見ても表層的で、中では激しい怒りが渦巻いていることが容易に見て取れた。



「そうじゃのう。まず、なぜ神をここに入れないようにしたのじゃ。入ることさえできたなら、わし一人で解決することもできたのじゃが。」


「高い塔を作ったものは神の怒りに遭うと言う伝承がありましたので、その対策です。」

 あくまで下手にでるオスカー。


 そして、こちらにもバベルの塔とか言う感じの伝承が残ってるのかしら。民話の原型なんてだいたい似通うものなのかもしれないから不自然というほどでもないけれど。


「なるほどのう。して、この塔を作ったわけは。」


「この街を栄えさせるためです。」


 そう答えるオスカーには一切の邪念が感じられなかった。本気でそう思ってこれを作ったのだろう。この世界に娯楽や観光なんて概念があるかはわからないけれど、需要があれば大盛況を博すのは目に見えている。


「じゃから、ヤーンも干渉せんじゃったのか⋯⋯ 。」

 いろいろと納得のいった様子で、シロはため息をついた。



「ところで、僕らが元の世界に戻るという話はどうなったの。」

 帰れるんだよね。神様、頼みますよ。


「じきにヤーンがこちらに来るはずじゃ。」

 ⋯⋯ 誰だったっけ。最初にシロが言ってた気がするけど、よく覚えてない。


「主神じゃよ。お主らをこの世界に召喚した張本人じゃ。」


 そういえばそうだった。主神なのに停止しているとか聞いた覚えがある。⋯⋯ というか、この機械のせいで、元凶も主神も全員止まっていたのさすがに面白い気がしてきた。時間停止能力を使える人と停止した時間の中で動ける人は別みたいな話だ。



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