アウラの誘い
「ララ、ロロ!」
見覚えのある女性がまっすぐにこちらに飛んできた。アサマとヒウチの相方の二人の方に降り立つ。
「ねえ、あれってアンナさんじゃない?」
ユウキに言われて目を細めて見て、納得する。
「確かに。でも、どう言うことだろう。さっきアンナさんが戦いを止めていたよね。」
「あんなことができるやつじゃったとは。⋯⋯まてよ。あの力、あの姿。あれはひょっとして。」
シロは何かに気づいたようだった。でも、僕はよくわからない。シロの他の3人もよくわかっていなさそうだった。
僕らの困惑をよそにアンナさんは向こうの方に降り立った。
「もう。こんな危ないことに首を突っ込まないでください。心配したんですから。」
「別に危なくはなかったよ。」
「姉さんその言い方は良くないです。まあ、負ける気はしませんでしたが。」
「もう、アンナさんにだって負けないよ。」
「へ、へえ。なかなか大きいことを言うじゃないですか。なら、教えてあげます。格の違いってやつを。」
何やってんのあの人。無事を喜んでたと思ったらちょっと煽られただけで戦闘態勢に入ってるぞ。ポンコツすぎやしないか。族長になる予定って聞いたけど、無理だろこれ。
そしてあの子達はアンナさんの知り合いみたいだ。よく見たらエルフ耳をしてる。全然気づかなかった。アサマとヒウチの印象が強かった。
「アサマ!」
「ヒウチ!」
二人が叫ぶと、再び彼女たちの手に刀が握られた。戦いは終わったはずじゃなかったのか。
「⋯⋯ちょっとまずい気もします。アウラ、力を貸してくれませんか。」
「もーしょうがないなあアンナちゃんは。このご先祖さまに任せなさいって。」
彼女の口から彼女の言葉で全く別の人物の言葉が発せられた。その移り変わりは別人格のようで、完全な別人とまで思えた。
「やはり、アウラか。」
シロはその人を知っているようだ。⋯⋯シロが知ってるってなかなかすごいな。昔馴染みのような雰囲気だけど、彼女の年齢を考えたらどれだけ昔からいるかわからないぞ。
「ヒウチにアサマにシロに。なかなか久しぶりのメンツが揃ってるね。とりあえず二人は大人しくしてなさい。」
彼女は指をクイっと曲げた。同時にエルフの二人が膝をつく。とんでもない重石を載せられているみたいだ。
「神の力を手に入れて調子に乗るのはわかるけど、アンナに手を出すのは違うでしょ。」
やれやれとでも言いたげな身振りをして、その人は力を抜いた。
「アウラ、どうしてお主が。」
「子孫に憑依してるだけだよ。久しぶりだね。」
「ああ、久しいのう。前会ったのは何千年前じゃったか。」
うーん。理解が追いつかない。ほぼ伝説の登場人物じゃないか。
「しかしまあ、地球から来た人がこの時代にいるとはね。時間と空間ってのは、本当にねじ曲がるんだ。」
一人で納得してウンウン頷いている彼女がいるけれど、僕らは意味がわからないままだ。地球のことを知っているとかどう言うことだよ。最後の最後に変な設定をぶち込んでくるなよ。
「てか剣さんにユウキさんにシロさんじゃないですか。なんでこんなところに?!」
あっ。戻った。アンナさんだ。なんだか落ち着く。
「わしは神と言ったじゃろう。アウラから聞いておるんじゃから、この戦いに参加しておることは予想できたじゃろうに。」
「ああ。」
ぽんと手を叩いて腑に落ちた顔つき。うん。残念美人って言葉が頭をちらつく。
「えっ、アンナさんとこの人たちって知り合いだったの?」
いつの間にやら重力から解放されたらしきあっちの二人が会話に参加して来た。
「二人とも、覚えてないの? 地の揺れの時に二人を助けてくれた人たちなんだけど。」
「んん? ん? あっ。ああ。」
「気づきませんでした。」
「えっ、もしかして、あの時子どもだった二人?」
「成長早すぎじゃないかな。」
「エルフは大人になるのが早いんですよ。そして長生きです。」
「いや、早いってレベルじゃないよね。もうすっかり女の子だよね。」
もともと男の子っぽい子もいた気がするんだけど、面影があるだけで全然わからなかった。
「⋯⋯知り合いだったの。」
「偶然もあるもんだね。」
アサマとヒウチは感慨深げだ。
「それはそうと、なんでお主らはそちらについておったのじゃ。フジが囚われているのはわかっておったじゃろうに。」
「フジがひどいことされていないのはわかってたし、ヤーンにちょっといたずらしたかったんだよね。」
「⋯⋯そう。いたずら。」
ニヤリと表情を変えて二人は笑う。悪気はないみたいだけど、さすが神様って感じの思考回路だ。
会話が少し落ち着いた。
「さて、地球から来た君たち。教えたいことがあるからしばらく付き合ってくれないかい?」
これはアンナさんじゃない。アウラだ。なんだろう。まあ、暇ではあるけど。
「君たちにはアンナがすでに話しているんじゃなかったかな。岩ばっかりの山に行こうって話さ。」
「山!」
僕のテンションは急激にあがった。これがぶち上がると言う状態か。近頃、平野に近い山とも言えないようなとこばかり歩いてたから、山という言葉の放つ魔力がやばい。囚われてしまう。
「まあ、剣が行くならいいけど。」
ユウキはしょうがないなあと続けて、了承した。
「できれば、あの勇者って人も一緒に来て欲しいけど、あっちは帰ることもなさそうだから、意味ないかな。なんだか忙しそうだし。」
アウラがちらりと向けた視線の先にはヤーンにいじられている勇者とヤヌスの姿があった。あの人たちもここに来てたんだ。何してたんだろ。
「でも、私のせいで、元の世界には帰れないよ。」
ユウキが悲しそうに言う。元気付けたいけど、なんて言えばいいのかわからない。
「大丈夫大丈夫。ヤーンも何か考えてるっぽいし、何より私がここにいるってことは君たちが帰れたって証拠だから。」
「どう言うこと?」
「ま、そのあたりはおいおい説明するから。それで、どうする?」
そういう事になった。
次の話までを描きたかったし書かなくちゃいけなかったんですよ。⋯⋯いや、山登りの方を書くべきなんですが、最後に一回は山登りだけをする掌編を挟めると思うので、その時にぶちまけます。




