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異世界山行  作者: 石化
第二章:エルフ

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箸休め

タイトル通り。まだ、話は動きません。ゆっくり行きましょう。もっと前に更新するとある場所で宣言したのですが⋯⋯ 。ちょっとイベントが⋯⋯ 。いえ、なんでもないです。




「ユウキ、そろそろ正午だしお腹すいたよね。お昼にしよう。」

 ⋯⋯ 待つ時間が長くて。うん。イチフサとサクラには済まないと思ってる。


 今日の昼ご飯はおにぎりだ。あまり食べていなかった朝食のご飯を握って持ってきた。具材はいろいろある。梅干しと肉だな主には。⋯⋯ そんなに多くなかったな。おかかはどうやって作るのかわからないし、高菜ってまずおにぎりに入ってるものだったっけ。実戦から離れた期間が長くて思い出せん。


 おむすびというとみんなある形を思い浮かべるだろう。そう、三角形の各頂点が丸みを帯びたあの形状である。海苔が半巻きくらいされているのも特徴だ。まあ、なかなかあの形のおにぎりはお目にかかれないのだが。コンビニのおにぎりは形は良くても海苔がほぼ全てを覆っているからな。

 いや、海苔大好きな僕としてはあれでいいんだけどね。というわけで、僕が巻いたおにぎりは海苔でぐるぐるに巻かれている。ユウキとシロのはそうでもないけど。

 というか、むしろ海苔を手に入れるまでの苦労の方を大きく取り上げたいね。僕の認識的には白ご飯には海苔が必須だったんだけど、どこを探してもなかったんだよ。絶望に直面していたら流石に気の毒になったのかヤーンが野生のを取ってきてくれたけど、こっちに来て半年くらい経ってからだったからなそれは。というわけで今は海苔祭を展開しているところなんだよ。おにぎりにしか使わないけど。


 この世界では海苔は食用と認められていないみたいだった。布教のしがいがあるな。などと息巻いていたけど、オスカーすら食べるのを嫌がったからこれは無理だなって諦めた。この世界には海苔を食べる下地がないらしい。そういえば日本以外で海苔を生産してるの聞いたことないなーと思う。

 よく見つけてきたなヤーン。ありがとうございます。在庫無くなったらヤーンが手に入れた場所を聞いて持ってきたいくらいだ。そこに行くのもやぶさかではない。


 閑話休題。多分海苔は美味しいよねって話だったようん。



 昨日のようにラーメンを作ったら煙で見つかる可能性もあったし、おにぎり作っといて結果オーライだ。ちなみに山では野菜系統は夕食時にたっぷり食っとけば大丈夫だろうという思考に落ち着くから気をつけよう。一泊程度だったら問題ないが何泊も続けていくと深刻なビタミン不足に陥ってしまう可能性が高い。あれ、僕たちやばくね? もうちょっと野菜とろう。そうしよう。


 用意が済んで、いただきますもしたのにまだおにぎりを口に運ばない僕を二人がいぶかしむような目つきで注視してきたので慌てて口に放り込む。


「剣、それは⋯⋯ 。」


 喉につまりジタバタする僕。


「そうなるわい。」

 シロはため息をついた。


「はい、剣、どうぞ。」

 ユウキの差し出したお茶のおかげで僕はなんとかおにぎりで窒息死することを免れた。


「ありがとうユウキ。」

 礼を言う。

「ううん。気にしないで。でも、気をつけてよね。」

 ユウキの忠告は心に染みる。こちらのことを考えてくれているのがわかるからだろうか。



「のろけはそれくらいにしてくれんかのう。」

 シロは居心地悪そうにしていた。


「わかった。」


 こちらの脳内への言葉だったからユウキは首を傾げたけど、シロだから気にしないというふうに何も言わずに食事に戻った。この辺りは日常の積み重ねである。つまりは慣れだ。


 気を取り直して今度はゆっくりとおにぎりを口へ。一口で半分ほどを口に詰め込む。頬張ると言ってもいい。僕の信じる最も幸せなおにぎりの食べ方だ。海苔が舌を滑る。なめらかな感触が舌に伝わり、噛む歯からは弾力を残した米粒が自己主張を繰り広げる。相補的な二つの味は混ざり合い、渾然一体となって僕を魅了する。

 突然別の味が侵入してきた。非常にアクセントの強い味だ。先ほどの二つだけでは完璧ではなかったのだ。僕の脳を直接刺激する味。酸っぱいなどという言葉では表せない。厚い果肉に濃縮された塩味が長い期間を経て別のものへと変化を遂げた味だ。そう、梅干しは僕の定める唯一にして最大の具だ。この酸味がおにぎりの美味しさをさらに引き出す。


 それからは早かった。なにしろ戦どきに携帯食としても用いられたというおにぎりだ。二口もあれば一個はなくなる。しかも短時間に。僕らがおにぎりを食べつくしてしまったのはま食べ始めてから15分も経っていないような時間だった。


「ごちそうさまでした。」

 三人で唱和する。いい昼飯だったな。僕は満足だよ。






 しばらく三人とも何も言わずに時が過ぎた。満腹感というものは恐ろしいものだなうん。ここでお昼寝したい。⋯⋯ このごろ昼寝をするサイクルが身についてきた気がするぞ。誰のせいだ。どう考えても一日目に最初に眠ってたシロが悪いな。


 さてと、普通に過ごしてたせいで時間が溶けてった。夕刻まであと何時間もない。避難の状況はどうだろうか。⋯⋯ もうその時になったらシロに全部任せておけばいい気がしてきたけどさすがに無責任か。



 ぼくのやるべきこと。それはシロのできる最適な支援を考え出すこと。そのくらいだ。あとは、地震時に足手まといにならないようにすることかな。


 シロのできること。それは主に二つだ。燃やす。もしくは凍らせる。対人的な技能に関しては今回は役に立たないだろう。それと、浮遊と飛翔魔法か。


「⋯⋯ 一旦あの村をすべて凍らせて地震が過ぎたら解凍するとかかな。」


 僕はなんとか答えをひねり出した。ひねり出しただけあってなんともお粗末なものだ。


「⋯⋯ 凍りつくということを何か勘違いしとらんかのう。確かにわしの全力ならあの村を覆うくらいの氷は作れるじゃろう。じゃが、凍りついた人間が無事でいられると思うかの? 当然体温は奪われ心臓は停止するじゃろう。」

 シロに懇々と諭されてしまった。⋯⋯ 確かにギャグ漫画よりの考えだったか。甘すぎるな。







 とはいえこれが否定されると手詰まり感は否めない。


「ユウキ、何かいい考えない? 」


 煮詰まったら他の人に助言を求める。これは問題解決の基本だ。


「うーん。アンナさんたちもいろいろ準備してるんだよね。じゃあ、基本はあちら任せでいいんじゃない? エルフって普通にいろいろとできそうだし、下手に私たちが手を出さなくても自分たちでなんとかしそうじゃん。」



 ユウキの答えは単純だったが盲点だった。確かにエルフは風魔法をたぶん種族として得意としているようだ。どのように使うのかはわからないが、倒壊した建物から自分の身を守るくらいはできるだろうたぶん。問題は幼子か。いや、だけど、たぶん一箇所に集めて守りの陣形を敷くくらいの仕事はしてるよな普通。あれ、これ僕らいらなくない? いらない子じゃない?


 勢い込んで助けると息巻いたものの実際は必要ないことがわかった。助けるにしてもそこまで大掛かりなことはしなくてもよさそうだ。ひとまず気を抜く。


 そのあとも僕らはどうでもいいことを話したり、やっぱりこうすべきではないかなどと自分たちでは建設的と思う議論を行って時間を潰していった。もっと他にやることがあったのではないかと言われたらそれはそうだと言うしかない。





今度こそ別視点なはず。明日更新します。

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