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異世界山行  作者: 石化
6章 最後の戦いと、それから

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結婚談義

 森は静かだった。ほのかな明かりが点って木の家を照らす。こんなに遅くまで残って仕事をしているのは勤勉さの証かそれともただ能率が悪いだけか。



「ふう。」

 アンナは息を吐いて大きく伸びをした。なかなか仕事が片付かなかった。村長の職務に文句を言いたくなる。なんで私はこんな役職に就こうと頑張っていたんだろうか。虚しくなってくる。それに加えて。


「アンナは仕事が遅いよねー。」

 頭の中で自由そのものと言ったふうなアウラが話しかけてくるのだ。気が散る。やってしまったことは仕方がない。なんとかしようと思ったこともあったがいつまでいるのかと聞いたところ、死ぬまでと元気よく答えられたところで諦めた。


「それにしても結婚したいなー。」

 アウラは自由だ。言いたいことを言うだけだ。その気まぐれが少しだけ羨ましい。


「したいですね、結婚。」

 アンナもしみじみと同意した。なぜか知らないけれど、残念な村長という評価が村の男性たちから下されていて、誰一人近寄ってくる様子がないのだ。自分の顔はそこまで悪いものじゃないはずなのですけど。解せない。


「だって、貴方、私が取り憑いてるよね?」


「えっ? ひょっとしてガチモンの悪霊?!」


「だってずっと一人で宇宙船に乗ってたからパートナーなんて得られなかったもの。」

 ついでに結婚願望は人一倍あったらしい。なんでも創作物はそういう形で終わるべきだと力説していた。いや、それはどうでもよくて。


「私がいる限り、貴方の行動はどこか残念になっていくよ。特に同族相手には効くよ。」


「このご先祖様鬼畜すぎ。」


「あんただけ結婚しようとか片腹痛いの。」


「私が結婚したらニヤリーイコールで貴方も結婚したということになりませんか?」


「そんなことはないね。私は虚構と現実の区別はつける方。」


「なんでそんなとこだけしっかりしてるんですか。」


 わっ、私だって結婚して幸せな新婚旅行して、可愛い子供を作りたいのに。


「諦めな。この運命は貴方があの岩の山に足を踏み入れた時から定まっていたのさ。」


「無駄にかっこよく決めないでください!」


「はっはっはー。」


 独り言をひたすら話すアンナ。それを見た警備の男は、やっぱり村長は変だなと思って、自然と恋愛対象から外した。アウラのせいというのはだいたい間違っていない。



「そうだ! 確か剣さんがハーレムを作っていたはず。私もそれに混ぜてもらえれば。」


「それでいいの?」


「ええ。あの人はいい人ですよ。」


「でも、どこにいるのかわからないよ。」


「世界の山を巡ってますからね⋯⋯。」

 でも、アウラの存在を認知している彼は第一候補としてふさわしい。独り言を言ったとしてもそう言うものとして受け入れてくれるだろう。


「まあ、私ならわかるけど、でも妨害するから。具体的に言うと近づいたら変な音楽を流して集中を途切れさせる。」

「その程度。」

「あと一週間くらいで会う可能性がある場合。」

「いやちょっと範囲広すぎじゃないですか。変な音楽、一週間も聞かされ続けられるんですか。」

「最新の機械音楽は耳障りだよ。」

「悪い予感しかしない。」

「私と一緒に気を狂わそう。」

「死なば諸共ですか?!」

「大丈夫大丈夫。私と貴方は一心同体だから。」

「確かにそうですが、それならもう少し心を合わせて欲しいんですけど。」

「子孫のことなんか知らないね。」

「なんで私一瞬でもこの人のこと信じたんだろう。」

「死ぬまで離さないから。」

「もっといい雰囲気で言われたかった⋯⋯。」

 アンナの目が死んでいく。


 まだまだ二人の会話は続いていくようで、森の夜は不釣り合いに賑やかに更けていった。



 ●


 マンテセとオスカーは別の星の出身だ。ほとんど人間と大差ない種族だが、彼らはある点に置いて人間を上回る。具体的に言うと、年齢だ。オスカーもマンテセもこの星に落ちてきて20年以上経っているはずだが、その外見はほとんど変わっていない。それもそのはず、彼らの寿命は非常に長い。優れた生物として生み出されたアウラの遺伝子をもつエルフ族と同じくらいの寿命を誇っている。



 と言うことを聞いたララとロロは天の贈り物だと喜んだ。人間相手に恋をしてしまったのは仕方がないことととはいえ、悲しい結末が待っていることが想像できる。具体的には未亡人になる確率が高すぎる。それもあって二人は積極的なアプローチをためらっていた。



 だが、もう心理的な障壁はない。二人の猛攻に徐々に絆されていくマンテセとオスカー。女の子に迫られて悪い気がする男はいないのだ。すでに付き合っていると言う状態にほど近い。周囲の人間は結婚も秒読みだろうと噂した。どう考えてもアンナより進んでいる。



 結婚式の招待状が届いてアンナがぶちぎれる日もそう遠くはない。



 二人の近況を知らせる手紙がエルフの里に届いた。


「今日はダブルデートしたですって!?」

 あっ、だめだ。デートと言う言葉でさえも地雷だったみたいだ。⋯⋯アンナさん、強く生きて。




















ギャグはいいぞ

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