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異世界山行  作者: 石化
第二章:エルフ

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族長娘と3人の旅人

何故だろうか。アンナさん視点で書くと筆が進む。⋯⋯ 長いです。

 私はシロさんの後を結構必死で追いました。⋯⋯ もう少しゆっくり行ってくれても良かったんじゃないでしょうか。


  先ほどよりは心に余裕があるためでしょう。ギリギリの線を攻めるというスピード狂を内包した飛行経路はさすがにとっていないですけど。それに、今回は、シロさんが飛んでいるので、私は森の上を飛ぶように走ることができますからね。障害物がないと燃えないのも事実ですけど、実質速度の為には良かったと言えるでしょう。


  しばらく走ると、ようやくシロさんの飛行は終わりました。しかし、不思議な飛行方法ですね。時々手を動かしているだけで、魔力らしきものを用いている気配もありませんし。⋯⋯ 私が知っている飛行法は風魔法を用いたものだけなので、全く知らない方法なら私にはわかりかねますけどね。いえ、手を動かすごとに豪風が襲ってくることを考えると風魔法の一種であるのは確実なのでしょうけど。


 シロさんは、森の一角に降りて行きました。あそこに、あの二人と子供達が。踏みしめるわけにはいかない細い枝についた立葉たちは達、極限まで軽くした荷重により、ただそよぐように揺れる。足を運んだ木に風が吹いたと思わせるような繊細な移動を理想とするのです。


 シロさんの着陸地点から少し離れた所で私は地面に降りました。心の準備、しておきたいじゃないですか。特に剣さんとはあんな別れ方をしましたし。ちょっと顔が熱くなった気がします。なんででしょうか。首をひねる動きをしました。今、顔は百面相している気がします。

 様々な感情が蠢いてどうしていいかわかりません。結局、何も心に決まらないまま私は歩を進めることにしました。


 なぜだか知りませんが、話し声がします。特に気にせず姿を現そうとした私は内容に気づき静止しました。




 彼らの旅の核心に迫るような話が展開されていました。なぜ剣さんたちは旅をしているのか。今までたびたび頭をかすめた問いがここに解決の糸口を得たように思いました。⋯⋯ というよりいいご身分ですね。ただやりたいからといってするのを許されるなんて。私なんて、強制でしたからね! ⋯⋯ いや、確かに自分でも納得はしてましたけど。


  笑い声が聞こえて私はもうあの人の中にあったわだかまりが解決していることに気づきました。私としても少し口を挟みたくもありましたが、終わったのならよしとしましょう。私は木の陰から姿を現わすことにしました。


  改めて見る二人の顔は楽しげで少し腹が立ちました。いえ、そこに至るまでの流れは理解していますけど、緊急時でしょうが! ⋯⋯ 盗み聞きしていた私が言えることではない気もします。


「アンナさん!」

 驚く剣の顔は恥ずかしげでした。まあ、あんなにいちゃいちゃしているのを見られたら当然でしょうけど。⋯⋯ 私の春はいつくるのでしょう。いやいや、何考えてるんですか私は。今はそんな余計なことに考えを向けてる場合じゃないでしょう。私は首をブンブンと横に振ります。


 下の方に目線を向けると二人の影から耳の長い二人の子が少し警戒してこちらを覗いています。すっかり懐いたようですね。少し嬉しくなりました。昔と変わらぬ地味な民族衣装。私が来たからにはもっとオシャレにしてみせます! ⋯⋯ なんでしょう、さっきから思考が変なことばかりに向いて少しも本題を進められません。なぜだかわかりませんが、剣さんのせいである気がするのでとりあえず睨みつけておきます。


「えっ、僕何かしました?」

 いきなりの理不尽な睨みに焦る剣。


「微妙にわしも間違っておらん気がするのがなんとも⋯⋯ 」

 シロさんはなぜか肯定してます。


「あれ、そう言えばサクラさんとイチフサさんは?」

「あの二人は別行動だよ。」

「大丈夫なんですかそれ? 」

「まあ、二人とも強いから心配はないと思う。」

「ならいいですけど⋯⋯ 。」


  ⋯⋯ さて、仕切り直しましょう。私は二人の子の前でしゃがみ、目線を合わせました。

「あなたたちのお母さんに頼まれて助けにきました。はやく村に戻りましょう。」

 なるべく優しく言います。私のことは知らないでしょうが、エルフであることはわかるはずです。


「お母さんに頼まれたのね! わかったわ!」

「ちょっと待ってください姉さん。すみません、アンナさんとおっしゃいましたね。私はあなたの顔は集落で見たことがありません。でも、どうしても信じて欲しいなら言ってください。私たちの名前を。母に頼まれたならわかるはずです。それを聞くまで、信用はしません。」

 強い口調でその子は言った。この子大人び過ぎではないですか? ⋯⋯ どうしましょう、名前なんて聞いていません。私が困ったまま口を開かないでいると幼いながらも鋭い疑いの眼差しが突き刺さってきました。心にきます。こんなのでみんなをまとめる立場になれるのでしょうか。


 でも、私に何ができたというのですか。私だって色々必死だったんです。



 私は開き直ることにしました。

「聞いてません。そんな余裕はありませんでした。」

 私の強い言葉に気圧されたのか、帰ってくる言葉はありません。


「緊急事態だったんです。誰もそんなこと気にしませんでした。あなたたちの母親も。」


「そんな。」


 弟君はショックを受けた様子です。


「母さんはいつも僕たちに言い聞かせていたんです。それを自分から忘れるなんて。」


「いや、仕方ないよ。この事態。君もいつもと同じには動けなかっただろ。」


 剣さんフォローありがたいんですけど、あなた、ひょっとしなくても既にこの子たちの名前知ってますよね。ここまで、送り届けたんだからそれくらいの仲にはなってますよね。当然。


 まあ、逆に知らなかったとしたらそれはそれで問題がある気もするのですけど。まあ、知ってたと考えましょうか。⋯⋯ 教えてくれたっていいじゃないですか。こう、耳打ちとかして。なんなんですか。いじめですか。私はやっぱり剣さんの方を涙目で睨みました。


「なんかさっきからアンナさんの目線が怖いんだけど!?」


「これほど完璧な自業自得も珍しいのう。」


「いや、シロ、そんな冷静に分析しなくていいから。なんでそうなったのか教えてよ。」


「いやじゃ。」


「僕になんの恨みがあるというんだ!」


「まあまあ、そのくらいにしようよ。」


 ⋯⋯ どう見てもただのコントですね。三人で自己完結してます。というか、もう暗いんですが⋯⋯ 。そろそろ、帰らないとまずいです。


 三人でほとんど結界を築いている感がある事態に直面し、弟君はこの人たちは頼りにならないと思い始めたようです。私の方に寄ってきて、先ほどの言葉を撤回しました。



 いい判断ですね。


「じゃあ、私と一緒に来てください。」


 二人はうなずきます。


「途中までは、僕らも一緒に行くよ。アンナさんが好きなところで引き返すように言ってくれればいいから。」


 一応取りまとめ役を勤めている剣。シロさんの方が適任な気もしますが。


「わかりました。この子たちもあなたたちがいた方がいいようですし、途中まで一緒に行きましょう。」


「あかりが必要じゃの。」


 シロさんはそう言うと、予備動作もなしに手の内に氷を作り出しました。カンテラほどの大きな氷。というか、形状的にはほぼカンテラですね。取っ手もありますし。


 その中には、橙色の明かり、いえ、火がゆらゆらと揺れています。氷と火。本来並び立つはずのないその二つは、シロさんの手の内で共存し、周りの闇を払っていました。どう考えてみても不自然な状況。私が動じなかったのはもう何が起こっても不思議はないというこの人たちに対する心構えでした。


 ⋯⋯ なぜか、弟君の方も共有しているようで、驚きを見せませんでした。姉の方は、シロさん冥利につきそうなほどに驚いていましたが。それが普通です。


 シロさんのおかげで十分な光量は確保されました。とは言っても、森の中です。木々は地震によりいつもと様相を変え、その不気味さが浮かび上がる陰影によって際立ちます。所々にある倒木を越えるのも一仕事です。


 いかに私が地形を覚えるのが得意と言っても、闇の中、星明りによってのみ浮かび上がる山々によってギリギリ位置がわかるだけ。求める方向とは見当違いの方向に進んでいるのではないかという不安が拭えません。⋯⋯ ですから、時折シロさんが先行するのはやめてほしいです。本格的にわからなくなります。


 なんとか、見覚えがあるところまで出ることができました。確かここから集落までは15分といったところでしょうか。


 私は、ここまで付いてきてくれた三人を順に見ました。剣さん。非常に不思議な雰囲気を持った方でした。正直まだつかみきれていません。でも、そのうちにある何かを進めるに足るだけの意思は尊敬に値します。


 シロさん。この方も常人離れしています。どんなことでもできてしまいそうな神様めいた力を持っているように思います。でも、立場的には一歩引いて、全体を見通している。この人かいるから、彼らは旅を続けていられるのだと思います。


 そして、ユウキさん。この個性の強い二人の手綱を握るのは大変でしょうが頑張ってください。常識的な範囲内にギリギリ止まらせておいてください。あなたならそれができます。むしろあなたにしかできません。できれば友達になりたかったです。


 ひとしきり、思いを込めて見つめました。歩みの止まっている私には五人全員の視線が集中しています。伝わったかはわかりませんがこれでお別れですね。


「剣さん、シロさん、ユウキさん。ありがとうございました。この恩とえにしは一生忘れません。おそらく噂を聞いては我が事のように思うと思います。」


「僕らが噂になることはないと思います。人里には近づかないつもりなので。」


「いや、何言ってるの剣! いいところなんだから腰折らないでよ。」


 こんな時でもペースを崩さないのは逆にすごいですね。私は、失礼だとは思いながらも笑いをこらえることができませんでした。


 抑えようとした声が溢れて、消えます。この方たちと間もなくお別れしなくてはならないのかと思うと寂しいという感情が一気に襲ってきました。うつむく私。


「嘆くことはないわい。わしらとお主は袖振り合うよりは多少深く関わった。それだけのことじゃ。それが嫌だというのなら、村を捨ててわしらと一緒に来てもいいんじゃぞ?」


 シロさんの言葉は突き放すようで、甘やかすようで。その言葉で私は自分を取り戻せました。

「ふふっ。村がこんなことになっているのに自分だけで逃げ出すなんてこと、しませんよ。」

 軽く笑って、別れを告げます。

 それに応える三人の言葉も軽やかなものでした。まるで、これが終わりではにことを知っているみたいに。


 姉弟もそれぞれ別れを告げました。


「村を出たら、会いに行くわ!」

「そうですね。」


 って、志望は旅ですか! ⋯⋯ 今のうちに鍛えてあげましょう。とりあえず戦闘力さえあればなんとかなるものです。


 三人と別れて、村に戻る道の中で、私は自分のことについて話しました。旅を、してきたことを。私の話を熱心に聞く二人。すっかり楽しくなって、私の足取りは軽くなりました。十分に明るい月光がその道を照らしていました。














 ⋯⋯ 村に帰ったら、父さんから独断専行をこっぴどく怒られたのは秘密です。森を燃やす不届きものが現れたとか。⋯⋯ なんだか、あのいなくなってた二人のことが思い浮かびますが、気のせいでしょう。





 


あとはちょこちょこっと剣視点のやつを入れてこの章終了ですね。

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