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異世界山行  作者: 石化
6章 最後の戦いと、それから

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終わりと始まり

 


「そうか⋯⋯。よかったわい。」

 シロはその言葉を聞いて、とびきりの笑顔を浮かべた。もう何も思い残すことはないと彼女は満足する。共に過ごした年月を一生の思い出にして、彼女は一人自分の山へと帰還した。


「ずるいです。悲しいです。ひどいです。」

 イチフサは大粒の涙を流して、その言葉に応えた。もう何をしても二人に届かないとわかっていても、彼女は感情を抑えるすべを知らなかった。


「嘘よ。絶対嘘。」

 サクラは認めなかった。二人がこの世界にいないなんて嘘だと荒れ狂う。あまりに噴火が酷すぎて、ヤーンが制圧するほかなかった。


 彼女に時を止められてじっと一人で考える中で、サクラはだんだん理解していく。もう、一緒に旅をすることはできないのだと。最愛の人には二度と会えないのだと。


 全てを受け入れた彼女のとった行動は引きこもることだった。外界でどんな変化が生じようとも、彼女は山のなかに閉じこもって決して出て来ようとはしなかった。


 シロとイチフサが元気付けようと訪ねて来たけれど、サクラは聞く耳を持たず、何も反応しない。彼女の絶望は深すぎた。



















 ●●



 無感動で、無意味で、無限の生が憎くて私は山の中に閉じこもっていた。もう動きたくなかった。もう失いたくなかった。感情は動かなくて、噴火することもなくて大人しくしていた。何年経ったんだろう。下界は色々変わったみたいだけど、特に意識することもなくてなにが起こっているのか全然知らなかった。





 知ってる波動を感じた気がした。私は顔をあげてあたりを見渡す。懐かしい人。大好きな人。もう死んで、この世界からいなくなった人が帰ってきた。ぬか喜びに過ぎないとわかっていても、嬉しい。転移を使って山の外に出る。もともと私の出した溶岩で覆われていた山肌はいつの間にかすっかり木々が生え揃っていた。どれだけの年月が経ったのだろう。もう私が火山だって知る人もいないのかもしれない。



 さっきの気配はどこからだろう。もう一度探ってみる。私の山から続く森の端で見つけた。もう一度、転移。


「剣っ!」

 飛び出したそこには動く骸骨とへたり込む男の子。どことなく面影があって、剣に似ていた。迷うことなく骸骨の方を吹き飛ばす。炎が舞って、骸骨は倒れ伏した。こんな怪物、いつの間に生まれたんだろうと不思議に思う。



 ▽レベルアップしました。1→2


 個体名 サクラ

 種族 山神

 属性 炎

 クラス ー

 H:1709(2UP)

 A:2300(4UP)

 B:1400(1UP)

 C:2879(5UP)

 D:1789(2UP)

 S:1900(3UP)



 えっ、なにこれ。私は目の前に浮かんだ数字と記号の羅列に戸惑う。


 でもそれは一瞬で、すぐに後ろの男の子に意識がいった。


「大丈夫? 立てるわよね?」


 差し出す手。剣ではないことに落胆したけど、でも、救った責任は果たしたいと思うから。


 その男の子はしばらく固まって、そして、おずおずと手を伸ばしてきた。手と手が触れ合って、暖かくて、思い出して、唐突に涙が滲んだ。


「あの、ありがとうございます。」

 その少年は、剣そっくりの顔つきをしていた。私の涙に気づかないふりをして、お礼を言う。それはなんだか、好感がもてた。


「その見事な桜色の髪にさっきのとんでもない炎、あなたがサクラさんなんだね。」

 そのあと彼の口から確信を持って放たれた言葉。どうしてわかるんだろうか。初対面のはずなのに。でも、名前を聞きもせず当ててくるってのは正直気分が良くない。


「どうして、そう思うの?」

 返答次第では焼き捨てる。久しぶりに心が高ぶっていた。


「だって、おじいちゃんがよく言ってたサクラさんにそっくりだから。」

「っ。」

 息を吸い込む。この子の言うおじいちゃんがあの人だって確証はない、でも、それでも。

「そう、剣は私のこと覚えてくれてたのね。」

 それだけで嬉しくて、天に登るような気持ちになってしまう。全然振り切れていない。もう、あいつはいないっていうのに。私は未練タラタラだ。


 そんなことを考えていて、私は気づかなかった。こちらを見つめるあの子の瞳が真剣な輝きを帯びていることを。


「俺はサクラさんが大好きです。だからどうか一緒に冒険してください!」

 まっすぐに放たれた言葉はなんの邪念もなくて、その思いが本物だってことは、すぐにわかった。

 でも、私の心は、弱い。どうしようもないくらいに千々に乱れてどう答えていいかわからない。思わず炎を出して体を覆ってしまう。⋯⋯しまった。この子はそんなに強くない。殺してしまうかもしれない。


「綺麗な炎だ。」

 でも、その熱さに晒されているはずなのに、彼のくれたのはけれんのないただの感想だった。


 その姿に、ある一点を目指してただひたすら純粋だった思い人の姿を幻視する。


「⋯⋯わかったわ。でも、覚えといて。あなたの思いに応えることは絶対にないんだから!」

 言い過ぎたかもって思ったけど、彼は、ただ目を輝かせるだけだった。


「それでもいいんです。これからよろしくお願いします。」


 そう言われては私も頷くしかなくて。



 私の日々は少しだけ、変わった。



















石「終わりました。ありがとうございました。」


アウラ「なんか大人しいわね。」


石「2年ちょっと続いたんだよ。そりゃ、感慨深くもなる。多分これからこれ以上の長編は書かないと思うし。」


ド「結局60万字超えたのよね。そりゃ上には上がいるけど誇ってもいい数字だと思うわよ。」


石「書き足りない気もするし、続編も書くべきな気がするのがな。」


アサマ「そう、なんか変な伏線を最終話で残してたよね。あれ、どういうことなの?」


石「なろう王道ステータスものに鞍替えしたくなったというか。」


ヒウチ「どう見ても⋯⋯ポケモン。」


石「だから君らはなんでこっちの知識を有してるんだよ! いや、ヤーンもアウラもいるし仕方ないのか?」


ヤリ「パッと見でわかるようなものは書かないほうがいいと思いますよ。私たちがそんなもので縛られるとお思いですか?」


石「笑顔が怖いんだよなあ⋯⋯。」


ホダカ「わかる。」


ヤリ「ホダカはちょっとこっちに来なさい。」


ホダカ「許してお願い。なんでもするから。」


石「ん、今なんでもって」


タテ「あなたに対してではないでしょう。」


フジ「ですね。」


シロ「お主、少し明るくなったの。」


イチフサ「でも、サクラさんはこれないんですよね。」


ヒコ「あれ全て、この石が悪いって話でよくない?」


ホウミツ「私もそう思う!」


オオミネ「あらあら、あんまり乱暴にするものではありませんよ。」


ソア「ちょうどいいわね。暴れたりないところよ。」


タイセツ「結局私の出番なかったし。」


キタ「もう少し活躍させてくれるって言ってたよね?」


ツルギ「最初に意味深に登場した意味をちゃんと回収してくれるものだとばかり思っていたのだが?」


ヤクシ「私、ただの便利屋になってたんだけど」


ヤーン「そういうわけでね。最後だし、一発殴っておくのもありかなって。」


ヤヌス「どっちかといえば、あなたも一緒に殴られるべきだと思うわ。」


勇者「よくわからないがヤヌスに賛成だ。」


石「なんで男がいるんだよ!」


勇者「女かもしれんぞ?」


石「そんなレトリック、この俺がいつの間に発動していたと⋯⋯。いや、男じゃん。オタクっぽい男って最初から言ってたじゃん。」


ヤヌス「やはり二人ともギルティ。」


ヤーン「私は、セーフ。ね、みんなも、それでいいわよね。」


石とヤーン以外「それはない。」




石「ふっ、無様だな、主神よ。」


ヤーン「こうなったらあなたを犠牲にしても生き残ってやるわ。」






石「なんでそうなる!?」




みんな「「「「「死ぃ晒せぃ!!!!!!」」」」」




石「俺恨まれるようなことしてないだろ⋯⋯。」

消失する石。

ヤーン「嘘、この作者、弱すぎ。」








シロ「サクラをあんな目に合わせておいて何が私に任せろじゃ。お主を信用したわしがバカじゃった。」


イチフサ「これで、よかったんでしょうか⋯⋯。」


目を向ける先には溶け終わった石の残骸と、跡形もなく消えたヤーンの姿。






ヤヌス「まあ、あれね。めでたしめでたしね。」


勇者「その図太さ、さすがヤヌスだ。」






⋯⋯






サ「あの石はどこよ!!!! あれ、誰もいない? ようやく誰を恨めばいいのかわかったところだったのに、どこに逃げたのかしら。全く。」




ーーー






というわけで久しぶりにあのあとがきをやりました。これは自己満足というか、感想欄が機能していないのが寂しくて始めた一人キャッチボールめいたものなんですが、やっぱり面白いです。書くのが楽しい。




好きなものと好きなものを組み合わせたら書き続けていけると思っていました。それはやっぱり正しくて、ここまで書き切ることができました。それでも、時々はどうしようもなく詰まって、何も書けずに無力感に震えていました。pvと感想がなければ続けられなかったでしょう。だから読者の皆さんには本当に感謝しています。ありがとうございました。




次に書くものは未定です。しばらく休むと思います。夏は山のシーズンですしね。では、またいつかお会いしましょう。



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