桜1
僕の目の前には雄大な山が聳えている。周囲に草原を配し、平地から堂々と独立して立ち上がる。山頂付近は平らのようだが、各所から大きな壁が立ち上がる山体がアクセントを加え平凡な印象は全くない。少し黒い山肌も不思議な荒々しい魅力を持っていた。
「ユウキ、シロ。」
僕は二人の同行者の名前を呼んだ。
「仕方ないね。いいよ。登ろう。」
そう諦めたように頷いたのはユウキ。僕の幼馴染にして、この世界に囚われ、僕がここに来る原因を作った人。髪型は色々と変えているが、ポニーテールにしていることが多い。活動的な見た目に違わず、日本にいた頃は剣道の全国大会で2位になったこともある。料理も人並み以上にうまく、僕らの胃袋は彼女に握られていると言っても過言ではない。外見も気立ても良く、自分の気持ちを自覚してからどんどんその全てが好きになった。
「今回はそういう流れなのかの。しかし途中があんまりにも長いから、最初のことなど、忘れた読者も多いのじゃろうに。」
ここにメタ発言を投じてきたのはシロ。この世界の神様の一人だ。この世界に来て右も左もわからなかった僕らを導いてくれたと言っても過言ではない。⋯⋯ まあ、あの最初の召喚時点ではシロの意思で導いたのかとか実質シロがやったのって水をくれただけなんじゃとか色々言いたいことはあるが、この世界から離れられないとわかってからは頼りになる保護者ポジションに収まっている。
その名の通り髪、肌、服に至るまで全てが白色。こうして聞くと違和感を感じるだろうが、直接会うと彼女の存在としての形が白なのだと理解し、これしかないと思ってしまうだろう。
「そろそろやめるんじゃ。そんなに語られると少し引くわい。」
その言葉どおり、シロは僕と距離をとった。寂しいな。
「そんなことより、登るんじゃろう、あれを。」
シロはその前方の山を指差す。
「そうだけど、なんで二人とも、僕が呼ぶだけで、僕のやりたいことまで言い当ててるの?」
首をかしげる。
「冗談も大概にするのじゃな。もはや思考を読まんでもお主がこれを見てどう思うかぐらいわかっておる。」
「確かに、私たちがどれだけ付き合わされてると思ってるの?」
ユウキの言葉で僕の脳裏に浮かんでくるこれまでの旅路。ひたすら山の稜線をたどってきた。むしろ街に行ったことすらないような気がする。
「納得した?」
ユウキの言葉に何も言えず頷いた。
これはひどい。やりたい放題やってきたな僕は。
「ユウキ、ひょっとして街に行きたかったりする?」
今更だけど聞いてみる。
「一回くらいは行きたいかな。」
「わかりました。善処します。」
「ねぇ、なんで敬語になるの?」
ユウキは僕の肩を掴んで揺さぶった。
「いや、行きたくないなって。すみません行きます。」
ユウキの勢いに押されて僕は同意した。
「ピーマンを好き嫌いする子供を持つ親の気持ちがわかったよ。」
ユウキはため息をついた。
「とっ、ともかく今日はあれに登ろう。」
気を取り直して仕切り直す。
「わしはここは登ってほしくはないんじゃがのう。⋯⋯ お主を止められる気はしなんじゃし、わしがしっかりしておかにゃならんか。」
シロの意味深な言葉はしかし、僕を止めるに至らなかった。そこに山があるんだろう。なら、登らなくちゃ失礼だ。よくわからない論理を展開して僕らは一路、あの山を指して進み始めた。
草原は山に差し掛かるにつれ傾斜を増していく。登るにつれ見える範囲が開いていく。遮るものはない。いつもは視界を遮ることを仕事と心得ているかのように蔓延る木々もこの山では少しばかりの低木が地を這うだけだ。
しかし、民家が見えない。確かに僕らは山の上を歩いてここまで来たが、これだけ平地が広がっているのならば当然、街が作られていてもいいはずだ。しかし、一軒の家さえ見えない。少し不思議に思いつつも登る。
いつからか、溶岩の跡であろう黒色の岩が辺り一面を覆っていた。
すでに辺りに見える山よりはだいぶ高い。高所から低地を見下ろす。下界という言葉が頭に浮かぶ。浮き世のしがらみの象徴としての下界。登山者は下に見える世界をそう呼ぶことで非日常を感じるだろう。天に住む神ならば、下界と呼ぶごとに差別の感情を逞しくするだろう。下にいる奴らと自分は違う。この意識が両方の心に流れる。それがいいことなのか悪いことなのか。本当のことは誰もわからない。
山には何合目という考え方がある。一回でも登ったことがある人ならばわかるだろうが、要所に配置される看板に5合目や7合目やらそんな文字が書かれている。これは頂上までの長さの指標だ。頂上が10合目。1合目から始まり、登山道のきつさに応じてどれくらい登ったかを指し示す。
これの面白いところは距離だけではなく傾斜や疲れ具合なども考慮されていることだ。つまり登山の実感としてのあとどれくらい登ればいいかがわかるのだ。知っていると便利である。蛇足だが、鹿児島の開門岳はこの合目が見事に配置されていて、一見の価値がある。
さて、僕らが山の8合目あたりまで登った頃だった。
「危ない! 」
シロが焦った声を出し僕らをひっつかんだ。抗議するいとまもなく僕らはシロに掴まれて浮かんでいく。風が僕らの下を支え、重さを無くす。
「急がねば! 」
なおもシロは焦っている。そんな顔をしたシロはめったに見ることができない。僕らは顔を見合わせ気を引き締めた。
まさにその時、とんでもない轟音が轟いた。僕らは慌て急いで音のした山の上を見る。何かが来る。そう心構えだけはしておいた僕の目に飛び込んで来たものそれは真っ赤な津波だった。僕らの上に押しかぶさるようにものすごい速さで赤熱した流体が迫ってくる。
「くっ、フブキ! 」
シロが叫びあたりにブリザードが吹き荒れる。僕とユウキが凍死しそうなほどの本気の攻撃だ。だが、マグマが凍る気配はない。そのままの勢いで僕らを飲み込んでいく。しかし、シロにとっては、一瞬が稼げればよかった。すぐさま斜め後ろへ僕らを掴んだまま飛び上がり、溶岩から逃れる。凍える僕の足の指先を真紅の炎が舐めていくのを感じた。
「⋯⋯ ありがとう、シロ 」
歯を鳴らして凍えながらも僕はお礼を言う。死ぬところだった。
寒さで現在進行形で死にそうだけど。
「おっと、これはすまんのう 」
シロはそう言うと自らの体を赤熱させる。丁度良い温度の暖かな光が僕らを包む。温度操作は完璧だな。さすがシロ。
「まあのう 」
シロはすぐに調子にのる。
「いいじゃろうが、これくらい。というかお主が振ってきたんじゃろうが 」
僕は耳を押さえて聞こえなーいのジェスチャーをする。
「このまま下に落としてやろうか 」
「すみません調子に乗ってました許してください 」
僕は平謝る。下にはマグマの斜面が広がってるんだ。よくて大やけど、普通は炭化死体になるって。
「冗談じゃよ。それにしてもあいつ、まだ感情の抑制もできとらんのか。そりゃ、ここに人が住まんわけじゃ 」
確かに人住んでなかったな、この山の山麓。牧場でも作れそうな草原が広がっていたのに。
この山がこのレベルの噴火をするなら宜なるかなである。
「えっ、じゃあ、この山にもイチフサさんみたいな人がいるの? 」
ユウキが尋ねる。僕もようやくその可能性にたどり着いた。あいつって他の山神のことか。なるほど。
「その通りじゃ。わしは早くそいつに会わんといかんようじゃの、こりゃ。まったくなにやっとるんじゃ 」
シロはそう言って山の上を見た。
もう、溶岩の噴出も収まり、火の灯った岩の数も減ってきた。ところどころ赤黄に輝いている岩があるくらいで、他は冷め、黒くなっている。下を見ると、5合目あたりまでは黒一色に塗りつぶされていた。全方位無差別爆撃かよ。そりゃ、木が生えないわけだ。一息ついていた時、再び噴火がはじまった。今度はマグマが流出しているわけではなさそうだが、代わりに噴石と噴煙がすごい。小さくても僕の頭ほどもある石がビュンビュン飛んでくる。大きいものだと僕の身長の2倍はありそうだ。もう噴石じゃなくて噴岩でいいんじゃなかろうか。とはいえ、弾幕のごとく石やら岩やらが飛んできて、非常に危険である。シロは眼前に氷壁を展開すると危険な噴石を弾きながら上空に飛び上がっていった。無論僕らを掴んだままである。
噴石を避け飛んで、ようやく山の頂上の上空に着いた。下の山頂にぽっかりとまるで地獄の釜の姿のように赤熱した火口からひっきりなしに熱風と溶岩弾が飛んでくる。
「あやつ、どこにおるんかのう 」
シロは下を見ながら言う。いかに山神といえどこんなところに存在できるのだろうか。無理なんじゃないかな。カーズさまだってここで死んだもとい致命傷を食らったわけだし。
「あまりわしらをなめるでない。わしらと山は一心同体じゃ。自分の山が無事な限り、わしらが死ぬことなどありえん 」
「これって無事っていうのかな 」
ユウキが首をかしげる。
確かに、すこぶる疑問だ。どう見ても自分で燃えてるだろこれ。
「うん? まあ、山体が崩れない限りは大丈夫じゃろ 」
つまり阿蘇山みたいに陥没カルデラができたら無理なんだな。死にはしないまでもダメージ負うんだな。大丈夫か? ⋯⋯ この山、形はちょい違うけど周りの環境は阿蘇山にそっくりだぞ。
「心配いらんわい。いつものことじゃし 」
シロはあっけらかんと言った。まあ、シロが言うんならそうなんだろうけどさ。
「さて、本当にどこにいるんかのう、あやつ 」
シロはまだその神様を捕捉できてないらしい。
「ねえ、シロ、あれじゃない? 」
ユウキの指すのは火口の真ん中、うっすらと島のようなものがマグマの海に浮かんでいるようだ。面積は沖ノ鳥島ぐらい。もはや島じゃなくて岩だなありゃ。⋯⋯ じゃあ、沖ノ鳥島も岩? いやいや、日本国民として自国の不利益になりそうなことは考えないのが吉だ。
僕はその岩の方へ目線を集中させた。なんだか、人のような影が立っているように見える。シロが近づくに連れてはっきりとその姿が見えるようになってきた。
そこ、火口の真ん中の小島に、ひとりの人物が立っている。周りのマグマの海を背景にして、桜色の髪、真っ白な髪に桃色の色が混じり、非常に美しい髪質が背景も相まって強調される。
それをツインテールにまとめているが、髪の量が多いためであろうか、くくりきれない髪をそのまま背中に流しているため子供っぽいとは感じられない。よくわからないが、感情のままに山の力をほとばしらせているみたいだ。どうゆうわけか服装はどう見てもセーラー服だ。海のように深い青を基調にやはり桜の意匠が凝らされている。
「確かにあいつじゃのう。⋯⋯ ありゃ止まりそうもないわい。仕方ないのう 」
シロはやれやれと溜息をつくとその人に向かって手を向けた。体感できる気温が6段階下がった。空気が静寂する。シロが自分の力を練っているのがわかる。
「ホワイト・ブリザード 」
シロの言葉により導出された極寒の冷気が白い軌跡を残して放出される。あまりに逆上していたためだろうか、その神は自分へと迫る脅威に気づくことなくその冷気をまともに浴びた。すぐさまパキパキといいながら冷気がその神を侵食していく。いくらもしないうちにそこには一つの氷像が生まれることになった。この世の美を押しかためて少女の形にしたかのようなそんな像だ。この暑いさなかに逆行する氷で火山神を氷結させるとは。シロってすごいな。
「まあの。さて、あやつを引き上げるぞ 」
僕の賞賛はあっさりスルーしてシロはその神の頭上に舞い降りた。置いて行かれた僕らは慌てる。だが、シロに抜かりはない。僕らの体は重力を忘れたように静止していた。浮遊魔法でもかけてくれたんだろう。身体を動かそうとしても移動できないけど。
シロはその凍った神を火口のへりまで運んで行った。まるで輸送だ。途中で氷が溶け、お荷物神が暴れたが、シロに何言か言われて落ち着いたようだった。そのあと、シロは忘れずに僕らを回収しに来てくれた。正直に言おう。これ以上あそこにいたら暑さで死ぬところだった。大感謝を捧げなくては。シロはひんやり冷たいしね。冷房としては最強の一角だろう。
シロに運ばれていった火口のへりでは、彼女が、今度は落ち着いた表情で待っていた。シロがいつの間にか冷やしてくれていた地面の上で、彼女は口を開く。
「私はサクラよ。よろしく。⋯⋯ 悪かったとは思ってるわよ 」
つっけんどんな調子で彼女は自己紹介をした。
そっかー。桜島かー。いろいろと納得だが、この山の周囲に海がないのが疑問だ。
「埋めたわ。別にいいでしょう 」
⋯⋯ 埋めちゃったのか錦江湾。あそこ割と深かったように思うんだが。それはそうとサクラは、まだ硬さが取れていないようだ。少し攻撃的なセリフが目立つ。
「当たり前でしょう。むしろあなたが異常なの。馴れ馴れしすぎるわ 」
「いや普通だし、心の中で思っていただけだし。普通の人ならわからないやつだし 」
これぞ言い訳三連弾。
「ばっかじゃないの? 」
サクラの声がとげとげしい。くぅ、凹む。こちらに来てからここまで拒絶されたことはなかった。あっちではあったけど。
「で、シロ、なんで私の山に来たというのにライバルである私に真っ先に挨拶しなかったわけ? 」
サクラの矛先がシロに向いた。
「じゃから、さっき言ったじゃろう。わしはこいつらを護っておったのじゃ 」
「先に私の元に来ても良かったんじゃないかしら? 」
「お主は感情が乱れるとすぐ噴火するからのう。側におらんと護れんわい。お主のせいじゃ、お主の 」
⋯⋯ 山って、そんな理由で噴火するのかよ。
「普通はそんなことはないんじゃよ。ただ、サクラが格別に感情と行動が伴っているだけじゃ。少しは改まったかと思ってあったんじゃが、買いかぶりだったようじゃのう。」
シロはサクラをギロリと睨んだ。
「もうわかったわよ、私が悪かったわ 」
サクラは押し返されたようにシロから顔をそらす。
シロ強え。気の強そうな、いやもう断言してもいいな、気の強いサクラ相手に言葉だけで勝つとは。伊達に経験積んでないな、年増。
「みつを、みたいに言うんじゃないわい。全くこいつは 」
「私はシロに負けてなんかいないんだから 」
神二人から別々のところに注文がついた。
いや、シロはともかく、サクラさんは負けを認めましたよねさっき。
「気のせいよ気のせい。」
「じゃが、おぬしが一回でもわしに勝ったことがあったかの?」
シロの言葉はサクラの心を抉ったようだ。サクラは下を向いて、わなわなと震え始めた。いや、これは心にダメージ負ってるわけじゃないな。擬音が怒りを表してるもん。
「あんたねえ! 言っていいことと悪いことがあるでしょ! 私にも少しくらい格好つけさせてよ!」
サクラは目尻に涙を溜めながらも怒ってると分かるような声で僕を詰った。
「いい度胸してるわね。あなたを殺すことなんて赤子の手をひねるより簡単なんだからね! 」
いや、まあ、確かに神様相手に人間ごときが勝つなど無謀の極みである。まあ、山が本体の皆さんに関してはどっかのチート転生者が地形を変える攻撃とかいうのを発動した際に負ける可能性が高いけど。
「星を穿つ攻撃じゃとさすがにどうにもできないが、山を削る程度の攻撃なら対処可能じゃ。わしらの体に山の力を濃縮させ、受け止めさえすれば、そんなものになど負けはせん。」
シロは勇ましいな。とりあえず、チート族の皆さんもさすがに星が壊れるレベルの攻撃はオーバーキルなのをわかってるはずなので、ごく一部の例外を除いて普通に大丈夫そうだな。NNの十六種の上位種あたりはさすがに厳しそうだけど。
「そういえば、シロ、サクラとの間に昔何があったの? どう見ても普通じゃないよねその関係。」
ユウキが疑問を呈する。確かに気になるなそれは。
「それは閑話でやるから楽しみに待っておれ。」
「なるほどね、面白そう。」
「期待して待っておくよ。」
「えっ、あなたたちなんでそれで通じているの? 私一ミリもわからないんだけど!? 」
サクラが混乱しているように見える。いや、通じるでしょこれで。
「いやいやいや、わからないけど私にもわかるから、なんかそれは世界観を拡張してるような危険な匂いがするから。 」
「気のせいだよ。世界はこの一つだけさ。」
「じゃあ、閑話って何よー! 」
サクラは頭をかきむしって悶える。せっかく可愛いのに。
「そんなこと言われたって嬉しくなんかないんだから! 」
顔を真っ赤にしたサクラは言う。これはいかに鈍いことに定評のある僕でもわかる。ツンデレだ。
「ツンデレ? 」
小首を傾げるサクラ。その姿は非常に魅力的だが、多分意味は伝わっていないのだろう。含意する意味まではいかに神様といえども読み取ることはできないようだ。イチフサは察しが良すぎたんだろ多分。まあ、僕がツンデレっていうだけで何を指すか思い浮かべられるというか、ツンデレはツンデレで他の言葉を弄する必要性を感じないからだろうか。
「ふうん。わけのわからないことを考えてるのね、あなたは。まあ、褒められてる気がするからいいけど。」
ちょろいな。
「それが馬鹿にしてるってことくらいわかるのよ!」
やばい。地雷踏んだ。
サクラの手に宿りし炎は黒赤色。厨二病的には大歓迎の色。だが、どう考えてもここは日常系の中じゃないし、その炎は殺傷力がある。どこからどう見ても暑そう。いや、熱そう。命取られそうなシャレにならない温度だ。空気がユラユラ揺らめいて陽炎が立ち上る。ループのフラグか? いやいや、デイズになるのは嫌だ。陽炎は単体で出現してくださいお願いします。不知火と一緒なら許す。思う存分にネタをぶっ混んで煙を巻こうとするも、サクラの殺意は増したようにしか見えない。しかたないな。神様といるとすぐに謝らせられることになるなあ。だから思考の自由くらいは認めて欲しいんだって。⋯⋯ 先のは我ながら何の気なしに言いすぎたとは思う。
「ごめんなさい。」
頭をさげる。
「これからはオブラートに包むように善処します。」
重ねる。
「まっ、まあ謝ればいいのよ。私は優しいからね。」
胸を張るサクラ。内心どこがだと思いつつも、心表面に出さないようにする。謎の高等技術を習得した気がするぞ。使い所の限定されようがすごいけど。⋯⋯ というか、サクラ僕が言ったのって表現を当たり障りのないものにするだけしかもそれすらも政治家の上等言い逃れ手段、善処を使って確約すらしていないことに気づいていないのか?⋯⋯ ちょっとしたアホの子疑惑。いやいや、いい子なんだろう。うん。
「そうよ。私は性格いいのよ! ⋯⋯ その前がよく聞き取れなかったんだけどなんて言ってたのから。」
不思議そうに腕を組むサクラ。意外とある胸が強調されて目の保養である。
「そろそろ二人だけで喋っておるのはやめてもらおうか。」
シロの殺気が。⋯⋯ なぜだ、ユウキの殺気も見えるぞ。胸のことは伝わってないはずなんだが。
そして僕らはひと段落をつく。山上の遮るもののなさによる涼しい風が吹き抜ける。サクラのスカートがはためき翻る。こんなところでスカートなんてはいてるから。その上顔も美しいし、上も下も目に毒なんだよ!
いや、サクラが気にしないのならいいんだけどね。こちらとしては歓迎しよう。童貞らしくチラチラ目を向けるだけの勇気を振るおう。第一神様に羞恥心はない可能性があるからね。だいじょーぶでしょ。
事実サクラは気にしてないようだし。懐の広い神様だぜ。
石「ここも寂しくなったな。」
全てが白いあとがき世界も二人がいなくなると伽藍堂。
石「また、あとで出てくる人たちの顔見せ的なのもやりたくはあるけれど⋯⋯ 。」
石は沈黙する。何が正しいことなのか、無生物にはわからなかった。もしかしたら卒業したイチフサとサクラの存在が大きすぎたのかもしれない。
石「どうすればいいんだろう。」
その自問自答に答えるものは誰もなかった。




