地球の残滓
旅の描写は全カットで。一つだけ言っておくとアウラは割と性格悪い。黒いって行った方が正確だろうか。何度殴りたくなったことか。煽り文化の成れの果てって感じのセリフが出るわ出るわ。多分退屈だったんだろって好意的に解釈しておこう。
そんなこんなでたどり着いた場所は、いつかアンナさんが言っていた場所。森の中から白い岩が立ち上がって複雑怪奇で美しい山肌が見られる。はじめは花崗岩かと思ったが、どうも違う。もっとツルツルしてて、信じられないけれど、人工物のようだ。
アンナさんがいってた通り、真ん中の石から放射状に白い岩が配置されている。何気なしに見たのなら自然の妙に感心するところなんだろうけど、アウラに連れてこられたってとこから考えるとそんな単純なことなわけない。岩は注意してみると人工物だし、この放射状の配置も何らかの意味があるのではないかと思ってしまう。
「なになに。私のこと考えてる?」
「無駄に精度高い割に、肝心の内容は的外れな察しの良さがあるよな、アウラって。」
「私は神様連中みたいにヤヌスの力を持ってるわけじゃないからね。というか、私に対して口調が砕けすぎじゃない?」
「尊敬できる要素が微塵もなかったから仕方ないと思うんだ。」
アンナさんは結構尊敬できるんだけどなあ。なんでだろ。
「さて、ここで夜まで待つよ。」
「結構時間かかるね。」
「ギミックってのはそういうものだよ。」
アウラは勝手にウンウンと頷いた。
仕方がない。待つか。
これまで散々話したから今更話すことなんてないと思っていたけど、なぜだか話題は尽きなかった。
「そういえば私、ずっと結婚したいと思ってたんですよ。」
アンナさんなのかアウラなのか判断できない口調で彼女は言った。アウラがアンナさんに引っ張られて丁寧口調になることは結構あるから、デスマス調であろうと油断はできない。
「それはどうして?」
ユウキが純粋に疑問として尋ねる。
「後でわかると思いますけど、私生涯のほとんどを独り身で過ごして来て、物理的に結婚ができなかったんですよね。」
「ふむふむ。」
相槌を入れる。うん。これはアウラだ。アンナさんはまだまだこれからって感じの年齢だったし、生涯のほとんどなんて言い方はしないだろう。
「なので、結婚しようとしている人を見ると妨害したくなるといいますか。」
「それはやめようね。」
「あれですよ。童貞がリア充爆発と叫ぶのと同じ心理ですよ。」
「本当にそうなのかなあ⋯⋯?」
ユウキは首をひねる。合わせてみんな不思議そうな顔をした。アンナさんも体の主導権をもらったようで、不思議そうな顔をしてる。不思議そうにされた本人が不思議そうにしてるの面白いな。不思議そうにした人は、不思議そうにされた人と体は同一で⋯⋯。やめよう。不思議そうがゲシュタルト崩壊してしまう。後一歩でフシギバナになっちゃう。ポケモンの進化ってそんな感じだったっけ。この頃記憶が曖昧だ。
そんな風に馬鹿話をしていたら、いつの間にか、勇壮な日が向こうの山の尾根に落ちていた。グラデーションを描いて夜と昼が出会う空はやっぱり綺麗だ。岩が橙色で彩色されているのもいい。木々の緑と岩の白が橙に着色されて、それもどんどん縮小して、夜のとばりが降りていく。
「ようこそいらっしゃいました。」
笑いを含んだ声がした。光の最後の残滓が人の形をとって顕現したかのようだった。それほど、その言葉突然だった。
シロに似た白髪をショートカットに切りそろえて口の端を皮肉げに釣り上げて、首元のリボンが象徴的な白いショートドレス。黒いカチューシャにはバラの意匠が備わっていた。彼女はこちらを面白がるように笑う。
「私はムミョウ。ここの管理者です。異端ですが一応山神に属しています。」
スカートを持ち上げてカーテシー。なかなかに優雅だ。ただ、ショートドレスのスカート丈は短いということは考慮に入れてもらいたい。かなり際どいところまで見えてしまいそうだ。
「わしの知らぬ山神がおるとはの。」
「私はここから動きませんから。」
「お疲れー。じゃあ、通してもらえるかい。」
「久しぶりのなんやらかんやらは無しですか全くこれだから。」
ムミョウは不満タラタラみたいだったが、アウラの要求を受け入れた。
「少し待ってくださいね。」
彼女の体を円筒状の光が覆い、岩へ伝わっていく。暗い闇、その中で、その青い光は非常に目立っていた。三本ほど伝わったところで、ぽうと岩が青色の輝きを放ち始めた。ムミョウの体から光が岩に伝わるたびに、またひとつ、また一つと放射状になっていた白い岩が青い輝きを放っていく。それは恐ろしくも幻想的な光景だった。
全ての岩に明かりが灯る。ムミョウの体からひときわ大きな光が放たれて、落ちる。一瞬全ての岩が強く輝いた。次の瞬間、僕らは青い円に包まれた。
ヒュン。
一瞬のちに僕らがいたのは、司令部室とでもいうべき場所であった。いやあ、転移の感覚に慣れててよかった。ドールがめちゃくちゃ呼び出してくるから流石に慣れた。
「ここは?!」
サクラ達は驚いているけど、やっぱり見れば見るほど司令部室だ。真正面に大画面があるし、下の方には小さな画面が並んでいるし。オスカーの塔より近代的なのかは議論が待たれるところだろうが、よりSFっぽいのはこちらだろう。あっちはファンタジーに類するものみたいだったし。
「懐かしいね。」
しみじみとアウラは辺りを見渡していた。
「なんなのじゃ、ここは。」
「私がこの星に来るときに乗ってきた宇宙船の成れの果てよ。」
「????」
みんな疑問符を浮かべている。それはそうだ。こんなところでそんな言葉が聞けるとは思わなかった。意味自体をわかっていなそうなのも若干名いるし。
「昔語りは嫌いだけど、そのために連れてきたんだし、話しておくよ。」
ぶ。アウラが触ると画面が映像を映し出した。
そこに写っていたのは。
「地球だ。」
「えっ、なんで?」
そう、地形は少しだけ変わっていて、水も少なくなっていたけど、どう見ても見覚えのある僕らの星、地球だった。
ここ、異世界だよね。ほんとなんで?
「まあ、話は簡単で、私はここからきたからね。私の故郷は地球なの。」
ここは書きたかったとこです。あと、あの人モデルのキャラですね。山神のはずなのにモデルがいないのはそういうことです。⋯⋯もしかしたらあるのかもしれません。と思ってググったら台湾にありましたねマジか。見なかったことにします。




