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異世界山行  作者: 石化
第一章:山。山? 山!

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三郡1




 ●




  僕らの前には緑の山が姿を見せている。新緑というより深緑だ。針葉樹の色。杉やヒノキが勢力を占めている土地だろう。山の姿はそこそこ大きい。しかし、森に覆われてこんもりと優しい雰囲気を持っている。さてと、では登りますか。



  生活道路らしき畑の中の道を進んでいく。ところどころに農家の方がいて奇異な視線を向けてくる。そりゃそうだ。誰が好き好んで山に向かうのだろうか。街道とは交差方向なのにだ。こんな道、村人でなくては使わないだろう。奇異どころか敵意もちらほら感じる。素早く通り抜けた方がよさそうだ。



 山の側をめぐる道は曲がりくねっては続いていく。道に垂れ下がる木からは、赤の実が美味しそうな色を見せている。こういった道の途中にある、食べられる植物は大昔に旅人が植えたらしい。そのため、変わらぬ場所に、誰でもその恵みを受けることができるように植わっている。お腹が空いた旅人や、近隣の住人はおやつのように木の実をつまみ、お腹を満たすのだ。


 道の途上。鳥居のようなものから、山の上方に道が伸びているのを見つけた。


 ちょうどよく上部に抜けられそうなので、僕らはそこを登ってみることにした。片側に溝が掘られた、整備された道。真剣な信仰の対象になってるんだなとしみじみする。⋯⋯ 鳥居が神社を示すものであるとは限らないけど。



  木の下は、シダの草叢くさむら。まるで、ジュラ紀の森のよう。なぜ、白亜紀でも三畳紀でもないかと言われると、やっぱりスタンダードな恐竜時代はジュラ紀だからと答えよう。白亜紀は行き過ぎたし、三畳紀は基本すぎてもはや別物。森林ならジュラ紀だろ。荒地は白亜紀、水辺で三畳紀かな? 地球で唯一モンスターと言ってもいいのは、やはり恐竜である。この世界、もしかしたら恐竜も生き残ってるかもな。ロストワールドとか憧れたんだけどなー。⋯⋯ フラグにしかならない気がしてきたので自重します。


 かなり急な勾配である。木の階段でも作ればいいと思うのに、強情だな。おそらく上部から何かの物資を流して固めたのだろう。白く固い道が僕らの膝を試すように続く。カラスが鳴き、羽の音が聞こえる。⋯⋯ カラスって、「カー、カー」って鳴くんだっけ?「 ガー、ガー」という濁ったやつしか聞いたことないぞ。まさか、僕たちのよく知るあれとは別の動物の鳴き声か?


 ⋯⋯ まあ、姿を見ないことにはなんとも言えない。だけど、目視できる範囲にはいない。あきらめよう。



 かなりの時間、登った。視界も開けず、きつい勾配が永遠に続くかのように思えた。



 しかし終わらないアニメはないように、どんなにきつくつらい道でも、最後には終わりがある。僕らは、登りきった。⋯⋯さっきの例えが適切かどうかは突っ込まないでください。


 少々の平地、そこにあるのは瓦葺きの建築物。かなり立派なものだが、鳥居から想像していた神社とはどこか違ったものだった。中を覗いて見ると、手を合わせた男の木像や石像がたくさん並んでいた。これは⋯⋯ おそらく寺だな。神社×寺か。神仏混合が進んだ結果かな。花が供えてあるのが見てとれ、何はともあれ、信仰されていることは確かだろうと思われる。

 幸いというべきか、不幸にもというべきか、僕らが到着した時はその場所には誰もいなかった。住職さんか神主さんみたいな存在がいても不思議はないと思うのだが、多分どっかに出かけていたのだろう。信仰心があるわけでもなし、会わなくてよかったということにしておこう。


 その広場でしばし休息をとって、僕らは再び出発する。すぐさま現れるのは峠の三叉路。寺の裏山と、もっと奥に続く尾根、その間の鞍部に道が三つに分かれていた。


 一つは峠の向こう側へ降りていく道。あとの二つはどちらも山の方に向かっていた。一方は直登。まっすぐに斜面を登る。猪突猛進とでも形容できそうな恐れを知らぬ道だ。対して、もう一方の水平にして徐々に高度を上げていく巻いてる道は賢いな。まあ、結局登らなきゃならない時間は増えるわけだけど。どっちにしろ同じだけ高さを稼ぐんだし、巻くと距離も増える。僕らの感覚的にだけ短くなったように思えるのだ。これが距離詐欺って奴か。


「でっ、どうするの剣。」

 僕の思考がひと段落ついたところで、ユウキがこちらの考えを聞いてきた。なかなかにナイスタイミング。


「剣が動こうとしないからね。私が決めてもいいの?」

「上に行くのなら。」

「巻いてる道はそのまま、ずっと水平をいくかもしれないよ。」

「うーん、まあ、降ってないならいいかな。時々はユウキにも道を選んで欲しいなって。」


 僕に道を委ねられたユウキはしばらく迷っていたが、結局急登の方を選択した。なかなか選べる道ではないので、素直にすごい。というか本当にこっちでいいのか? 絶対つらいぞ。


「体を鍛えるには短い時間に高負荷の運動をしたほうがいいんだよ。」.

 そっか。まあ、ユウキが納得しているのであれば何も言うまい。


 というわけで、僕らはユウキ、僕、シロの順に一列縦隊を作って登り始めた。いつもは僕とユウキが入れ替わる。リーダーとしては1番後ろがパーティの把握をしておく意味でもいいんだろうが、シロならその役割を十全に行えるからな。正直リーダーの出番はない。ならば道を切り開くのは1番前の人の役目だろう。





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