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異世界山行  作者: 石化
第二章:エルフ

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移動。湖から盆地へ

久しぶりの投稿なので気合い入れました。⋯⋯ 嘘です。いや、字数的には本当なんですけど、ただ、貯蓄を食い荒らしているに過ぎないというか⋯⋯ 。ストップ!ストック消費。を標語にしないといけない気がします。とりあえず、久しぶりに風景描写書けたので満足でした。(これを書いていた頃は←しつこい

 さてと。とりあえず、ご飯を食べたらどうするかだな。地震対策を考えなければならないかな。

 前の世界での地震対策といえば、避難袋を用意するとか、家具を固定するとかが有名だったな。と言ってもこれはいつ来るかわからないものに備えるという側面が強い気がする。


 来るのがわかってたらもっと即効性が強い方法があるよな。荷物まとめて逃げるとか。だけど、飛行機とかあるならいざ知らず、ほぼ移動手段がないと言ってもいいこの世界では逃げるって言っても範囲外まで行くことはできないだろうな。なら避難場所となるような広い場所を確保してそこにみんな集めるとかかな。ならこの湖とかがいいのか? だけど、津波とか発生しそうだな。なら逆に危険か。とはいえ、森の中は問題外だよな。地震でいろいろな木が倒壊してきそう。やっぱり、現地を見ないことには何の対策も立てられないな。机上の空論はいくら積み上げたところで何にもならない。


「そうじゃのう。わしも、あやつのいう集落がどのようなものかはわからんからのう。そうするべきじゃろう。」

 シロの賛同も得られた。


 みんなにも説明して、ともかく捕捉済みの場所へ向かうことになった。



 シロの案内で斜面を登る。下草がまばらになり歩きやすくなっている。乱立する木々の間を抜けてただ進む。樹齢のいってそうな幹の太い大木が何本も僕らの前に現れる。まだ早い時間らしく霧も出てきた。視界が利かない。シロレーダーがなければ迷っていたこと請け合いだ。倒壊した木にコケがむして湿気を増幅させる。たまに太陽がゆらゆらした光を霧に投げかける。落葉の腐った腐葉土がふんわりとして足を沈ませる。



 登りきって霧が途切れた。前後の景色がしばしその姿を表す。山を取り巻くように白い薄衣のような霧がまとわりついている。登ってきた方向には白い霞がわだかまる森の色を映した湖が静けさとともに姿を見せている。しかし、すぐに生き物のように動く霧によってその湖水は覆い隠された。深窓の令嬢とでもいうべきつつしまやかで滅多に人目につかない美しさがそこにはあった。


 前方、アンナさんの里がある方もまた白霧の跋扈するところである。そちらはなんと言ったらいいのだろう。すり鉢のような形をした地形が見えている。盆地と言われているところは数多くある。たとえば甲州盆地が有名だろう。しかし、それらは当然のことながら川の通り抜けるところで囲みは破られ、山が完全に周りを囲むという地形にはなかなかお目にかかれない。もともとカルデラだったはずの阿蘇山でも、外輪の一部を川が突破し、完全な円ではなくなっている。しかし、今僕の眼前にあるのは完全に周囲を全て山で囲まれている稀有な場所であった。ここに降った雨の行く先が気になってしまうのは地理を学んでいたからだろうか。水が溜まっていないところを見ると地質的に水が浸み込みやすいのだろう。




「あの底じゃのう。」

 浮遊したシロが僕の耳元で言った。




 そこかよ! いや、この景色見た時点で少しは予想してたけどさ。


「すごいところに住んでるんだね。アンナさんたち。」

 ユウキはちょっと圧倒されたようだ。まあ、隠れるのに良いところではあるよな。これぞ隠れ里って感じだ。上から見てもそこでエルフたちが暮らしているような痕跡は少しも見つけられない。偽装は完璧だな。


「燃やせばわかるわよ。」

「サクラさんは本当に何もしないでください。」

この頃イチフサがサクラを抑えてくれるから、楽だ。ありがたやありがたや。



 少し休憩して下をさして下る。緑が増え、より原始の森といった雰囲気が強化された。白神山地のことを思い出してもらえれば分かりやすいだろうか。苔むした大木が腐って途中から折れ、道を塞ぐ。霧の水分が付着し、水滴が笹の葉から垂れる。深山幽谷ここに極まれりだ。



 かなり苦労しつつも意外とさしたる障害もなく降りていくことができた。



「そろそろじゃのう。」


 シロの注意で僕らは立ち止まる。


「この先じゃ。気をつけて行くんじゃ。」

 そうしてシロを先頭にしてゆっくりと近づいていく。匍匐前進とは言わないまでも、それに近い慎重な動きだ。


 近づくにつれ混乱した雰囲気が伝わってきた。アンナさん、ちゃんと地震情報信じてもらえたんだな。よかった。カッサンドラみたいに嘘つき呼ばわりされることも覚悟しないといけないんだけどな普通なら。信頼が厚かったのだろう。羨ましい限りだ。


 たぶん僕がクラスで明日地震がくるぞーってふれ回っても誰も信じやしないだろうに。⋯⋯ まあ、誰が言っても信じる人はいないと思うけどね。瀧くん入りの三葉は二人から面白半分でも信じてもらえただけ凄い。⋯⋯ どうやってお父さんを説得したのかはさすがに難しすぎて映すのを避けたっぽいけど。僕としてもあの状況からお父さんを説得するような言葉は全く思い浮かばない。凄いや。さすが本物の三葉。なお、この辺りは実在の映画及び書籍とは一切関係していないので悪しからず。



「しかし、状況がわからないな。シロ、ちょっと見つからないように見てきてくれる? 」

「しょうがないのう。ちょっとだけじゃぞ。」


 そう言ってシロは身軽に木の上に飛び乗って枝を揺らすことなく木々を伝って走って行った。忍者かあいつは。


 僕とユウキはその間集落の方の様子を伺う。下手に気づかれたりすると問答無用で排除されてもおかしくないからな。曲がりなりにも人里をずっと旅してきたアンナさんがあそこまで嫌がるんだ。ずっと集落にこもってきた人たちがどう考えるかなど自明の白だ。



 さらに少しだけ近づいて、喧騒が聞こえる位置まで来た。やはりいろいろと慌ててはいるが、地震に備えているのには間違いないようだ。僕が葉の陰から覗いて見たのは、木々をくりぬいて作られたらしいたぶん家と思しき窓の付いたコケで緑に変じた巨木群だった。もうエルフの称号森の人でいいだろこれ。と言いたくなるような住居だった。



 なるほどな。ファンタジーではよくあるけどよく考えたらどうやってるんだろうという建物の代表格みたいなものだ。なんで木が中折れしないのか不思議でならない。人間でいえば内臓をくりぬかれているようなものだろうに。なんでもないかのように旺盛な緑で日光を求めるべく上部に葉を伸ばしている。植物のほうが最終的には動物よりも強いんだろうな。



 そうこうしているうちにシロが物音ひとつ立てずに僕らの前に現れた。心臓に悪いよ。瞬間移動したらしいことはわかるけど。口を開こうとする僕たちを手で制し、シロはもう少し離れるように声を出さずに身振りで示した。それに従い僕とユウキは後退する。かなり下がってようやくシロは僕らを止めた。


「どうだったの? 」

 ユウキは勢い込む。

「かなり殺気立っておったのう。ちゃんと様子を見れるほど近づくことはできんかったからそれ以上は分からぬがのう。じゃが、これだけは言えるわい。わしらが見つかったとしたらいらぬ面倒と混乱を引き起こすこととなるじゃろう。」


 そこでシロは言葉を切ると僕ら二人の頭を順に撫でた。

「そんなに心配することはないわい。わしがおるんじゃからの。」


 そんなに僕らは不安そうな顔をしていたのだろうか。ユウキと顔を見合わせてそしてお互いにどこか安心したような色を認めてシロの気遣いが有効であったことを知った。シロにはかなわないな。苦笑を含んだ視線をユウキとかわして、シロに礼を言う。いつものごとく調子に乗るシロを温かく見守る心の余裕もできた。


「で、じゃ。」

 シロは仕切り直しの言葉を作った。


「お主らもギリギリ見えたじゃろうが、あの集落は木に立脚しておる。じゃから、地震で木が崩れたらアウトじゃ。」

「確かにそうだね。」

「それはそうなんだよなあ。」


 現状を正しく把握するのは大事だ。とりあえず全員の共通理解を広げていく。


「シロ、地震がくる正確な時刻はわかる? 」

 ユウキの鋭い疑問。確かにそれがわかっていたら随分と動きやすくなる。

「そうじゃのう。聞いてみるとしようかの。」


 シロは空中で逆立ちに近い体勢まで回転して地面に耳を当てた。⋯⋯ そんな感じなのね。地震予報って。確かにアンナさんには見せられないなこりゃ。どう考えても人間業じゃないもん。



 しばらく逆さになっていたシロだったがしばらくすると頷いてまた回転した。締めて一回転。側転でもしてた感じだ。




「思っておったよりかなり遅いのう。夕刻じゃ。」


 拍子抜けしたようにシロは言った。


 一体何時いつだと予想してたんだよシロは。すぐか。今すぐだと思ってたのか。そんなんだったらまず僕らが危なかったわ。


 というか僕らの安全についてはもっとよく考えてたほうがいいな。誰かを助けるって息巻いて自分が危うくなったら世話ないからな。自分の面倒さえ見れない奴に誰かを気にかける資格はない。今んところはというよりこれまでもこれからもシロ頼みなんだけどな。人の力を借りないと何もできない・・か。いやでもシロは身内だし。頼ってもいいよね。できるだけ負担は減らしていく方向性ですので許してください。互換できるように頑張るんで。


「相変わらずお主はめんどくさいこと考えてるのう。普通にわしを頼ってもいいんじゃよ。」


 シロの頼り甲斐がありすぎるのも問題な気がするんだよな。


「わしとしてはお主らは宙に浮かしておけば大丈夫じゃろうと思っておるわい。」

「そんなことできるの! じゃあ、別のところでも使えばよかったのに。あっ。」

 ユウキの気づきはシロが引き取った。

「その通りじゃ。これほど使いどころのない力は珍しいわい。移動するにも不向きじゃしのう。」


 そっか。川を渡るときなんで使わなかったんだよ! とか言いたくなったけどよく考えたら浮けても動かなけりゃ何も意味ないな。


「そうじゃ。じゃが、故あって地面から離れていたいときは便利じゃぞ。」

 シロは胸を張る。さっき自分で言ってたから僕は言わないけどさ、ほんと使いどころによなそれ。


 それと、多分シロはわかってると思うけど、とりあえず言っておこう。


「シロ、この森の凶器に変わる可能性のある木々の射程から逃げるには結構高くに浮かさないといけないけど、だいじょうぶなの? 」

 揺れを感じないからって危険じゃないとは言えないのだ。むしろその揺れによって壊れた看板とかに当たって怪我する人の方が多い。


「⋯⋯ 言われてみればそうじゃのう。まあ、お主ら二人だけなら問題なかろう。高所恐怖症だというわけでもないじゃろう? 」

 シロは悪戯っぽく笑う。まあ、そんな病気患ってたらここに来るまでの崖は越えられなかっただろうし、そのシロの分析は正しい。


「そうだね。じゃあ私たちはそれでいいとして、アンナさんたちにもそれでいけるの? 」

 ユウキの声は明るかった。なんとかなりそうな方法が見つかったからだろう。

「無理じゃな。」

 シロの答えは短かった。説明を求める僕らの視線に促されシロは再び口を開く。

「わしの力は触れておらんと発動せんのじゃ。あやつらの前にわしが姿を見せたら逆に刺激して大惨事になる恐れもあるしのう。」

 ぬーん。シロのいうことは正論だ。無理なのか。僕らはちょっと気落ちする。


「そういえば、わしの力じゃ浮かすところまでじゃから、木々より上空に行くきたいというのなら木登りしてもらわんとならんが大丈夫かの? 」


「初耳なんだけど! 」

「わしは力持ちじゃないと昨日言ったばかりじゃろうが! そのくらい自分でやるのじゃ。」


「うーん。自慢じゃないけど木登りなんてしたことないしな。」

「そりゃ自慢じゃないよ当然だよ。」

 ユウキはちょっと冷静だった。

「とは言っても、私も厳しいかな。普通の木ならまだしも、ここら辺の木は大きいし太いし苔むしてて滑りやすそうだしね。」


「となると、お主らの安全のためにはわしがそばにおったほうがいいのう。」

「シロに頼りきるのは癪だけどお願いします。」


 僕は頭を下げる。安全第一だ。


「でも、そうなるとシロの力をエルフの人たちを助けるために十全に振るうのは難しくなるね。」


 ユウキは難しい顔になった。


「なるほど、そうなるのか。」


 僕も顔をしかめる。とはいえ、お節介をやけるのは自分の身を守れる奴だけだ。

 ⋯⋯ なんか話がループし始めている気がするぞ。



「私が行くわ。」

そのループをぶった切るようにサクラが自信満々で言った。大丈夫? 燃やさない? 火災発生させたら二次被害が拡大するよ。


「不安ですね。私も行きましょう。」

僕の思考を読み取ったか、それともサクラを一人にするのが不安なのはイチフサも同じだったのか、彼女が同行を申し出た。⋯⋯ 花京院になっていたと言おうとしたけど、あの画像がネタとして通じる界隈じゃないと通じなそうだ。回避して正解だろう。


サクラもイチフサも神様なんだから、頼りになるはずだ。どうやって助けるのかはよくわからないけれど、多分不思議な神様パワーでなんとかしてくれるはず。僕は神様を信じてる。

「いい心がけね。任せなさい。」

サクラは褒められて気持ち良さそうだ。だからちょろいんだって。


「じゃあ、行ってきますね。」


二人がいくのを見送る。何かを忘れてる気がするけれど、気のせいだろう。




次は視点変わったようなそうでないような。すみません、覚えてないです。

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